
子どものとびひ(伝染性膿痂疹)とは?原因・症状・受診の目安を小児科医がわかりやすく解説
子どものとびひは、かき壊した皮膚から細菌が入り、水ぶくれやかさぶたが広がる皮膚感染症です。原因や症状、家庭でできるケア、小児科を受診する目安まで、小児科医がわかりやすく解説します。
子どものとびひでお困りの保護者の方へ
とびひは、皮膚についた細菌が傷口から入り込み、水ぶくれやかさぶたが広がる皮膚の感染症です。早めに治療を始めれば多くは数日から1〜2週間ほどで改善しますが、かき壊しによって全身に広がることもあるため、できるだけ早めの受診がおすすめです。
「虫刺されをかいていたら急に広がった…」
「黄色いかさぶたがどんどん増えてきた…」
「兄弟にうつる?」
「プールには入ってもいいの?」
このようなご相談は、夏になると小児科で非常に多く寄せられます。
とびひは正式には**「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」**と呼ばれ、小さなお子さんによくみられる皮膚の細菌感染症です。
名前のとおり、昔は「火事の飛び火のように広がる」ことから「とびひ」と呼ばれるようになりました。
しかし、正しく治療すればほとんどのお子さんは良くなります。
この記事では、とびひの原因や症状、受診の目安について、小児科医の立場からわかりやすくご説明します。
とびひとは?
とびひは、皮膚に細菌が感染して起こる病気です。
子どもの皮膚は大人より薄く、虫刺されや湿疹、あせも、鼻の下のただれなどをかき壊しやすいため、そこから細菌が入り込んで感染します。
原因となる細菌は主に次の2種類です。
- 黄色ブドウ球菌
- A群溶血性レンサ球菌(溶連菌)
これらは健康な人の皮膚や鼻の中にも存在することがある細菌ですが、皮膚のバリア機能が壊れることで感染を起こします。
特に夏は汗をかきやすく、虫刺されも増えるため、とびひが多くみられる季節です。
なぜ子どもはとびひになりやすいの?
保護者の方から
「うちの子だけ何度もなるのですが…」
と相談されることがあります。
実は、とびひは珍しい病気ではありません。
子どもがかかりやすい理由には次のような特徴があります。
① 皮膚が薄く傷つきやすい
子どもの皮膚は大人より未熟で、少し掻いただけでも傷ができます。
そこから細菌が侵入します。
② かゆみを我慢できない
虫刺され
あせも
湿疹
アトピー性皮膚炎
などがあると、どうしても掻いてしまいます。
掻くことで細菌が周囲へ広がり、新しい場所にも感染してしまいます。
③ 汗をかきやすい
汗で皮膚がふやけると、細菌が増えやすくなります。
そのため、夏場はとびひが特に増える季節です。
とびひの症状
とびひには大きく2つのタイプがあります。
水ぶくれができるタイプ(水疱性膿痂疹)
乳幼児に最も多いタイプです。
最初は小さな赤みができ、
その後
- 水ぶくれ
- 水疱が破れる
- ジュクジュクする
- 黄色いかさぶたになる
という経過をたどります。
水ぶくれの中には細菌が多く含まれているため、触った手で他の場所を掻くと、新しい発疹が次々に増えていきます。
かさぶたが厚くなるタイプ(痂皮性膿痂疹)
こちらは年長児にやや多いタイプです。
- 赤く腫れる
- 厚い黄色〜茶色のかさぶた
- 強い痛み
- 発熱
などを伴うことがあります。
原因として溶連菌が関係することもあります。

とびひはどこにできる?
とびひは全身どこにでもできますが、特によくみられる場所があります。
- 顔(口や鼻の周り)
- あご
- 首
- 腕
- 足
- 肘や膝
- おしり
鼻水で鼻の下がただれているお子さんや、虫刺されを掻いた場所から始まることが非常に多くみられます。
保護者の方からよくあるご相談
診療中によく聞かれる質問をご紹介します。
「虫刺されだと思っていました」
最初は虫刺されと区別がつきにくいことがあります。
しかし、
- 水ぶくれができる
- ジュクジュクしてくる
- 黄色いかさぶたになる
- 周囲へどんどん広がる
このような変化があれば、とびひの可能性があります。
「市販薬を塗ったら広がりました」
かゆみ止めだけでは細菌感染は治りません。
抗菌薬による治療が必要になることがあります。
症状が広がる前に受診することをおすすめします。
「兄弟にも広がりそうで心配です」
とびひ自体は空気感染する病気ではありません。
しかし、
- 手で触る
- タオルを共用する
- 爪で掻く
ことで細菌が広がることがあります。
家族みんなで手洗いを心がけ、タオルや衣類は共用しないようにしましょう。
小児科で実際によくあるケース
当院では「虫刺されだと思っていた」「あせもだと思って様子を見ていた」という理由で受診され、とびひと診断されるお子さんが少なくありません。
特にアトピー性皮膚炎や湿疹があるお子さんでは、皮膚のバリア機能が低下しているため、とびひを繰り返しやすい傾向があります。
一方で、とびひと思って受診されたものの、実際にはヘルペス感染症や湿疹、接触皮膚炎など別の病気であることもあります。
見た目だけでは判断が難しいこともあるため、自己判断で長く様子を見るよりも、早めに小児科や皮膚科で診察を受けることが大切です。
とびひはどのように診断するの?
多くの場合は、発疹の見た目や広がり方、経過を確認することで診断できます。
通常は特別な検査は必要ありません。
ただし、
- 何度も繰り返す
- 症状が非常に強い
- 治療しても改善しない
- 他の病気との区別が必要
といった場合には、細菌培養検査などを行うことがあります。
家庭でできるケア
ご家庭では次のことを心がけましょう。
- 石けんでやさしく洗い、皮膚を清潔に保つ
- 爪を短く切る
- できるだけ掻かないようにする
- 汗をかいたら着替える
- タオルや衣類は家族で共用しない
- 水ぶくれは自分でつぶさない
皮膚を清潔に保つことは大切ですが、ゴシゴシこする必要はありません。やさしく洗い、清潔なタオルで水分を押さえるように拭き取りましょう。
こんなときは早めに小児科を受診してください
次のような場合は、早めの受診をおすすめします。
- 水ぶくれや黄色いかさぶたが増えてきた
- ジュクジュクした発疹が広がっている
- 痛みや腫れが強い
- 発熱を伴う
- 顔やまぶたの近くにできている
- 市販薬を使っても改善しない
- アトピー性皮膚炎があり悪化している
- 生後間もない赤ちゃんに発疹がある
早期に適切な治療を始めることで、症状の広がりや家族への感染リスクを抑えやすくなります。
とびひの治療
とびひは細菌による感染症であるため、症状の程度に応じて抗菌薬(抗生物質)を使って治療します。
治療の基本は、
- 皮膚を清潔に保つ
- 必要に応じて抗菌薬を使用する
- 掻き壊さないようにする
この3つです。
多くのお子さんは適切な治療を始めることで数日以内に広がりが止まり、1〜2週間ほどで改善します。
塗り薬だけで治ることもあります
発疹が少なく、範囲が限られている場合は、抗菌薬の塗り薬だけで改善することがあります。
まず患部を石けんでやさしく洗い、十分に乾かした後に処方された塗り薬を使用します。
自己判断で市販のかゆみ止めやステロイド外用薬だけを使うと、細菌感染が改善せず悪化することもあります。自己判断ではなく、医師の診察を受けて適切な治療を受けることが大切です。
飲み薬が必要になることもあります
次のような場合には、抗菌薬の飲み薬を併用することがあります。
- 発疹が全身に広がっている
- 発熱を伴う
- 赤みや腫れが強い
- 痛みが強い
- 塗り薬だけでは改善しない
症状が改善してきても、医師から指示された期間は最後まで飲み切ることが大切です。
途中でやめると細菌が残り、再発することがあります。
ガーゼで覆ったほうがいい?
「ガーゼを貼った方がいいですか?」
これは診療中によくいただく質問です。
ジュクジュクしている部分や、お子さんが無意識に掻いてしまう場所では、ガーゼで軽く覆うことで細菌の広がりを防ぎやすくなります。
ただし、強く密閉すると蒸れて悪化することがあります。
ガーゼは毎日交換し、皮膚を清潔に保つことが大切です。
プールに入っても大丈夫?
保護者の方から最も多くいただく質問の一つが、「とびひになったらプールに入れますか?」というものです。
とびひは、学校保健安全法でプールを一律に禁止する病気ではありません。
また、現在ではプールの水そのものによって感染が広がる可能性は低いと考えられています。
一方で、水ぶくれやジュクジュクした病変には細菌が含まれているため、患部への直接の接触や、タオル・ビート板などの共用によって感染が広がる可能性があります。
そのため、プールへの参加は、皮膚の状態や病変の範囲、施設(保育園・幼稚園・学校・スイミングスクール)のルールなどを踏まえ、主治医と相談しながら個別に判断することが大切です。
症状が改善し、新しい発疹がみられず、患部を適切に保護できる状態であれば、プールを再開できることもあります。
判断に迷う場合は、通園・通学先のルールを確認するとともに、受診時にお気軽にご相談ください。
保育園・幼稚園・学校はいつから行ける?
とびひは学校保健安全法による出席停止の対象ではありません。
適切な治療を開始し、患部をガーゼなどで覆うことができ、全身状態が良ければ登園・登校できる場合が多いとされています。
ただし、
- 発疹が広範囲にある
- ジュクジュクした病変が多く覆うことが難しい
- 発熱など全身症状がある
場合には、症状が落ち着くまでお休みをおすすめすることがあります。
施設によって対応が異なる場合がありますので、園や学校のルールも確認しましょう。
とびひを予防するには?
完全に予防することは難しい病気ですが、日頃のスキンケアで発症リスクを減らすことができます。
虫刺されを早めに治療する
虫刺されを掻き壊すことが、とびひのきっかけになることは少なくありません。
かゆみが強い場合は早めに治療しましょう。
爪を短く切る
長い爪は皮膚を傷つけやすく、細菌を広げる原因になります。
汗をかいたら着替える
汗をそのままにすると皮膚がふやけ、細菌が増えやすくなります。
夏場はシャワーや着替えを上手に取り入れましょう。
アトピー性皮膚炎や湿疹をしっかり治療する
皮膚のバリア機能を整えることは、とびひの予防にもつながります。
湿疹を「少しだから」と放置せず、早めに治療することが大切です。
小児科医から保護者の方へ
診療をしていると、
「もう少し様子を見ようと思っていました。」
という保護者の方が多くいらっしゃいます。
もちろん、すべての発疹ですぐに受診が必要というわけではありません。
しかし、とびひは早い段階で治療を始めることで広がりを防ぎやすく、ご本人だけでなく兄弟や周囲のお子さんへの感染予防にもつながります。
当院では、とびひと思って受診されたお子さんが、実際には虫刺されやあせも、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、ヘルペス感染症など別の病気だったケースも少なくありません。
皮膚の病気は見た目が似ていることが多いため、「とびひかもしれない」と思ったら、自己判断せずお気軽にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q. とびひはうつりますか?
はい。患部に触れた手やタオルなどを介してうつることがあります。
空気感染はしませんが、手洗いやタオルの共用を避けることが大切です。
Q. お風呂に入っても大丈夫ですか?
基本的には入浴できます。
石けんでやさしく洗い、患部を清潔に保つことが治療にもつながります。
家族で入浴する場合は、最後に入るようにすると安心です。
Q. 市販薬だけで治りますか?
軽い虫刺されであれば市販薬が役立つこともありますが、とびひは細菌感染です。
抗菌薬が必要になることも多いため、自己判断で治療を続けず、小児科や皮膚科を受診しましょう。
Q. とびひでもプールには入れますか?
とびひは、学校保健安全法でプールを一律に禁止する病気ではありません。
プールの水を介して感染が広がる可能性は低いと考えられていますが、水ぶくれやジュクジュクした病変には細菌が含まれているため、患部への接触やタオルなどを介して感染する可能性があります。
プールへの参加は、病変の状態や施設のルールを踏まえ、主治医と相談して判断することが望ましいとされています。不安な場合は、診察時にお気軽にご相談ください。
Q. 兄弟にうつらないようにするには?
- 手洗いをしっかり行う
- タオルや衣類を共用しない
- 爪を短くする
- 発疹を掻かないようにする
この4つが大切です。
横浜市・みなとみらいでお子さんのとびひでお困りの方へ
とびひは早めに治療を始めることで、症状の悪化や周囲への感染を防ぎやすい病気です。
みなとみらい小児科クリニックでは、お子さんの皮膚の状態を丁寧に診察し、とびひだけでなく、虫刺されやあせも、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎など、見た目が似ている皮膚疾患との鑑別も行っています。
また、ご家庭でのスキンケアや塗り薬の使い方、兄弟への感染予防、登園・登校やプール参加の目安についても、一人ひとりの症状に合わせてわかりやすくご説明しています。
「とびひかもしれない」「なかなか治らない」「繰り返してしまう」など、ご心配なことがありましたら、お気軽にご相談ください。
まとめ
とびひは、子どもによくみられる細菌による皮膚感染症です。
早めに適切な治療を始めることで、多くは1〜2週間ほどで改善します。
虫刺されや湿疹、あせもなどを掻き壊さないようにすることや、毎日のスキンケアで皮膚のバリア機能を保つことが予防につながります。
また、プールや登園・登校については一律の基準ではなく、症状や施設のルールを踏まえて個別に判断することが大切です。
症状が広がっている場合や、ジュクジュクした発疹、黄色いかさぶた、水ぶくれがみられる場合には、早めに小児科を受診しましょう。
※参考資料のリストはそのままで問題ありません。今回の修正内容は、日本皮膚科学会、日本小児皮膚科学会、学校保健安全法および学校感染症関連資料の考え方と整合した内容になっています。
RSウイルス(RSV)は、乳幼児にとても多い呼吸器の感染症です。2歳までにほとんどのお子さんが一度は感染するといわれています。
多くは風邪のような症状で自然に良くなりますが、生後6か月未満の赤ちゃんでは細気管支炎や肺炎を起こし、入院が必要になることもあります。特に小さな赤ちゃんでは、呼吸の様子をよく観察することが大切です。
参考資料
本記事は、以下の公的機関・学会および診療ガイドラインを参考に作成しています。
行政機関
- 厚生労働省「感染症に関する情報」
- 厚生労働省「学校において予防すべき感染症」
- 文部科学省「学校において予防すべき感染症の解説」
- 国立健康危機管理研究機構(JIHS)感染症情報(旧 国立感染症研究所)
小児・感染症関連学会
- 日本小児科学会
- 日本小児感染症学会
- 日本外来小児科学会
- 日本小児科医会
皮膚科関連学会
- 日本皮膚科学会「伝染性膿痂疹(とびひ)」
- 日本皮膚科学会『皮膚感染症診療ガイドライン』
- 日本小児皮膚科学会
- 日本臨床皮膚科医会
診療ガイドライン・専門書
- 『皮膚感染症診療ガイドライン』(日本皮膚科学会)
- 『今日の治療指針』
- 『ネルソン小児科学(Nelson Textbook of Pediatrics)』
- UpToDate「Impetigo」
- DermNet NZ「Impetigo」
お子さんの体調が心配なときは、いつでもご相談ください。
みなとみらい小児科クリニック


































