腸重積とは?突然の激しい腹痛・繰り返す嘔吐は要注意!

お知らせ
2026.07.08

子どもの腸重積とは?突然の激しい腹痛・繰り返す嘔吐は要注意|原因・症状・診断を小児科医がわかりやすく解説【前編】

メタディスクリプション(約120文字)

子どもの腸重積は、突然の激しい腹痛や嘔吐を起こす緊急性の高い病気です。原因や症状、ロタウイルスワクチンとの関係、診断方法、受診の目安まで、小児科医が保護者の方へわかりやすく解説します。

突然お腹を痛がって激しく泣く…そんな時は腸重積かもしれません

「急に激しく泣き始めた」
「泣き止んだと思ったら、また泣き出す」
「何度も吐いている」
「ぐったりして元気がない」

このような症状がある場合は、**腸重積(ちょうじゅうせき)**という病気が隠れていることがあります。

腸重積は、できるだけ早く診断・治療することが大切な病気です。早期に治療できれば、多くのお子さんは手術をせずに治療できます。一方で、受診が遅れると腸への血流が悪くなり、手術が必要になることもあります。

突然繰り返す激しい腹痛や嘔吐がある場合は、夜間や休日であっても早めに小児科や救急外来を受診しましょう。

腸重積とは?

腸重積とは、

腸の一部が、その先の腸の中へ入り込んでしまう病気

です。

ストローをもう一本のストローの中へ押し込むような状態をイメージすると分かりやすいでしょう。

腸が入り込むと、

  • 腸が詰まる
  • 血液の流れが悪くなる
  • 腸がむくむ
  • 放置すると腸が壊死する

ことがあります。

そのため、小児救急では早期診断・早期治療が重要な病気として知られています。

どのくらい多い病気?

腸重積は乳幼児では比較的よくみられる病気です。

特に多いのは

  • 生後6か月〜2歳頃

で、なかでも

生後7〜12か月頃

に最も多く発症します。

男の子にやや多いことが知られています。

3歳以降では頻度は減りますが、年長児や学童でも発症することがあります。

なぜ腸重積になるの?

多くは原因がはっきりしません

乳幼児の腸重積の約90%は、

「特発性腸重積」

と呼ばれ、はっきりした原因は分かっていません。

ウイルス感染がきっかけになることがあります

風邪や胃腸炎などのウイルス感染後に、

腸のリンパ組織(パイエル板)が腫れ、

それがきっかけとなって腸が入り込むと考えられています。

そのため、

  • 風邪をひいた後
  • 胃腸炎の後
  • 発熱の後

に発症することがあります。

年長児では別の病気が隠れていることもあります

3〜5歳以上のお子さんでは、

まれですが

  • メッケル憩室
  • 腸のポリープ
  • 腸重複症
  • 悪性リンパ腫

などが原因となることがあります。

そのため、年齢が高いお子さんでは詳しい検査が必要になることがあります。

ロタウイルスワクチンとの関係

「ロタウイルスワクチンを受けると腸重積になると聞いて心配です」

というご相談を受けることがあります。

ロタウイルスワクチンの副反応として、ごくまれに腸重積が発生することが報告されています。特に、接種後約1週間(1~7日以内)は注意が必要とされています。

しかし、その頻度は非常に低く、ロタウイルスワクチンによって重症ロタウイルス胃腸炎や脱水、入院を予防できるメリットが、腸重積のリスクを大きく上回ることが国内外で確認されています。そのため、日本では定期予防接種として推奨されています。

ワクチン接種後に、

  • 激しく泣いて、しばらくすると落ち着くことを繰り返す
  • 嘔吐を繰り返す
  • 顔色が悪い
  • 元気がない
  • 血便(いちごジャム状の便)が出る

などの症状がみられた場合は、「ロタウイルスワクチンを接種した」ことを医療機関へ伝えたうえで、速やかに小児科や救急外来を受診してください。

なお、ロタウイルスワクチンとは関係なく、乳児期(特に生後6か月〜2歳頃)は自然に腸重積が起こりやすい時期でもあります。そのため、ワクチン接種の有無にかかわらず、腸重積を疑う症状がある場合は早めの受診が大切です。

腸重積の症状

激しく泣いて、落ち着いて、また泣く

最も特徴的な症状です。

突然、

「ギャー!」

と激しく泣き、

数分すると落ち着きます。

しかし、

10〜20分ほどすると

再び激しく泣き始めます。

このような

「激しく泣く→落ち着く→また泣く」

という腹痛の繰り返しが腸重積の特徴です。

赤ちゃんでは、

  • 足をお腹へ引き寄せる
  • お腹を丸める
  • 抱っこしても泣き止まない

様子がみられることがあります。

嘔吐

初めは

  • ミルク
  • 食べたもの

を吐く程度ですが、

進行すると

緑色(胆汁性)の嘔吐

になることがあります。

胆汁性嘔吐は腸閉塞を疑う重要なサインであり、早急な受診が必要です。

顔色が悪い・ぐったりする

腹痛のたびに

  • 顔色が真っ白になる
  • 冷や汗をかく
  • 元気がなくなる

ことがあります。

さらに進行すると、

泣く元気もなくなり、

眠っているように見えるほどぐったりすることもあります。

血便(いちごジャム状の便)

腸重積が進行すると、

血液・粘液・腸液が混ざったゼリー状の血便

が出ることがあります。

これが

「いちごジャム状血便」

と呼ばれる特徴的な便です。

ただし、

血便は初めから出るとは限りません。

血便が出るまで待つのではなく、

腹痛や嘔吐だけの段階で受診することが重要です。

保護者の方が勘違いしやすいポイント

診療では、次のようなお話をよく伺います。

「泣き止んだから治ったと思いました」

腸重積では痛みが一時的に落ち着く時間があります。

しかし、

病気が治ったわけではありません。

「泣いては落ち着く」を繰り返すこと自体が特徴です。

「胃腸炎だと思っていました」

嘔吐だけで始まることもあるため、胃腸炎と間違われることがあります。

しかし、

  • 周期的な腹痛
  • 激しく泣く
  • 顔色が悪い

という症状がある場合は腸重積を疑います。

「便秘だと思っていました」

便秘でも腹痛は起こりますが、

突然始まる周期的な激しい腹痛や嘔吐は腸重積を疑う重要なサインです。

小児科ではどのように診断するの?

まず、医師が詳しく症状を確認します。

問診で確認すること

  • いつから痛がっているか
  • 泣く時間はどのくらい続くか
  • 周期的に繰り返しているか
  • 嘔吐は何回あったか
  • 緑色の嘔吐ではないか
  • 血便はあるか
  • 発熱はあるか
  • 最近風邪や胃腸炎にかかったか
  • ロタウイルスワクチンを最近接種したか

保護者の方の

「いつもと泣き方が違う」

という情報は、診断の大切な手がかりになります。

診察

診察では、

  • お腹の張り
  • 圧痛
  • 腸の動き
  • 顔色
  • 脱水の有無
  • 全身状態

などを確認します。

また、お腹にソーセージ状のしこりを触れることがありますが、すべてのお子さんで触れるわけではありません。

腹部超音波(エコー)検査

腸重積の診断で最も重要な検査です。

エコーでは、腸が重なった特徴的な**「ターゲットサイン(ドーナツサイン)」**を確認できます。

放射線被ばくがなく、短時間で行えるため、小さなお子さんにも安全な検査です。

腸重積はどれくらい急ぐ病気?

保護者の方から最も多くいただく質問の一つが、

「朝まで様子を見ても大丈夫ですか?」

というものです。

結論からいうと、

腸重積は時間との勝負になる病気です。

腸が入り込んだ状態が続くと、

  • 腸がむくむ
  • 血液の流れが悪くなる
  • 腸が壊死する
  • 腸に穴が開く(腸穿孔)
  • 腹膜炎になる

危険があります。

一般的には、発症から24時間以内であれば、高圧浣腸で整復できる可能性が高いとされています。

一方で、24時間を超えると

  • 腸のむくみが強くなる
  • 高圧浣腸で戻りにくくなる
  • 手術が必要になる可能性

が高くなる傾向があります。

ただし、24時間を過ぎたから必ず手術になるわけではありません。

実際には24時間以上経過していても、高圧浣腸で整復できるお子さんもいます。

逆に、発症から数時間でも急速に腸への血流が悪くなることがあります。

そのため、

「夜だから朝まで待とう」
「一度泣き止んだから様子を見よう」

という自己判断はおすすめできません。

腸重積の治療

多くのお子さんは「高圧浣腸」で治療できます

腸重積と診断された場合、まず行われることが多い治療が**高圧浣腸(こうあつかんちょう)**です。

肛門から細いチューブを入れ、

  • 空気(空気整復)
  • 生理食塩水
  • 造影剤

などをゆっくり入れ、入り込んだ腸を元の位置へ戻します。

現在は、エコーやレントゲンで確認しながら安全に行われることが多く、早期に治療できれば、多くのお子さんが手術を受けずに改善します。

整復に成功すると、腹痛は速やかに改善し、顔色や機嫌も良くなることがほとんどです。

高圧浣腸ができない場合

次のような場合には、高圧浣腸ではなく手術が選択されることがあります。

  • 腸に穴が開いている(腸穿孔)
  • 腹膜炎を起こしている
  • 全身状態が不安定
  • 腸が壊死している可能性が高い

また、高圧浣腸を行っても整復できなかった場合も、手術が必要になります。

手術が必要になるのはどんな場合?

手術が必要になるのは、

  • 高圧浣腸で戻らない
  • 腸穿孔がある
  • 腸が壊死している
  • メッケル憩室
  • 腸のポリープ
  • 腫瘍など原因となる病気がある

場合です。

手術では、入り込んだ腸を元に戻します。

腸が壊死している場合には、その部分を切除し、健康な腸同士をつなぐ手術が必要になることもあります。

入院はどのくらい?

高圧浣腸で整復できた場合でも、多くの医療機関では一定時間から1日程度は入院または経過観察を行います。

これは、

  • 腸重積が再発しないか
  • 嘔吐がないか
  • 水分や食事が摂れるか

を確認するためです。

手術を受けた場合は、回復状況によって数日から1週間程度以上の入院が必要になることがあります。

再発することはあるの?

あります。

腸重積は一度治療しても再発することがある病気です。

再発は整復後24〜48時間以内に起こることもありますが、数週間から数か月後に起こることもあります。

退院後も、

  • 激しく泣く
  • 嘔吐する
  • 周期的に腹痛を繰り返す

など、同じような症状がみられた場合は、早めに受診してください。

保護者の方が勘違いしやすいポイント

診療では、次のようなご相談をよくいただきます。

「一度泣き止んだから治ったと思いました」

腸重積では、痛みが一時的に治まる時間があります。

しかし、

病気が治ったわけではありません。

「泣く→落ち着く→また泣く」を繰り返す場合は、夜間であっても受診が必要です。

「胃腸炎だと思っていました」

嘔吐だけで始まることもあるため、胃腸炎と勘違いされることがあります。

しかし、

  • 周期的な腹痛
  • 顔色不良
  • 強く泣く
  • 元気がない

場合は腸重積も疑います。

「便秘だと思って浣腸をしました」

便秘と思って家庭で浣腸を行う方もいます。

しかし、腸重積では家庭で浣腸をしても治ることはなく、症状を悪化させる可能性があります。

繰り返す腹痛や嘔吐がある場合は、自己判断で浣腸をせず受診しましょう。

こんな時はすぐに受診しましょう

次の症状があれば、夜間や休日でもできるだけ早く医療機関を受診してください。

✅ 激しく泣いて落ち着くことを繰り返す

✅ 嘔吐を繰り返す

✅ 緑色(胆汁性)の嘔吐がある

✅ 顔色が悪い、ぐったりしている

✅ お腹が強く張っている

✅ 血便(いちごジャム状の便)が出た

✅ 水分がほとんど飲めない

✅ 呼びかけへの反応が悪い

よくある質問(FAQ)

Q. 腸重積は自然に治ることがありますか?

自然に整復することもありますが、多くは医療機関での治療が必要です。自然に治ったように見えても再発することがあるため、症状があれば受診をおすすめします。

Q. 一度治れば再発しませんか?

再発することがあります。退院後も同じような腹痛や嘔吐があれば、早めに受診してください。

Q. ロタウイルスワクチンを受けると必ず腸重積になりますか?

いいえ。ロタウイルスワクチンの副反応として、ごくまれに腸重積が起こることが報告されていますが、その頻度は非常に低く、多くのお子さんには起こりません。

一方で、ワクチンによって重症ロタウイルス胃腸炎や脱水、入院を予防できる効果は非常に大きく、ワクチン接種による利益は腸重積のリスクを大きく上回ることが確認されています。そのため、日本では定期予防接種として推奨されています。

接種後約1週間以内に、激しく泣く、嘔吐を繰り返す、血便が出るなどの症状があれば、ワクチンを接種したことを医師へ伝えたうえで速やかに受診してください。

Q. 激しく泣いても、その後眠ってしまえば様子を見ても大丈夫ですか?

おすすめできません。

腸重積では、痛みが一時的に治まり、眠ったように見えることがあります。しかし、病気が改善したとは限らず、ぐったりしている可能性もあります。

「泣く→落ち着く→また泣く」を繰り返す場合は、早めに受診しましょう。

横浜市・みなとみらいでお子さんの腹痛や嘔吐が心配な方へ

みなとみらい小児科クリニックでは、お子さんの腹痛や嘔吐、血便などの症状について丁寧に診察しています。

腸重積は、早期発見・早期治療によって多くのお子さんが手術をせずに改善できる病気です。

一方で、診断や治療が遅れると、腸への血流が悪くなり手術が必要になることもあります。

当院では、お子さんの症状や診察所見から腸重積が疑われる場合には、腹部超音波検査などを行い、必要に応じて速やかに高次医療機関と連携し、適切な治療につなげています。

診療では、「胃腸炎だと思っていた」「便秘だと思っていた」というご相談の中に、腸重積など緊急性の高い病気が見つかることも少なくありません。

「急に激しく泣く」「繰り返し吐く」「顔色が悪い」「ぐったりしている」など、いつもと違う様子がありましたら、お気軽にご相談ください。

参考資料

  • 厚生労働省「ロタウイルスワクチンQ&A」
  • 厚生労働省「定期接種実施要領」
  • 日本小児科学会「知っておきたいわくちん情報」
  • 日本小児科学会「予防接種スケジュール」
  • 日本小児救急医学会
  • 日本小児栄養消化器肝臓学会
  • 国立健康危機管理研究機構(JIHS)
  • MSDマニュアル プロフェッショナル版「腸重積」
  • Nelson Textbook of Pediatrics
  • UpToDate「Intussusception in children」

お子さんの体調が心配なときは、いつでもご相談ください。

みなとみらい小児科クリニック