子どもの急性胃腸炎|嘔吐・下痢の症状、脱水・受診の目安を小児科医が解説

子供の感染症
2026.06.27

子どもの急性胃腸炎|嘔吐・下痢の症状、脱水・受診の目安を小児科医が解説

子どもの急性胃腸炎は、嘔吐、下痢、腹痛、発熱などを起こす身近な病気です。

多くはウイルスなどによる感染性胃腸炎ですが、子ども、特に乳幼児では嘔吐や下痢によって脱水が進みやすいため注意が必要です。

「何度も吐いているけれど大丈夫?」
「下痢が続いて水分が足りているか心配」
「受診した方がよいのか分からない」

このように心配される保護者の方は少なくありません。

大切なのは、嘔吐や下痢の回数だけではなく、水分がとれているか、尿が出ているか、顔色や元気はどうかを確認することです。

この記事では、子どもの急性胃腸炎について、原因、症状、脱水のサイン、診断、受診の目安、治療や家庭での対応まで分かりやすく解説します。

子どもの急性胃腸炎とは

急性胃腸炎とは、胃や腸に急性の炎症が起こり、嘔吐、下痢、腹痛などの症状がみられる状態です。

子どもでは、ノロウイルス、ロタウイルス、腸管アデノウイルスなどのウイルスが原因となることが多く、細菌や、まれに寄生虫などが原因となることもあります。

ただし、「吐いている・下痢をしている=必ず胃腸炎」ではありません。

腸重積や虫垂炎などのお腹の病気、尿路感染症、神経系の病気などでも嘔吐することがあります。

年齢や症状の経過、診察所見などから、胃腸炎以外の病気が隠れていないか確認することが大切です。

急性胃腸炎の主な原因

子どもの急性胃腸炎の多くはウイルス性です。

ウイルス性胃腸炎に抗菌薬(抗生物質)は効きません。

細菌性胃腸炎でも、原因となる細菌、症状、年齢、基礎疾患などによって、抗菌薬を使用する場合と使用しない場合があります。

急性胃腸炎の感染経路

主な感染経路は、便や吐いたものに含まれる病原体が手指などを介して口に入る糞口感染・接触感染と、病原体で汚染された食品や水を口にする経口感染です。

特にノロウイルスでは、吐いたものの処理が不十分な場合に、周囲へ飛び散った細かな粒子を介して感染が広がることもあります。

感染を広げないためには、トイレやおむつ交換の後、吐いたものを処理した後などに、石けんと流水でしっかり手を洗うことが重要です。

急性胃腸炎の潜伏期間

感染してから症状が現れるまでの期間を「潜伏期間」といいます。

潜伏期間は病原体によって異なります。

潜伏期間だけで原因を特定することはできません。家族や園での流行、食事歴、便の状態なども合わせて判断します。

急性胃腸炎の主な症状

急性胃腸炎では、次のような症状がみられます。

  • 嘔吐
  • 下痢
  • 腹痛
  • 発熱
  • 食欲低下
  • 元気がない

症状の現れ方や強さは、原因となる病原体やお子さんの年齢によって異なります。

嘔吐が先にみられ、その後に下痢が続くこともありますが、下痢だけがみられる場合もあります。

急性胃腸炎の症状が続く期間

急性胃腸炎の症状が続く期間は、原因となる病原体によって異なります。

ノロウイルスでは、嘔吐や下痢などの強い症状は1〜2日程度で改善することが多くあります。

ロタウイルスなどでは、下痢が数日から1週間程度続くことがあります。

ただし、経過には個人差があります。

下痢が長く続く、血便がある、体重が減っている、腹痛が強くなるなどの場合は、感染性胃腸炎以外の病気も含めて小児科で評価します。

急性胃腸炎で注意したい脱水

急性胃腸炎では、嘔吐や下痢によって水分だけでなく、ナトリウムなどの電解質も失われます。

特に乳幼児は脱水が進みやすいため、全身状態をよく見ることが大切です。

確認すること注意したい状態水分飲めない、飲んでも繰り返し吐く尿回数や量が明らかに減っている口・唇乾いている涙泣いても涙が少ない目くぼんで見える元気ぐったりしている、反応が悪い

脱水の程度は、一つの症状だけでは判断できません。

医療機関では、水分摂取量、尿量、口の中の乾燥、涙、目の状態、顔色、元気さなどを合わせて総合的に評価します。

急性胃腸炎の診断

多くの場合、症状の経過と診察所見から総合的に診断します。

診察では、

  • 嘔吐や下痢が始まった時期
  • 嘔吐や下痢の回数
  • 便の状態
  • 水分摂取量
  • 尿の回数
  • 発熱
  • 腹痛
  • 周囲の流行状況
  • 食事歴

などを確認します。

特に重要なのは、胃腸炎以外の病気が隠れていないか、脱水がどの程度あるかを確認することです。

急性胃腸炎で行う検査

多くの急性胃腸炎では、必ずしも検査は必要ありません。

症状や診察所見から必要と判断した場合に、

  • 便検査
  • 血液検査
  • 尿検査
  • 画像検査

などを行うことがあります。

血便、高い発熱、強い腹痛、症状が長引いている場合や、胃腸炎以外の病気が疑われる場合などに検査を検討します。

ノロウイルスやロタウイルスなどの迅速検査も、すべてのお子さんに必要なわけではありません。

受診時に伝えていただきたいこと

診察では、症状の経過が大切な手がかりになります。

可能であれば、

  • 嘔吐・下痢が始まった時刻と回数
  • 便の色や血液の有無
  • 最後に尿が出た時刻
  • 飲めた水分のおおよその量
  • 発熱の有無
  • 家族や園で同じ症状の人がいるか

をお伝えください。

当院では、便の色や性状が分かる写真が診察の参考になる場合があります。

ただし、写真を撮るために受診を遅らせる必要はありません。

小児科を受診する目安

次のような場合は、小児科での評価をおすすめします。

  • 嘔吐を繰り返し、水分が十分にとれない
  • 下痢が多く、尿が減っている
  • 血便がある
  • 発熱や強い腹痛が続く
  • いつもより元気がなく、ぐったりしている
  • 症状がなかなか改善しない
  • 乳児で嘔吐や下痢が続いている

すぐに医療機関を受診したい症状

次のような場合は、胃腸炎以外の病気や重い脱水も考え、速やかな受診が必要です。

  • 緑色(胆汁性)の嘔吐
  • 強く持続する腹痛
  • 水分がほとんどとれない
  • 顔色が悪く、ぐったりしている
  • 呼びかけへの反応が悪い
  • 意識がぼんやりしている
  • けいれん
  • 血便を繰り返す

「胃腸炎だと思うから」と決めつけず、普段と明らかに違う様子がある場合は早めに医療機関へ相談してください。

急性胃腸炎の治療

子どもの急性胃腸炎の治療で最も大切なのは、失われた水分と電解質を補い、脱水を予防・改善することです。

多くのウイルス性胃腸炎には、原因ウイルスそのものを治す薬はありません。

軽度から中等度の脱水では、**経口補水療法(ORT)**が治療の基本です。

水分がほとんど飲めない場合や、重い脱水がある場合などには点滴を行います。

経口補水液の与え方

吐いているときに一度にたくさん飲ませると、再び吐いてしまうことがあります。

嘔吐がある場合は、経口補水液(ORS)を5mL程度ずつ、まず5分おきを目安に与えます。

スプーンや小さなカップなどを使い、少量ずつ飲ませる方法がおすすめです。

吐いてしまった場合は、5〜10分ほど待ち、さらにゆっくり少量ずつ再開します。

飲めるようになってきたら、お子さんの状態を見ながら少しずつ量を増やします。

経口補水液は、水分だけでなくナトリウムなどの電解質も補えるよう調整されています。

脱水が疑われるときの水分補給には、水やお茶だけより経口補水液が適しています。

点滴治療が必要になる場合

次のような場合には、点滴が必要になることがあります。

  • 水分をほとんど飲めない
  • 経口補水を行っても何度も吐いてしまう
  • 中等度以上の脱水があり、経口補水だけでは改善しない
  • ぐったりしている
  • 重い脱水やショックが疑われる

一方、軽度から中等度の脱水で経口摂取が可能な場合には、経口補水療法が基本です。

急性胃腸炎で使用する薬

整腸薬

整腸薬は、下痢の期間を短くする目的で使用されることがあります。

一部の整腸薬については、下痢の期間を短縮する可能性が示されています。

ただし、胃腸炎そのものを直接治す薬ではなく、すべてのお子さんに必ず必要というわけではありません。

制吐薬(吐き気止め)

2024年版の国内ガイドラインでは、日本国内で承認されている制吐薬について、感染性胃腸炎の子どもには投与しないことが提案されています。

ただし、これは弱い推奨であり、効果に関するエビデンスの確実性は非常に低いとされています。

嘔吐がある場合も、まずは少量ずつ経口補水を続けられるか確認することが治療の中心になります。

下痢止め

腸の動きを強く止めるタイプの下痢止めは、小児の感染性胃腸炎では一般的に推奨されません。

市販の下痢止めを自己判断で使用せず、必要な薬については医師に相談してください。

抗菌薬

ウイルス性胃腸炎には抗菌薬は効きません。

細菌性胃腸炎でも、抗菌薬が必要かどうかは原因菌、症状、年齢、基礎疾患などによって異なります。

血便、高熱、強い腹痛などがある場合は、自己判断せず医療機関で相談してください。

急性胃腸炎のときの食事

脱水が改善して水分がとれるようになったら、食事を必要以上に長く止める必要はありません。

母乳は基本的に続けて構いません。

ミルクも通常は薄めず、飲める範囲で再開します。

離乳食や普段の食事も、お子さんが食べられる量から少しずつ戻していきます。

「完全に嘔吐がなくなるまで絶食する」という必要はありません。

無理におかゆだけに限定せず、体調に合わせて年齢相応の普段の食事へ徐々に戻すことが基本です。

糖分の多い飲み物は、下痢を悪化させることがあります。

脂肪分の多い食事についても、症状が強い間は控えめにするとよいでしょう。

家庭内での感染予防

急性胃腸炎は、家庭内でも感染が広がりやすい病気です。

感染予防には、石けんと流水による手洗いが基本です。

  • トイレの後
  • おむつ交換の後
  • 吐いたものや便を処理した後
  • 食事を準備する前

には、しっかり手を洗いましょう。

吐いたものや便を処理するときは使い捨て手袋を使用し、周囲を適切に清掃します。

ノロウイルスでは、アルコール消毒だけでは十分な効果が得られないことがあります。

吐いたものや便で汚れた場所では、必要に応じて次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系消毒剤を使用します。

製品の表示や公的機関の案内に従って、適切な濃度・方法で使用してください。

症状改善後の感染について

症状が治ったあとも、しばらく便の中にウイルスが排出されることがあります。

特にノロウイルスなどでは、嘔吐や下痢がなくなった後も便中にウイルスが排出されることがあります。

そのため、症状が改善した後も、

  • トイレ後の手洗い
  • おむつ交換後の手洗い
  • 食事前の手洗い

を続けることが大切です。

登園の目安

ウイルス性胃腸炎では、一律に「発症から○日休む」という登園基準ではありません。

保育園などへの登園の目安は、

「嘔吐や下痢などの症状が治まり、普段の食事がとれること」

です。

症状がなくなった後も便の中にウイルスが排出されることがあるため、登園後も手洗いを続けましょう。

園によって独自のルールや提出書類がある場合は、それぞれの基準も確認してください。

学校への登校の目安

学校では、ノロウイルスやロタウイルスなどの感染性胃腸炎について、すべてのケースで一律の出席停止期間が定められているわけではありません。

嘔吐や下痢などの症状が改善し、普段どおり食事がとれ、学校生活を送れる状態になっていることが一つの目安です。

学校ごとの対応や、学校医・医療機関から個別の指示がある場合は、その指示に従ってください。

ロタウイルスワクチン

ロタウイルスは乳幼児に急性胃腸炎を起こし、強い嘔吐や水様性下痢によって脱水が進むと、点滴や入院が必要になることがあります。

日本ではロタウイルスワクチンが定期接種となっています。

ワクチンには、重いロタウイルス胃腸炎や入院を減らす効果があります。

ただし、ロタウイルス以外の病原体による胃腸炎を予防できるわけではありません。

よくある質問

下痢だけでも胃腸炎ですか?

はい。

嘔吐を伴わず、下痢を中心に症状が出る場合もあります。

ただし、下痢が長く続く、血便がある、体重が減るなどの場合は、感染性胃腸炎以外の病気も考えて診察します。

スポーツドリンクやお茶でもよいですか?

軽い症状で普段どおり水分がとれている場合には、飲める飲み物を利用できることもあります。

一方、嘔吐や下痢によって脱水が疑われる場合は、水分と電解質の組成が調整された経口補水液が適しています。

糖分の多い飲み物を大量に飲むと、下痢を悪化させることがあります。

お風呂に入っても大丈夫ですか?

胃腸炎だからという理由だけで、一律に入浴を禁止する必要はありません。

元気があり、水分がとれていて、本人がつらそうでなければ短時間の入浴やシャワーは可能です。

ただし、ぐったりしている、水分が十分にとれない、脱水が心配という場合は、入浴より休養と水分補給を優先してください。

牛乳や乳製品はやめた方がよいですか?

多くの場合、一律に牛乳や乳製品を禁止する必要はありません。

胃腸炎の後に一時的に乳糖を消化しにくくなり、下痢が長引くことがあります。

下痢がなかなか改善しない場合は、小児科で相談してください。

横浜市・みなとみらいで子どもの嘔吐・下痢が心配な方へ

みなとみらい小児科クリニックでは、子どもの急性胃腸炎、嘔吐、下痢、腹痛、発熱などの診療を行っています。

診察では、嘔吐や下痢の回数だけでなく、

  • 水分がどのくらい飲めているか
  • 尿が出ているか
  • 口の中が乾いていないか
  • 涙が出ているか
  • 顔色や元気はどうか

などを確認し、脱水の程度を総合的に評価します。

必要に応じて検査や点滴治療などを検討します。

「どのくらい水分を飲ませればよい?」
「受診した方がよい?」
「いつから登園できる?」

といったご相談にも対応しています。

横浜市西区・みなとみらい周辺で、お子さんの嘔吐や下痢、急性胃腸炎が心配な場合はご相談ください。

一般診療について

急性胃腸炎だけでなく、発熱、咳・鼻水、嘔吐、下痢、腹痛、発疹・湿疹など、子どもによくみられる症状について一般小児科診療を行っています。

お子さんの症状について「何科を受診すればよいか分からない」「受診した方がよいか迷っている」といった場合もご相談ください。

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参考資料

  • 日本小児感染症学会・日本小児消化管感染症・免疫アレルギー研究会監修「小児消化管感染症診療ガイドライン2024」
  • 日本小児救急医学会「エビデンスに基づいた子どもの腹部救急診療ガイドライン2017 第Ⅰ部 小児急性胃腸炎診療ガイドライン」
  • 厚生労働省「感染性胃腸炎(特にノロウイルス)」
  • 厚生労働省「ロタウイルスワクチン」
  • 国立健康危機管理研究機構(JIHS)「感染性胃腸炎」
  • 国立健康危機管理研究機構(JIHS)「ノロウイルス感染症」
  • こども家庭庁「保育所における感染症対策ガイドライン」
  • 日本小児科学会監修「こどもの救急」

公開日:2026年6月27日
更新日:2026年10月6日
監修:みなとみらい小児科クリニック院長

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