
子どもの乳児血管腫とは?いつ受診する?自然に治る?治療が必要な赤いあざを小児科医がわかりやすく解説
メタディスクリプション(約120文字)
赤ちゃんの赤いあざ「乳児血管腫」は、多くは自然に小さくなりますが、場所や大きさによっては早期治療が必要です。原因や症状、受診の目安、治療が必要なケースについて小児科医がわかりやすく解説します。
赤ちゃんの赤いあざで心配な保護者の方へ
乳児血管腫は、生後数週間から大きくなることが多い「赤いあざ」です。多くは自然に小さくなりますが、目や口の周りなどにできた場合や急速に大きくなる場合は、早めの診察が大切です。現在は飲み薬による治療が普及し、早期に治療を始めることで傷あとを少なくできる可能性があります。
「生まれたときはなかったのに赤いできものが出てきた」
「どんどん大きくなっている気がする」
「このまま様子を見ていて大丈夫?」
「将来あとが残らないか心配」
このようなご相談は、小児科外来でとても多くいただきます。
乳児血管腫は珍しい病気ではなく、赤ちゃんのおよそ5〜10%にみられる良性の血管の病変です。しかし、「自然に治る」と言われる一方で、「できるだけ早く治療した方がよい場合」もあります。
この記事では、保護者の方が安心して判断できるように、乳児血管腫についてわかりやすくご説明します。
乳児血管腫とは?
乳児血管腫(にゅうじけっかんしゅ)は、以前は**「いちご状血管腫」**とも呼ばれていた病気です。
皮膚の血管をつくる細胞が一時的に増えることでできる良性(がんではない)の腫瘍です。
特徴は、生まれた直後には目立たないことが多く、生後1〜4週間頃から赤くなり始めることです。
その後、生後数か月間は少しずつ大きくなり、やがて成長が止まり、数年かけて自然に小さくなっていきます。
つまり、
増える時期 → 止まる時期 → 自然に消えていく時期
という経過をたどることが、この病気の大きな特徴です。
なぜできるの?
実は、乳児血管腫ができるはっきりした原因はまだ分かっていません。
現在では、
- 血管を作る細胞の発達過程
- 胎児期の血管形成
- 血管を増やす成長因子
などが関係していると考えられています。
保護者の方から
「私が妊娠中に何かしたからでしょうか?」
と聞かれることがありますが、
お母さんやお父さんの育て方や生活習慣が原因ではありません。
ご自身を責める必要はまったくありません。
どんな赤ちゃんに多いの?
乳児血管腫は、
- 女の子
- 低出生体重児
- 早産児
- 多胎妊娠(双子など)
でやや多いことが知られています。
ただし、健康に生まれた赤ちゃんにもよくみられる病気です。
乳児血管腫はどこにできる?
全身どこにでもできますが、特に多い場所があります。
- 顔
- 頭
- 首
- 胸
- 背中
- 腕
- 足
顔にできると目立ちやすいため、不安になる保護者の方も少なくありません。
また、おむつの当たる場所や口の周囲では、こすれて傷ができることがあります。
どんな見た目?
乳児血管腫にはいくつかのタイプがあります。
表面型
もっとも多いタイプです。
- 鮮やかな赤色
- 少し盛り上がる
- 表面がいちごのように見える
ことから「いちご状血管腫」と呼ばれていました。
深部型
皮膚の奥にできるタイプです。
- 青紫色
- やわらかい
- 皮膚表面はそれほど赤くない
ことがあります。
混合型
表面型と深部型の両方の特徴を持つタイプです。

乳児血管腫はどのように大きくなる?
保護者の方が最も驚かれるのが、
「どんどん大きくなっている」
という変化です。
乳児血管腫は、
生後0〜1か月
小さな赤い点
↓
生後1〜3か月
急速に大きくなる
↓
生後5〜6か月頃
成長がゆっくりになる
↓
1歳頃
ほぼ大きさが安定
↓
数年かけて縮小
という経過が一般的です。
特に生後1〜3か月頃は最も大きくなりやすい時期で、この時期を「増殖期」と呼びます。
そのため、この時期に治療が必要かどうかを判断することが非常に重要です。

自然に治るの?
はい、多くの乳児血管腫は自然に小さくなります。
一般的には
- 1歳頃から縮小し始め
- 幼児期にかなり目立たなくなり
- 学童期までにさらに改善
することが多いとされています。
しかし、
自然に小さくなっても
- 皮膚がたるむ
- 色が残る
- 血管が少し残る
- 傷あとのようになる
こともあります。
そのため、
「自然に治るから必ず様子を見る」のではなく、「将来あとが残りそうかどうか」も考えながら治療を検討する時代になっています。
小児科でよくあるご相談
当院でも、
- 「最初は虫刺されだと思っていました」
- 「急に大きくなって驚きました」
- 「自然に治ると言われたけれど本当に大丈夫ですか?」
- 「レーザーが必要でしょうか?」
- 「飲み薬は安全ですか?」
というご相談をよくいただきます。
乳児血管腫は、治療を急がなくてもよいものと、できるだけ早く専門的な治療を始めた方がよいものがあります。
見た目だけで判断することは難しいため、小児科や皮膚科で診察を受けることをおすすめします。
また、増殖期である生後1〜3か月頃を逃さないことが、治療の選択肢を広げるポイントになります。
乳児血管腫はどのように診断するの?
多くの場合は、診察だけで診断できます。
医師は次のような点を確認します。
- 生まれたときからあったか
- いつ頃から大きくなったか
- 増えるスピード
- 色や盛り上がり
- できている場所
- 数や大きさ
典型的な乳児血管腫であれば、画像検査は必要ありません。
一方で、
- 深い場所にある
- 範囲が広い
- 他の病気との区別が必要
と判断した場合には、
- 超音波検査
- MRI検査
などを行うことがあります。
また、顔に広範囲の乳児血管腫がある場合には、まれに脳や血管の異常などを伴うPHACE症候群、腰からお尻にかけて広範囲にある場合にはLUMBAR症候群などの関連疾患を考慮し、専門医療機関で詳しい検査が必要になることがあります。
治療は必要?
答えは、
「乳児血管腫によって異なります。」
以前は「様子を見ましょう」と言われることが多い病気でした。
しかし現在は、
将来の傷あとや機能障害を予防するため、必要なお子さんには早期治療を行う
という考え方が主流になっています。
経過観察だけでよい場合
次のような乳児血管腫では、経過観察になることが多くあります。
- 小さい
- 増殖が止まっている
- 目立たない場所
- 潰瘍がない
- 日常生活に支障がない
定期的に診察しながら、自然に小さくなる経過を確認します。
ヘマンジオル®(プロプラノロール内服)
現在、乳児血管腫の第一選択治療となっているのが、
**ヘマンジオル®シロップ(プロプラノロール)**です。
血管が増える働きを抑え、乳児血管腫を小さくしていく効果があります。
治療を検討することが多いケース
- 目の周囲
- 鼻
- 唇
- 耳
- あご
- 気道周囲
- 急速に大きくなるもの
- 潰瘍ができたもの
- 将来変形が残る可能性が高いもの
治療開始時期
最も効果が期待できるのは、
生後1〜3か月頃の増殖期です。
一般的には、生後5〜6か月頃までに治療を開始すると効果が高いとされています。
そのため、「もう少し様子を見よう」と受診を遅らせるよりも、まず診断を受けることが大切です。
副作用
比較的安全に使用されていますが、
- 低血糖
- 血圧低下
- 徐脈(脈が遅くなる)
- 気管支が狭くなる
- 手足が冷たくなる
などに注意が必要です。
そのため、専門医の管理のもとで開始し、体重に合わせて量を調整します。
レーザー治療は?
レーザー治療は、
すべての乳児血管腫に必要ではありません。
主に、
- 赤みが残った場合
- 表面の細い血管が目立つ場合
- 潰瘍後の傷あと
などで行われます。
乳児血管腫そのものを小さくする目的では、まず内服治療が優先されることが多くなっています。
手術が必要になることは?
多くのお子さんでは必要ありません。
しかし、
- 大きく皮膚が余った
- 強い変形が残った
- 自然に改善しない
場合には、形成外科で手術を検討することがあります。
家庭で気をつけること
乳児血管腫は、家庭で無理に治そうとする必要はありません。
次の点に注意しましょう。
写真を撮って記録する
スマートフォンで、
- 正面
- 横
- 大きさが分かる写真
を毎月撮影しておくと、変化が分かりやすくなります。
診察時にもとても役立ちます。
こすらない
衣類やおむつで擦れる場所では、
傷ができやすくなります。
やさしく保護しましょう。
出血しても慌てない
乳児血管腫は血管が多いため、傷つくと出血しやすいことがあります。
ガーゼなどで5〜10分ほどしっかり圧迫すると止血できることがほとんどです。
止血しない場合は医療機関を受診してください。
こんなときは早めに受診しましょう
次のような場合は、小児科や小児皮膚科への受診をおすすめします。
- 生後数週間で赤いあざが急に大きくなってきた
- 目・鼻・口・耳の近くにある
- まぶたが開きにくい
- 鼻の穴をふさいでいる
- 唇の形が変わってきた
- 首や気道付近にある
- 傷(潰瘍)ができた
- 出血を繰り返す
- 5cm以上と大きい
- 同じような血管腫が5個以上ある(肝臓にも血管腫があることがあるため、腹部超音波検査が勧められる場合があります。)
- 保護者の方が「急に大きくなっている」と感じる
よくある質問(FAQ)
Q. 乳児血管腫はがんですか?
いいえ。
良性の血管腫瘍であり、がんではありません。
Q. 自然に消えますか?
多くは数年かけて自然に小さくなります。
ただし、
皮膚のたるみや赤みが残ることもあるため、治療が必要かどうかは早めに判断することが大切です。
Q. 市販薬で治りますか?
市販薬では治りません。
自己判断で塗り薬を使用するのではなく、小児科や皮膚科で相談しましょう。
Q. 予防できますか?
現在のところ、
予防する方法はありません。
妊娠中の生活や育児が原因ではありませんので、ご自身を責める必要はありません。
Q. ワクチンは受けられますか?
ほとんどの場合、通常どおり予防接種を受けられます。
ヘマンジオル®で治療中の場合も、多くは接種可能ですが、体調や治療状況によって判断するため、主治医にご相談ください。
小児科医としてお伝えしたいこと
診療をしていると、
「自然に治ると聞いたので様子を見ていました。」
という保護者の方が少なくありません。
もちろん、その判断で問題ない乳児血管腫も多くあります。
一方で、生後2〜3か月の急速に大きくなる時期を過ぎてから受診され、「もっと早く治療を始められたかもしれませんね」とお話しするケースもあります。
乳児血管腫は、「治療をするかどうか」よりも、「治療が必要かどうかを早く判断すること」が大切な病気です。
赤ちゃんの赤いあざが気になったら、「様子を見てよいものか」を確認するためにも、一度小児科で相談されることをおすすめします。
横浜市・みなとみらいで乳児血管腫が心配な方へ
「赤いあざが少しずつ大きくなってきた」「自然に治ると聞いたけれど、このまま様子を見ていて大丈夫?」と不安に感じる保護者の方は少なくありません。
乳児血管腫は、多くの場合は自然に小さくなる良性の病気ですが、できる場所や大きさ、増えるスピードによっては、早めの治療が必要になることがあります。 特に、生後1〜3か月頃は最も大きくなりやすい時期であり、この時期に適切な診断を受けることが、お子さんの将来の見た目や機能を守るためにとても重要です。
みなとみらい小児科クリニックでは、乳児血管腫の診療を行っています。赤いあざが乳児血管腫かどうかを丁寧に診察し、経過観察でよい場合と、早めの治療や専門医への紹介が望ましい場合を分かりやすくご説明いたします。
また、ヘマンジオル®による治療や形成外科・小児皮膚科での専門的な診療が必要と判断した場合には、適切な医療機関と連携し、速やかにご紹介しています。
**「この赤いあざは乳児血管腫かな?」「治療した方がいいのかな?」**と迷われたら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。お子さん一人ひとりに合わせた最適な診療をご提案し、安心して成長を見守れるようお手伝いいたします。
参考文献
- 厚生労働省
- 日本小児科学会
- 日本皮膚科学会「血管腫・血管奇形診療ガイドライン 2017」
- 日本小児皮膚科学会
- 日本形成外科学会
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「ヘマンジオル®シロップ 添付文書・適正使用ガイド」
- American Academy of Pediatrics (AAP)「Clinical Practice Guideline for the Management of Infantile Hemangiomas(2019)」
- International Society for the Study of Vascular Anomalies(ISSVA)Classification
- Léauté-Labrèze C, et al. Propranolol for Severe Hemangiomas of Infancy. New England Journal of Medicine. 2008.
- Drolet BA, et al. Initiation and Use of Propranolol for Infantile Hemangioma. Pediatrics.
お子さんの体調が心配なときは、いつでもご相談ください。
みなとみらい小児科クリニック










































