急性中耳炎

お知らせ
2026.07.05

子どもの急性中耳炎とは?耳を痛がる・熱が出るときの原因や症状を小児科医がわかりやすく解説【前編】

メタディスクリプション(約120文字)

子どもの急性中耳炎は、風邪のあとに耳の痛みや発熱を起こしやすい病気です。原因や症状、鼓膜の見え方、診断、受診の目安まで、小児急性中耳炎診療ガイドライン2024をもとに小児科医がわかりやすく解説します。

子どもの耳の痛み・発熱でお困りの保護者の方へ

急性中耳炎は、風邪のあとに細菌やウイルスが鼓膜の奥(中耳)で炎症を起こす病気です。

多くのお子さんは適切な治療で改善しますが、強い耳の痛みや高熱、耳だれがある場合は早めの受診が大切です。

乳幼児では「耳が痛い」と言えないことも多く、「夜泣きが急に増えた」「耳を触る」「機嫌が悪い」といった様子がサインになることがあります。

この記事では、小児急性中耳炎診療ガイドライン2024をもとに、原因や症状、診断、鼓膜の見え方についてわかりやすくご説明します。

急性中耳炎とは?

急性中耳炎とは、鼓膜の奥にある「中耳」に炎症が起こり、膿や液体がたまる病気です。

子どもは、大人より耳と鼻をつなぐ「耳管(じかん)」が短く、太く、水平に近いため、風邪をひくと鼻やのどの細菌やウイルスが中耳へ入りやすくなります。

そのため、

  • 生後6か月〜2歳頃
  • 保育園・幼稚園に通い始めた頃
  • 風邪が流行する季節

には特に多くみられます。

3歳までに約7〜8割のお子さんが一度は急性中耳炎を経験するといわれる、とても身近な病気です。

なぜ中耳炎になるの?

急性中耳炎の多くは風邪がきっかけです。

風邪によって鼻やのどに炎症が起こると、耳管が腫れて空気の通りが悪くなります。

すると鼓膜の奥(中耳)に液体がたまり、その中で細菌やウイルスが増殖して炎症が起こります。

主な原因菌は

  • 肺炎球菌
  • インフルエンザ菌(Hibとは異なる型が多い)
  • モラクセラ・カタラーリス

です。

また、

  • RSウイルス
  • ライノウイルス
  • インフルエンザウイルス
  • アデノウイルス

などの風邪ウイルスも発症のきっかけになります。

子どもの急性中耳炎の症状

年齢によって症状が異なります。

赤ちゃん・乳児

  • 急に機嫌が悪くなる
  • 夜泣きが増える
  • 耳を何度も触る
  • 授乳を嫌がる
  • 発熱
  • 元気がない

「風邪かな」と思って受診したら、中耳炎だったということも少なくありません。

幼児・学童

  • 耳が痛い
  • 聞こえにくい
  • 耳がつまった感じ
  • 発熱
  • 鼻水

などがみられます。

鼓膜にたまった膿が外へ出ると、

耳だれ(耳漏)

が出ることがあります。

耳だれが出ると痛みは軽くなることがありますが、鼓膜に穴が開いている可能性があるため受診が必要です。

急性中耳炎では鼓膜はどう見えるの?

急性中耳炎は鼓膜の状態を診察することが最も重要です。

実は、「鼓膜が赤い=中耳炎」ではありません。

泣いたあとや発熱だけでも鼓膜は赤く見えることがあります。

そのため、小児急性中耳炎診療ガイドライン2024では、**鼓膜がどのくらい膨らんでいるか(膨隆)**を最も重要な診断ポイントとしています。

正常な鼓膜

正常な鼓膜は

  • 半透明で光沢がある
  • 鼓膜は平ら
  • 光の反射(光錐)が見える
  • ツチ骨柄がはっきり見える

状態です。

軽症急性中耳炎

初期では

  • 鼓膜が少し赤くなる
  • 軽く膨らむ
  • 少し白っぽく濁る
  • 鼓膜の奥に液体がたまり始める

ことがあります。

重症急性中耳炎

炎症が強くなると

  • 鼓膜全体が真っ赤になる
  • 鼓膜が風船のように大きく膨らむ
  • 白く濁る
  • 光の反射が見えなくなる
  • 鼓膜の奥に膿がたまる

状態になります。

この**「鼓膜のふくらみ(膨隆)」が急性中耳炎で最も重要な所見**です。

鼓膜穿孔

さらに炎症が強くなると、

鼓膜に小さな穴が開き、

  • 黄色い耳だれ
  • 分泌物

が出ることがあります。

耳だれが出ると痛みが軽くなることもありますが、自然に治るから大丈夫というわけではありません。

鼓膜の状態を確認するため受診が必要です。

小児科ではどのように診断するの?

急性中耳炎は症状だけでは診断できません。

診察では耳鏡や鼓膜鏡を使って

  • 鼓膜の膨らみ
  • 赤み
  • 混濁
  • 鼓膜の動き
  • 耳漏の有無
  • 鼓膜穿孔

などを確認します。

必要に応じて鼻やのどの状態も一緒に診察します。

通常、血液検査やレントゲン検査は必要ありません。

「耳を触る=中耳炎」ではありません

診療で最も多い質問の一つです。

耳を触る理由は

  • 眠い
  • 耳あかが気になる
  • 歯が生えてきた

ということも少なくありません。

しかし、

  • 発熱
  • 鼻水
  • 夜中に急に泣く
  • 機嫌が悪い

などを伴う場合は、中耳炎の可能性があります。

自己判断は難しいため、気になる症状があれば受診しましょう。

小児科でよくあるご相談(当院で感じること)

みなとみらい小児科クリニックでは、

「風邪が治りかけたと思ったら夜中に急に耳を痛がって泣き出しました」

というご相談をよくいただきます。

急性中耳炎は風邪の数日後に発症することが珍しくありません。

また、「鼻水だけだから大丈夫」と思っていても診察すると中耳炎になっていることがあります。

逆に耳を痛がっていても、中耳炎ではなく耳あかやのどの炎症が原因だったということもあります。

当院では耳だけではなく、鼻やのどもあわせて診察し、お子さんに最も適した治療をご提案しています。

こんなときは早めに受診しましょう

次のような場合は小児科または耳鼻咽喉科を受診してください。

  • 強い耳の痛みがある
  • 夜眠れないほど痛がる
  • 38.5℃以上の発熱が続く
  • 黄色い耳だれが出た
  • 機嫌が非常に悪い
  • 水分が十分飲めない
  • 何度も中耳炎を繰り返している
  • 生後6か月未満で発熱している

子どもの急性中耳炎の治療とは?抗菌薬・家庭でのケア・登園の目安を小児科医がわかりやすく解説【後編】

メタディスクリプション(約120文字)

子どもの急性中耳炎は抗菌薬が必要な場合と、自然に治る場合があります。治療方法や家庭でできるケア、登園の目安、繰り返さないための予防まで、小児急性中耳炎診療ガイドライン2024をもとにわかりやすく解説します。

子どもの急性中耳炎と診断された保護者の方へ

急性中耳炎と聞くと、「すぐに抗菌薬を飲まないと治らないの?」「耳鼻科へ行った方がいい?」「鼓膜が破れてしまわない?」と不安になる保護者の方は多いと思います。

実は、急性中耳炎はすべてのお子さんに抗菌薬が必要というわけではありません。

現在は「小児急性中耳炎診療ガイドライン2024」に基づき、お子さんの年齢や症状、鼓膜の状態を総合的に判断して治療方針を決めます。

適切な治療を行えば、多くのお子さんは数日から1週間ほどで改善します。

今回は、治療や家庭でのケア、登園の目安について詳しくご紹介します。

急性中耳炎の治療

急性中耳炎の治療は、

  • 痛みを和らげること
  • 炎症を抑えること
  • 合併症を防ぐこと

が目的です。

症状の強さによって治療方法が変わります。

抗菌薬は必ず必要?

答えは「必ずしも必要ではありません」。

急性中耳炎には軽症から重症までさまざまなタイプがあります。

軽症では、体が持つ免疫の力で自然に改善することも多いため、すぐに抗菌薬を使わず経過をみる場合があります。

一方で、

  • 強い耳の痛み
  • 高熱
  • 鼓膜が大きく膨らんでいる
  • 両耳の中耳炎
  • 生後6〜24か月の重症例
  • 耳だれを伴う場合

などでは抗菌薬が勧められます。

必要以上に抗菌薬を使用すると、薬が効きにくい耐性菌が増える原因にもなるため、本当に必要なお子さんに適切に使用することが大切です。

よく使われるお薬

急性中耳炎では、

抗菌薬

細菌による中耳炎が疑われる場合に使用します。

症状や重症度、最近の抗菌薬使用歴などを考慮して薬を選択します。

痛み止め・解熱剤

耳の痛みはとても強いことがあります。

アセトアミノフェンなどを使用すると、痛みや発熱が和らぎ、お子さんも眠りやすくなります。

痛みを我慢させる必要はありません。

鼻の治療

中耳炎は鼻の炎症と深く関係しています。

鼻水を吸引したり、鼻をかみやすくしたりすることで耳管の通りが改善し、回復を助けることがあります。

鼓膜切開は必要?

「鼓膜を切る」と聞くと心配になりますが、すべてのお子さんに必要な治療ではありません。

次のような場合には耳鼻咽喉科で鼓膜切開が検討されます。

  • 強い痛みが続く
  • 鼓膜の膨らみが非常に強い
  • 抗菌薬でも改善しない
  • 合併症が心配される

鼓膜切開を行うことで膿が外へ出て痛みが急に楽になることがあります。

鼓膜は通常、時間とともに自然に閉じることがほとんどです。

家庭でできるケア

急性中耳炎では、ご家庭でのケアもとても大切です。

水分をしっかりとる

発熱があると脱水になりやすくなります。

一度にたくさん飲ませるのではなく、少量ずつこまめに飲ませましょう。

鼻水をためない

鼻水が多いと耳管が詰まりやすくなります。

小さいお子さんは鼻吸い器を利用するのもおすすめです。

無理に耳を触らない

耳掃除や綿棒を耳の奥まで入れることは避けましょう。

鼓膜を傷つける原因になることがあります。

十分な休養

睡眠をしっかりとり、体力を回復させることが治療につながります。

お風呂に入ってもいい?

熱がなく元気であれば、短時間の入浴は基本的に可能です。

ただし、

  • 高熱がある
  • 強い痛みがある
  • 耳だれが出ている

場合は症状が落ち着くまで控えた方が安心です。

耳だれがある場合は医師の指示に従ってください。

飛行機に乗っても大丈夫?

急性中耳炎のときは、飛行機で気圧が変化すると耳の痛みが強くなることがあります。

旅行の予定がある場合は、事前に医師へ相談することをおすすめします。

登園・登校の目安

急性中耳炎そのものには、法律で決められた出席停止期間はありません。

登園・登校の目安は、

  • 熱が下がっている
  • 耳の痛みが落ち着いている
  • 普段どおり食事ができる
  • 元気に過ごせる

ことです。

中耳炎は風邪に続いて起こることが多いため、風邪症状が強い間は無理をせず自宅で休養しましょう。

園によって基準が異なる場合がありますので、登園前に確認すると安心です。

中耳炎を繰り返さないために

急性中耳炎は一度治っても繰り返すことがあります。

予防のためには、

  • 鼻水を長引かせない
  • 風邪をひいたら早めに鼻のケアをする
  • 手洗いを習慣にする
  • 禁煙・受動喫煙を避ける
  • 肺炎球菌ワクチンやHibワクチンなど定期予防接種を受ける

ことが大切です。

特に乳幼児では、予防接種によって重症化を防げることがわかっています。

小児科でよくあるご相談(当院で感じること)

みなとみらい小児科クリニックでは、

「前回も中耳炎だったので、今回もすぐ抗菌薬が必要ですか?」

というご相談をよくいただきます。

実際には、同じように見える症状でも、鼓膜の状態や重症度によって治療方針は異なります。

また、「鼻水だけだから様子を見よう」と考えていたところ、中耳炎を繰り返してしまうお子さんも少なくありません。

当院では耳だけでなく、鼻やのどの状態も含めて診察し、お子さんに合った治療をご提案しています。

必要に応じて耳鼻咽喉科とも連携しながら診療を行っていますので、ご安心ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 急性中耳炎はうつりますか?

中耳炎そのものはうつりません。

ただし、原因となる風邪のウイルスや細菌は周囲へうつることがあります。

Q. 耳だれが出たら治ったということですか?

いいえ。

耳だれは鼓膜が破れて膿が出ている可能性があります。

痛みが軽くなっても受診してください。

Q. 耳掃除をした方が早く治りますか?

耳の奥を掃除する必要はありません。

綿棒で奥まで触ると悪化することがあります。

Q. 中耳炎は何回も繰り返しますか?

乳幼児では耳管が未熟なため、何度か繰り返すことがあります。

成長とともに耳管の働きが良くなり、多くは回数が減っていきます。

Q. 鼻水だけでも受診した方がよいですか?

鼻水が長く続く場合や、機嫌が悪い、夜泣きが増えた、耳を触るなどの様子がある場合は、中耳炎を合併していることがあります。

気になる症状があればご相談ください。

横浜市・みなとみらいでお子さんの急性中耳炎でお困りの方へ

みなとみらい小児科クリニックでは、急性中耳炎をはじめ、お子さんの耳・鼻・のどの症状を幅広く診療しています。

「耳を痛がる」「夜泣きが急に増えた」「鼻水がなかなか治らない」「何度も中耳炎を繰り返している」など、ご心配なことがありましたらお気軽にご相談ください。

お子さん一人ひとりの症状や年齢に合わせて、小児急性中耳炎診療ガイドライン2024に基づいた適切な診療と、保護者の方にもわかりやすい説明を心がけています。

参考資料

本記事は、以下の公的機関・診療ガイドライン・学会の情報を参考に作成しています。

診療ガイドライン

  • 小児急性中耳炎診療ガイドライン2024
    (日本耳科学会・日本小児耳鼻咽喉科学会・日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会)

 ※急性中耳炎の定義、診断基準、鼓膜所見(膨隆・発赤・混濁・耳漏・鼓膜穿孔)、重症度分類、抗菌薬の適応、治療方針を参照。

行政機関

  • 厚生労働省
    「感染症対策・予防接種に関する情報」

 ※肺炎球菌ワクチン・Hibワクチンなど予防接種の情報を参照。

  • 国立健康危機管理研究機構(JIHS)感染症情報
    (旧 国立感染症研究所)

 ※急性中耳炎の原因となる呼吸器感染症に関する情報を参照。

小児関連学会

  • 日本小児科学会

 ※小児の急性中耳炎診療、小児感染症、保護者向け情報を参照。

  • 日本小児感染症学会

 ※急性中耳炎の原因菌・感染症診療に関する情報を参照。

  • 日本外来小児科学会

 ※外来診療における急性中耳炎の考え方を参照。

  • 日本小児科医会

 ※保護者向け感染症情報を参照。

耳鼻咽喉科関連学会

  • 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

 ※急性中耳炎の一般向け解説および耳の構造に関する情報を参照。

お子さんの体調が心配なときは、いつでもご相談ください。

みなとみらい小児科クリニック