チック症

お知らせ
2026.07.05

子どものチック症とは?原因・症状・受診の目安を小児科医がわかりやすく解説

子どものチック症は、まばたきや肩をすくめる動き、咳払いなどを繰り返す病気です。原因や症状、受診の目安、家庭での接し方まで、小児科医が保護者の方にわかりやすく解説します。

子どものチック症でお困りの保護者の方へ

「最近、何度もまばたきをするようになった…」
「咳も出ていないのに『んっ、んっ』と咳払いを繰り返している」
「クセなの?病気なの?」
「注意したほうが治るの?」

このようなご相談は、小児科でもとても多くあります。

結論からお伝えすると、チック症は子どもによくみられる発達期の病気で、多くは一時的なもので自然に改善します。

一方で、症状が長く続く場合や学校生活に支障がある場合には、適切な診断やサポートが必要になることがあります。

大切なのは、お子さんを責めたり「やめなさい」と注意したりしないことです。

この記事では、小児科医の立場から、チック症の原因や症状、受診の目安、家庭でできる対応についてわかりやすくご説明します。

チック症とは?

チック症とは、自分の意思とは関係なく、急に・速く・繰り返し起こる体の動きや声がみられる状態です。

本人も「やめよう」と思っていても完全には止められず、多くのお子さんは「勝手に出てしまう」と感じています。

チックは決して「わざと」しているわけではありません。

5〜10歳頃に始まることが多く、男の子にやや多いことが知られています。

日本小児神経学会や小児チック症診療ガイドラインでも、小児期には比較的よくみられる病気であることが示されています。

チック症は珍しい病気ではありません

チック症は決して珍しい病気ではありません。

一時的なチックは小学生のおよそ10〜20%程度にみられるとされ、多くは数か月以内に自然と軽快します。

つまり、クラスに数人いても不思議ではない身近な病気です。

保護者の方が「うちの子だけなのでは」と心配される必要はありません。

チック症の原因

実は、はっきりとした原因はまだ完全には分かっていません。

現在では、

  • 脳の発達過程
  • 神経伝達物質(ドパミンなど)の働き
  • 遺伝的な体質

などが関係していると考えられています。

以前は「親の育て方」や「精神的ショック」が原因と言われたこともありましたが、現在ではその考え方は否定されています。

もちろん、

  • 緊張
  • 疲れ
  • 睡眠不足
  • 不安
  • 興奮

などによって症状が強くなることはありますが、それらが原因そのものではありません。

保護者の方が自分を責める必要はありません。

チックの種類

チックは大きく分けると、

  • 運動チック
  • 音声チック

の2種類があります。

運動チック

体の動きを繰り返します。

例えば

  • まばたき
  • 顔をしかめる
  • 鼻を動かす
  • 首を振る
  • 肩をすくめる
  • 手を振る
  • ジャンプする

などがあります。

最初は「目の病気かな?」と思って眼科を受診されるお子さんも少なくありません。

音声チック

声や音を繰り返します。

例えば

  • 咳払い
  • 「んっ」「んんっ」という声
  • 鼻を鳴らす
  • のどを鳴らす
  • せき込みのような音

などがあります。

風邪が治ったあとも咳払いだけが続いている場合、実はチックだったということもあります。

チック症の症状の特徴

チックには特徴があります。

一時的に我慢できる

短時間であれば我慢できることがあります。

しかし、その後にまとめて出てしまうことがよくあります。

緊張すると増える

  • 発表会
  • 習い事
  • テスト
  • 初めての場所

などでは症状が強くなることがあります。

夢中になっていると減る

反対に、

  • ゲーム
  • 読書
  • 工作
  • 好きな遊び

に集中していると、チックがほとんど出なくなることがあります。

日によって変わる

昨日は目のチックだったのに、

今日は肩を動かす、

数週間後には咳払いになる、

というように症状が変化することも珍しくありません。

「クセ」とチックの違いは?

保護者の方から最も多い質問の一つです。

クセは本人が意識すれば止められます。

一方、チックは本人の意思だけでは止めることが難しい症状です。

「またやってるよ」
「やめなさい」

と注意されることで、かえってストレスが増え、症状が悪化してしまうこともあります。

チック症はどんな子に多い?

チック症は誰にでも起こる可能性があります。

特に、

  • 発達障害(ADHD・ASD)があるお子さん
  • 不安が強いお子さん
  • 真面目で頑張り屋のお子さん

では合併することがあります。

ただし、チックがあるから発達障害というわけではありません。

多くのお子さんはチックだけで元気に成長していきます。

小児科でよくあるご相談(当院で感じること)

みなとみらい小児科クリニックでも、

「学校の先生に指摘された」
「動画を見返して初めて気づいた」
「花粉症やアレルギーだと思っていた」

という理由で受診されるお子さんが多くいらっしゃいます。

特にまばたき咳払いは、アレルギー性結膜炎や喘息、鼻炎などと区別が必要になることがあります。

当院では、まず「本当にチックなのか」を丁寧に診察し、目・鼻・のどの病気や神経の病気など、ほかに原因がないかを確認したうえで診断を進めています。

また、お子さん本人だけでなく、保護者の方のお話も十分に伺い、ご家庭や学校で困っていることがないかも含めてサポートしています。

こんなときは小児科を受診しましょう

次のような場合は、一度小児科への相談をおすすめします。

  • まばたきや咳払いが数週間以上続く
  • 症状が徐々に増えてきた
  • 学校生活や日常生活に支障が出ている
  • 本人が困っている、気にしている
  • 手足の力が入りにくい、歩き方がおかしいなど、チック以外の神経症状がある
  • 発達や学習面についても気になることがある

早めに相談することで、ご家族の不安が軽くなり、お子さんに合った対応を一緒に考えることができます。

チック症はどのように診断するの?

チック症には血液検査やレントゲン、MRIなどで診断できる特別な検査はありません。

診断で最も大切なのは、**症状の経過を詳しくお聞きすること(問診)**です。

小児科では次のような点を確認します。

症状について

  • いつから始まったか
  • どんな動きや声が出るか
  • 毎日あるのか
  • 我慢できることがあるか
  • 症状が強くなる場面はあるか

日常生活について

  • 学校生活に困っていないか
  • お友達との関係
  • 家庭で困っていること
  • 睡眠や生活リズム

発達について

必要に応じて

  • ADHD(注意欠如・多動症)
  • ASD(自閉スペクトラム症)
  • 強迫症

などがないかも確認します。

トゥレット症候群とは?

チック症の中にはトゥレット症候群と呼ばれるタイプがあります。

次の条件を満たす場合に診断されます。

  • 運動チックと音声チックの両方がある
  • 1年以上続いている
  • 18歳未満で発症している

名前を聞くと重い病気のように感じるかもしれませんが、適切な支援を受けながら学校生活や社会生活を送っている方も多くいます。

すべてのチック症がトゥレット症候群になるわけではありません。

チック症の治療

多くのお子さんは薬が不要です

保護者の方が驚かれることもありますが、チック症は必ずしも薬を使う病気ではありません。

次のような場合は経過観察になることが多いです。

  • 日常生活に支障がない
  • 本人が気にしていない
  • 学校生活に問題がない
  • 症状が軽い

多くのお子さんは成長とともに軽くなっていきます。

治療が必要になる場合

次のような場合には治療を検討します。

  • 本人がとても困っている
  • 学校生活に支障がある
  • 痛みが出るほど首を振る
  • 友達との関係に影響している
  • 学習に集中できない

症状だけではなく、「生活への影響」を重視して治療方針を決めます。

行動療法

現在、海外でも推奨されている治療の一つが**行動療法(CBIT:Comprehensive Behavioral Intervention for Tics)**です。

専門的な訓練によって、

  • チックが出そうな感覚に気づく
  • チックの代わりになる動きを身につける
  • 悪化しやすい場面への対処法を学ぶ

ことで症状の軽減を目指します。

すべての医療機関で実施されているわけではありませんが、有効性が報告されています。

薬による治療

症状が強く生活に支障がある場合には、お薬を使用することがあります。

使用するかどうかは、

  • 年齢
  • 症状の程度
  • 合併症
  • 副作用

を考慮しながら慎重に判断します。

「チックがあるからすぐ薬」ということはありません。

家庭でできる対応

一番大切なのは「注意しないこと」

保護者の方が最も気を付けていただきたいのは、

「やめなさい」と注意しないことです。

注意されることで、

  • 緊張
  • 不安
  • ストレス

が増え、かえってチックが悪化することがあります。

本人も「止められない」ことに困っている場合が少なくありません。

症状よりも生活を見ましょう

チックの回数を数えるよりも、

  • 元気に遊べているか
  • 食事がとれているか
  • 学校に行けているか
  • よく眠れているか

を大切にしましょう。

症状だけに注目し過ぎないことが、お子さんの安心につながります。

規則正しい生活を心がける

チックは

  • 睡眠不足
  • 疲労
  • ストレス

で悪化しやすいことがあります。

そのため、

  • 十分な睡眠
  • バランスの良い食事
  • 適度な運動
  • リラックスできる時間

を意識しましょう。

学校・幼稚園・保育園ではどうしたらいい?

学校生活では、先生の理解がとても重要です。

先生には、

  • 本人はわざとしているわけではない
  • 注意すると悪化することがある
  • 必要以上に指摘しないでほしい

ことを伝えておくと安心です。

お友達から「どうしたの?」と聞かれることがありますが、周囲の大人が正しく理解しているだけでも、お子さんの安心感は大きく変わります。

登園・登校の目安

チック症そのものが原因で登園や登校を休む必要はありません。

チック症は感染症ではなく、人にうつる病気でもありません。

そのため、

  • 元気がある
  • 普段どおり生活できる

のであれば、通常どおり登園・登校できます。

ただし、

  • 本人が強いストレスを感じている
  • いじめやからかいがある
  • 学校生活が非常につらい

場合には、学校と相談しながら無理のない対応を考えることが大切です。

小児科でよくあるご相談(当院で感じること)

みなとみらい小児科クリニックでは、

「学校で注意されてから悪化した」
「動画を見る時間を減らした方がいいですか?」
「様子を見ていいのか分からない」

といったご相談を多くいただきます。

実際には、「ゲームや動画がチック症の原因」と言い切れる科学的な根拠はありません。

ただし、夜更かしによる睡眠不足や疲れは症状を悪化させることがあります。そのため当院では、画面時間だけに注目するのではなく、睡眠時間や生活リズムを整えることを大切にしています。

また、チック症と思って受診されたお子さんの中には、アレルギー性結膜炎、鼻炎、喘息など、治療が必要な別の病気が見つかることもあります。

「チックだろう」と決めつけず、まずは一度ご相談いただくことをおすすめしています。

よくある質問(FAQ)

Q. チック症は自然に治りますか?

多くのお子さんは成長とともに軽くなります。

一時的なチックで終わることも多く、すべてのお子さんが長期間症状に悩まされるわけではありません。

Q. 注意したら治りますか?

いいえ。

注意するとストレスが増え、かえって悪化することがあります。

Q. チックはうつりますか?

うつりません。

感染症ではないため、家族や友達にうつることはありません。

Q. 運動やスポーツはできますか?

基本的には問題ありません。

症状が強くなければ、普段どおり運動やスポーツを楽しむことができます。

Q. テレビやゲームはやめた方がいいですか?

ゲームや動画そのものがチック症の原因という明確な証拠はありません。

ただし、長時間の使用による睡眠不足や疲労は症状を悪化させることがあるため、年齢に応じた適切な利用時間を心がけましょう。

横浜市・みなとみらいでお子さんのチック症が心配な方へ

みなとみらい小児科クリニックでは、お子さんのチック症の診療を行っています。

「最近まばたきが増えた」「咳払いを繰り返している」「学校の先生から指摘された」「このまま様子を見ていて大丈夫?」など、不安を抱えて受診される保護者の方は少なくありません。

チック症は、アレルギー性結膜炎や鼻炎、喘息などの病気でも似た症状がみられることがあり、まれに神経疾患との区別が必要になる場合もあります。当院では、まずチック症かどうかを丁寧に診察し、他の病気の可能性も含めて総合的に評価します。

また、お子さんの症状だけでなく、ご家庭や学校・園で困っていること、ご本人の気持ちにも寄り添いながら、ご家庭での接し方や生活上の工夫についてもわかりやすくご説明します。必要に応じて、小児神経専門医や児童精神科など専門医療機関と連携し、お子さん一人ひとりに適した診療につなげています。

チック症は、お子さんの「性格」や「育て方」が原因ではありません。多くは成長とともに軽快しますが、ご家族だけで悩まず、気になる症状が続く場合や日常生活・学校生活に影響がある場合は、お気軽にみなとみらい小児科クリニックへご相談ください。

参考資料

  • 厚生労働省
  • こども家庭庁
  • 日本小児神経学会
  • 日本小児科学会
  • 小児チック症診療ガイドライン
  • 日本児童青年精神医学会
  • 日本精神神経学会
  • 日本トゥレット(チック)協会
  • American Academy of Neurology(AAN)Practice Guideline: Treatment of Tics in People with Tourette Syndrome and Chronic Tic Disorders
  • European Society for the Study of Tourette Syndrome(ESSTS)European Clinical Guidelines for Tourette Syndrome and Other Tic Disorders

お子さんの体調が心配なときは、いつでもご相談ください。

みなとみらい小児科クリニック