
子どもの急性胃腸炎とは?症状・原因・嘔吐を小児科医がわかりやすく解説
急性胃腸炎は子どもによくみられる病気です
お子さんが突然吐いたり、下痢をしたりすると、「何か重い病気ではないかな」「このまま様子を見ても大丈夫かな」と不安になるお父さん、お母さんも多いのではないでしょうか。
急性胃腸炎は、小児科で最も多くみられる病気の一つです。多くはウイルス感染が原因で、適切な水分補給や休養によって数日から1週間程度で自然に回復します。
一方で、乳幼児では嘔吐や下痢によって短時間で脱水が進むことがあり、症状によっては点滴などの治療が必要になることもあります。
急性胃腸炎について正しく知っておくことで、お子さんが体調を崩した際にも落ち着いて対応しやすくなります。
この記事では、急性胃腸炎の原因や症状、嘔吐への対応について、医学的根拠に基づいてわかりやすく解説します。
急性胃腸炎とは
急性胃腸炎とは、ウイルスや細菌などの感染によって胃や腸に炎症が起こり、嘔吐、下痢、腹痛、発熱などの症状が現れる病気です。
乳幼児から学童まで幅広い年齢でみられ、小児科では一年を通して診療する機会の多い病気です。
子どもの急性胃腸炎の多くはウイルス感染が原因であり、多くのお子さんは数日から1週間ほどで自然に回復します。しかし、乳幼児では脱水になりやすく、症状によっては点滴や入院が必要になることもあります。
急性胃腸炎の原因
急性胃腸炎の原因は、大きくウイルスと細菌に分けられます。
ウイルス感染
子どもの急性胃腸炎で最も多い原因です。
代表的なウイルスには次のようなものがあります。
- ノロウイルス
- ロタウイルス
- アデノウイルス(40・41型)
- サポウイルス
- アストロウイルス
保育園や幼稚園、学校などで流行しやすく、兄弟や家族に感染が広がることも少なくありません。
細菌感染
細菌が付着した食品や飲み物を食べることで起こることがあります。
代表的な細菌は次のとおりです。
- カンピロバクター
- サルモネラ
- 腸管出血性大腸菌(O157など)
- 病原性大腸菌
細菌性胃腸炎では、高熱や強い腹痛、血便などがみられることがあり、原因によっては抗菌薬による治療が必要になる場合があります。
感染経路
急性胃腸炎は感染力が強く、家庭内でも広がりやすい病気です。
主な感染経路は次のとおりです。
- 糞口感染(便に含まれる病原体が手などを介して口に入る)
- 接触感染(嘔吐物や便、汚染されたドアノブやおもちゃなどに触れる)
- 食品や飲み物を介した感染
特にノロウイルスでは、嘔吐した際に飛び散った細かな飛沫(エアロゾル)を吸い込むことで感染することもあります。
感染を防ぐためには、石けんと流水による手洗いを徹底し、嘔吐物や便を適切に処理することが重要です。
潜伏期間
感染してから症状が現れるまでの期間(潜伏期間)は、原因となる病原体によって異なります。原因潜伏期間の目安ノロウイルス約24〜48時間ロタウイルス約1〜3日アデノウイルス(40・41型)約3〜10日カンピロバクター約2〜5日サルモネラ約6〜72時間
原因によって潜伏期間は異なりますが、保育園や幼稚園、学校、家庭内で同じような症状のお子さんがいる場合は、急性胃腸炎が疑われることがあります。
主な症状
急性胃腸炎では、次のような症状がみられます。
- 嘔吐
- 下痢
- 腹痛
- 発熱
- 食欲低下
- 元気がない
症状の現れ方は原因によって異なりますが、多くのお子さんでは最初に嘔吐が始まり、その後に下痢が続く経過をたどります。
嘔吐は半日から1日程度で落ち着くことが多く、下痢は数日から1週間程度続きます。原因によっては10日以上続くこともあります。
乳幼児では自分で症状をうまく伝えられないため、
- 機嫌が悪い
- いつもより元気がない
- 水分を飲みたがらない
- 泣いても涙が少ない
といった様子が体調不良のサインになることもあります。
嘔吐があるときは慌てず対応しましょう
急性胃腸炎では、最初に何度も嘔吐することが珍しくありません。
吐いた直後に水分をたくさん飲ませると、再び吐いてしまうことがあります。
まずは20〜30分ほど胃を休ませたあと、経口補水液(OS-1®など)を5〜10mL(スプーン1〜2杯程度)ずつ、5分おきに少量ずつ飲ませることが大切です。
このように少量ずつゆっくり飲むことで、水分を体に吸収しやすくなり、脱水の予防につながります。
何度も嘔吐して水分が十分に飲めない場合には、医師の判断で制吐薬(吐き気止め)を使用することがあります。嘔吐が落ち着くことで水分補給がしやすくなり、脱水の改善が期待できます。
食事は無理に食べさせる必要はありません。まずは水分補給を優先し、お子さんの様子を見ながら少しずつ食事を再開しましょう。
~あわてず、脱水を防ぐことが一番大切です~
お子さんが急に吐いたり下痢をしたりすると、とても心配になりますよね。急性胃腸炎の多くは数日~1週間ほどで自然に良くなりますが、小さなお子さんでは脱水症に注意が必要です。症状に合わせて水分補給を行い、つらい症状を和らげながら回復を待ちましょう。
脱水症に注意しましょう
急性胃腸炎で最も注意が必要なのが脱水症です。
子どもは大人よりも体の水分の割合が多く、体重あたりに必要な水分量も多いため、嘔吐や下痢が続くと短時間で脱水が進むことがあります。特に乳幼児では、自分で「のどが渇いた」と伝えられず、水分補給もうまくできないため注意が必要です。
脱水は早い段階で気づき、適切に水分補給を行うことが大切です。
脱水症のサイン
脱水の程度主な症状軽度のどが渇く、尿の回数が少し減る、唇や口の中が乾く中等度尿がかなり少ない、泣いても涙が少ない、目がくぼんで見える、元気がない重度ぐったりしている、反応が鈍い、顔色が悪い、水分がほとんど飲めない、意識がもうろうとしている
このような症状がみられる場合は、早めに小児科を受診しましょう。重度の脱水では点滴や入院が必要になることがあります。
診断はどのように行われますか?
急性胃腸炎の診断は、症状や診察所見をもとに総合的に判断します。
診察では、次のような点を確認します。
- 嘔吐や下痢が始まった時期
- 嘔吐や下痢の回数
- 発熱の有無
- 水分が飲めているか
- 尿の回数
- 家族や園・学校で流行している病気
- 海外渡航歴や食事内容
また、診察では脱水の程度を確認するために、
- 顔色
- 唇や口の中の乾燥
- 涙の有無
- 皮膚の状態
- 呼吸や脈拍
- 元気さ
などを総合的に評価します。
検査は必要ですか?
多くの急性胃腸炎では、必ずしも検査は必要ありません。
症状や診察だけで診断できることがほとんどであり、軽症であれば検査を行わずに治療を開始します。
一方で、次のような場合には検査を行うことがあります。
- 血便がある
- 高熱が続く
- 強い腹痛がある
- 脱水が疑われる
- 症状が長引いている
- 細菌感染が疑われる
- 入院が必要と考えられる
必要に応じて行われる検査には、
- 便検査
- 血液検査
- 尿検査
などがあります。
ノロウイルスやロタウイルスなどの迅速検査は、診断や感染対策の参考として行われることがありますが、すべてのお子さんに必要なわけではありません。
重症化しやすいお子さん
次のようなお子さんは脱水が進みやすく、重症化する可能性があるため、特に注意が必要です。
- 生後6か月未満の乳児
- 早産児や低出生体重児
- 心臓病や腎臓病などの基礎疾患がある
- 免疫機能が低下している
- 何度も嘔吐して水分が飲めない
- 下痢の回数が非常に多い
このようなお子さんでは、症状が軽く見えても脱水が急速に進行することがあります。普段と様子が違うと感じた場合は、早めに受診しましょう。
受診をおすすめする症状
次のような症状がある場合は、小児科の受診をおすすめします。
- 嘔吐を何度も繰り返す
- 水分を飲んでもすぐに吐いてしまう
- 下痢が何度も続いている
- 尿の回数が少ない
- 高熱が続く
- 強い腹痛がある
- 血便が出た
- 元気がなく、ぐったりしている
- 生後6か月未満のお子さんが嘔吐や下痢をしている
すぐに救急受診が必要な症状
次のような場合は、時間外であっても速やかに医療機関を受診してください。
- 水分が全く飲めない
- 半日以上ほとんど尿が出ていない
- 意識がはっきりしない
- 呼びかけへの反応が悪い
- けいれんを起こした
- 激しい腹痛で動けない
- 緑色(胆汁)の嘔吐を繰り返す
- 血便を繰り返す
- 顔色が悪くぐったりしている
よくある質問
下痢だけでも急性胃腸炎ですか?
はい。急性胃腸炎では、嘔吐を伴わず下痢だけが続くこともあります。特にウイルスや原因によって症状の現れ方は異なるため、下痢だけでも急性胃腸炎の可能性があります。
家族にうつらないようにするにはどうすればよいですか?
石けんと流水による手洗いを徹底し、嘔吐物や便は使い捨て手袋を着用して速やかに処理しましょう。
ノロウイルスではアルコール消毒だけでは十分な効果が得られないため、嘔吐物や便で汚れた場所は次亜塩素酸ナトリウムを用いた消毒が推奨されます。
嘔吐しているときは何も飲ませない方がよいですか?
いいえ。吐いた直後は20〜30分ほど胃を休ませ、その後は経口補水液を少量ずつ頻回に飲ませることが大切です。一度にたくさん飲ませると再び吐いてしまうことがあるため、スプーン1〜2杯程度から始めましょう。
下痢止めは使った方がよいですか?
自己判断で市販の下痢止めを使用することはおすすめできません。
下痢は病原体を体の外へ排出する働きもあるため、原因によっては回復を遅らせる可能性があります。治療が必要かどうかは医師が判断しますので、症状が続く場合は小児科へご相談ください。
急性胃腸炎の治療
急性胃腸炎の治療で最も大切なのは、脱水を防ぎながら自然に回復するまで全身状態を支えることです。
子どもの急性胃腸炎の多くはウイルスが原因であるため、病気そのものを治す特効薬はありません。症状や脱水の程度に応じて、水分補給や必要な治療を行います。
経口補水療法(ORS)が基本です
急性胃腸炎による脱水の予防や改善には、**経口補水療法(Oral Rehydration Therapy:ORT)**が基本となります。
経口補水液(OS-1®など)は、水分だけでなく、失われたナトリウムやカリウムなどの電解質を適切な割合で補うことができる飲み物です。
嘔吐が落ち着いたら、
- 少量ずつ
- ゆっくり
- こまめに
飲ませることが大切です。
一度にたくさん飲ませると再び吐いてしまうことがあるため、スプーン1〜2杯程度から始め、様子を見ながら少しずつ量を増やしましょう。
点滴が必要になることもあります
次のような場合には、経口補水だけでは十分な水分補給が難しく、点滴が必要になることがあります。
- 水分を全く飲めない
- 嘔吐を繰り返して飲めない
- 中等度以上の脱水がある
- ぐったりしている
- 医師が点滴治療が必要と判断した場合
点滴は不足した水分や電解質を補い、脱水の改善を目的として行います。
お薬は必要ですか?
急性胃腸炎では、症状や原因に応じて必要なお薬を使用します。
制吐薬(吐き気止め)
嘔吐が強く、水分補給が難しい場合には、医師の判断で制吐薬を使用することがあります。
嘔吐が落ち着くことで、水分補給がしやすくなり、脱水の改善につながることが期待されます。
整腸剤
整腸剤が処方されることがありますが、効果には個人差があります。
解熱薬
発熱によるつらさが強い場合には、必要に応じて解熱薬を使用します。
抗菌薬(抗生物質)
子どもの急性胃腸炎の多くはウイルス感染によるため、抗菌薬は通常必要ありません。
血便や細菌感染が疑われる場合など、医師が必要と判断した場合に限って使用します。
家庭でできるケア
水分補給を最優先にしましょう
食事よりも、水分補給を優先しましょう。
嘔吐がおさまってきたら、
- 経口補水液
- 母乳
- ミルク(乳児)
などで少量ずつ補給します。
スポーツドリンクには糖分が多く含まれているため、脱水時の水分補給としては経口補水液が推奨されます。
食事は無理をしなくて大丈夫です
食欲がない間は無理に食べさせる必要はありません。
嘔吐がおさまり、水分が十分に飲めるようになったら、
- おかゆ
- うどん
- パン
- スープ
- バナナ
- 豆腐
など、消化のよいものから少しずつ再開しましょう。
母乳やミルクを飲んでいる赤ちゃんでは、通常は中止する必要はありません。
家庭内感染を防ぐポイント
急性胃腸炎は家庭内で感染が広がりやすい病気です。
感染予防のために次のことを心がけましょう。
- 石けんと流水でしっかり手洗いをする
- タオルを家族で共用しない
- 嘔吐物や便は使い捨て手袋を着用して処理する
- 汚れた衣類は他の洗濯物と分けて洗う
- 嘔吐物や便で汚れた場所は次亜塩素酸ナトリウムで消毒する
ノロウイルスではアルコール消毒だけでは十分な効果が期待できないため、手洗いと適切な消毒が重要です。
登園・登校の目安
急性胃腸炎には、法律で定められた一律の出席停止期間はありません。
登園・登校の目安は、
- 嘔吐がおさまっている
- 下痢が改善している
- 普段どおり食事や水分がとれる
- 元気に活動できる
ことが基本です。
保育園や幼稚園、学校によって登園・登校の基準が異なることがあるため、それぞれの施設のルールも確認しましょう。
ロタウイルスワクチンで予防できる病気があります
急性胃腸炎の原因となるロタウイルスは、乳幼児で重い脱水を起こしやすいウイルスです。
現在、日本ではロタウイルスワクチンが定期接種となっており、重症化や入院を予防する効果が期待されています。
一方で、ワクチン接種後にはまれに腸重積が起こることがあります。特に初回接種後約1週間は、
- 激しく泣く
- 嘔吐を繰り返す
- 機嫌が悪い
- 血便(いちごジャムのような便)
などの症状がみられた場合には、速やかに医療機関を受診してください。
よくある質問
お風呂に入っても大丈夫ですか?
熱が高くなく、元気があれば短時間の入浴やシャワーは可能です。
ただし、ぐったりしている場合や脱水が疑われる場合は、体を休ませることを優先しましょう。
牛乳や乳製品は避けた方がよいですか?
通常は症状が落ち着き、水分が十分にとれるようになれば、年齢に応じた普段の食事へ戻していきます。
一時的に乳糖を消化しにくくなることがありますが、多くは自然に改善します。症状が続く場合は、小児科で相談しましょう。
下痢はいつまで続きますか?
多くは数日から1週間程度で改善しますが、原因によっては10日以上続くこともあります。
下痢が長引く場合や、血便、高熱、体重減少などを伴う場合は、小児科を受診しましょう。
家族にうつった場合はどうすればよいですか?
家族も十分な水分補給を心がけ、症状が強い場合や水分がとれない場合は医療機関を受診しましょう。
家族内で感染を広げないためには、手洗いやトイレ・洗面所の清掃、タオルの共用を避けることが大切です。
横浜市・みなとみらいでお子さんの嘔吐や下痢が心配な方へ
横浜市西区みなとみらいに位置するみなとみらい小児科クリニックは、新高島駅から徒歩8分、みなとみらい駅から徒歩10分の場所にあります。
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「何度も吐いている」「水分が飲めない」「下痢が続いている」「脱水が心配」など、気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください。
参考資料
- 厚生労働省「感染性胃腸炎」
- 国立健康危機管理研究機構(JIHS)感染症発生動向調査(IDWR)
- 日本小児科学会
- 日本小児感染症学会
- 日本小児救急医学会「エビデンスに基づいた子どもの腹部救急診療ガイドライン2017」
- 抗微生物薬適正使用の手引き 第3版(厚生労働省・国立健康危機管理研究機構)
- ESPGHAN/ESPID Evidence-Based Guidelines for the Management of Acute Gastroenteritis in Children
公開日:2026年6月27日
更新日:2026年7月28日
監修:みなとみらい小児科クリニック 院長
お子さんの体調が心配なときは、いつでもご相談ください。
みなとみらい小児科クリニック


































