
子どもの急性耳下腺炎(おたふくかぜ)|症状・原因・治療・登園の目安を小児科医が解説
「耳の下が急に腫れてきた」
「触ると痛がる」
「おたふくかぜでしょうか?」
お子さんの耳の下や頬が急に腫れると、心配になる保護者の方も多いと思います。
急性耳下腺炎とは、唾液を作る「耳下腺」に急に炎症が起こり、耳の前から耳の下、あごの周囲が腫れる状態です。
子どもの耳下腺炎としてよく知られているのが、**流行性耳下腺炎(おたふくかぜ・ムンプス)**です。
ただし、耳下腺が腫れたからといって、すべてがおたふくかぜとは限りません。
ほかのウイルス感染、細菌感染、反復性耳下腺炎などでも似た症状がみられます。
耳下腺はどこにある?
耳下腺は、耳の前から耳の下、あごの角のあたりにある大きな唾液腺です。
唾液腺は、口の中を潤したり、食べ物を飲み込みやすくしたりする唾液を作っています。
主な唾液腺には、
- 耳の前から下にある「耳下腺」
- あごの下にある「顎下腺」
- 舌の下にある「舌下腺」
があります。
耳下腺が腫れると、耳たぶの下からあごにかけてふくらみ、あごの角が分かりにくくなることがあります。
おたふくかぜでは耳下腺がよく腫れますが、顎下腺や舌下腺が腫れる場合もあります。
急性耳下腺炎とおたふくかぜは同じ病気?
同じではありません。
急性耳下腺炎は、耳下腺に急な炎症が起きている「状態」を表す言葉です。
一方、おたふくかぜはムンプスウイルスによって起こる感染症です。

そのため、耳の下が腫れている場合には、まず耳下腺が腫れているのかを確認し、その原因を考えます。
急性耳下腺炎の原因
子どもの急性耳下腺炎には、ムンプスウイルス以外にもさまざまな原因があります。
ムンプスウイルスによるおたふくかぜ
代表的な原因の一つです。
ムンプスウイルスに感染すると、耳下腺などの唾液腺が腫れ、痛みや発熱を伴うことがあります。
幼児から学童期にみられることが多い感染症です。
ムンプス以外のウイルス
おたふくかぜ以外のウイルス感染でも耳下腺炎が起こることがあります。
原因として、
- インフルエンザウイルス
- パラインフルエンザウイルス
- EBウイルス
- アデノウイルス
などが報告されています。
そのため、耳下腺が腫れているという症状だけで、おたふくかぜと断定することはできません。
細菌による耳下腺炎
細菌感染によって耳下腺に炎症が起こることもあります。
細菌性耳下腺炎では、
- 発熱
- 強い痛み
- 腫れた部分の赤み
- 口の中への膿の排出
などがみられることがあります。
ウイルス性耳下腺炎とは治療方法が異なるため、診察で原因を考えることが大切です。
反復性耳下腺炎
子どもでは、耳下腺の腫れを繰り返す反復性耳下腺炎がみられることがあります。
「以前にも同じように腫れたことがある」という場合には、おたふくかぜ以外の原因も考えます。
おたふくかぜの感染経路
おたふくかぜは、主に飛沫感染や接触によって広がります。
咳やくしゃみ、会話などによる飛沫や、唾液が付着した手や物などを介して感染することがあります。
保育園、幼稚園、学校、家庭など、子ども同士が近い距離で過ごす環境では感染が広がることがあります。
また、ムンプスウイルスに感染しても、はっきりした症状が出ない不顕性感染があります。
そのため、症状がある人だけを避ければ感染を完全に防げるわけではありません。
おたふくかぜはいつからいつまでうつる?
おたふくかぜでは、耳下腺などの腫れが出る約2日前から、腫れが出た後5日頃まで周囲に感染させる可能性があると考えられています。
つまり、耳の下が腫れるなどの分かりやすい症状が出る前から、感染が広がることがあります。
そのため、家庭内や集団生活の中で感染を完全に防ぐことが難しい場合があります。
なお、これはムンプスウイルスによるおたふくかぜの場合です。
ムンプス以外の原因による急性耳下腺炎では、感染性や感染期間は原因によって異なります。
おたふくかぜの潜伏期間
ムンプスウイルスの潜伏期間は、おおむね14〜21日程度です。
平均すると18日前後とされています。

ムンプス以外の急性耳下腺炎では原因が異なるため、すべてに同じ潜伏期間があるわけではありません。
急性耳下腺炎・おたふくかぜの主な症状
代表的な症状は、耳の前から耳の下、あごにかけての腫れと痛みです。
よくみられる症状には、
- 耳の下や頬の腫れ
- 耳の下の痛み
- あごを動かすと痛い
- 食事をすると痛い
- 飲み込むと痛い
- 発熱
- 頭痛
- だるさ
- 食欲低下
などがあります。
酸っぱい食品を食べると唾液の分泌が増え、痛みが強くなることがあります。
おたふくかぜでは両側の耳下腺が腫れることがありますが、片側だけの場合もあります。
一方が先に腫れ、その後反対側が腫れる場合もあります。
発熱も必ずみられるわけではありません。
そのため、「熱がない」「片側だけ」という理由だけで、おたふくかぜを否定することはできません。
急性耳下腺炎はどのように診断する?
耳下腺が腫れているという症状だけでは、原因を確実に判断できないことがあります。
診察では、
- 腫れている場所
- 片側か両側か
- 痛みの程度
- 発熱の有無
- 腫れ始めた時期
- 周囲でのおたふくかぜの流行
- おたふくかぜ患者との接触
- おたふくかぜワクチンの接種歴
- 過去にも耳下腺が腫れたことがあるか
- 口の中の状態
などを確認します。
耳の下にはリンパ節などもあるため、別の病気でも「耳の下が腫れた」ように見えることがあります。
必要に応じて検査を行います
症状や経過によって、ムンプスの病原体検査、血液検査、画像検査などを検討することがあります。
ただし、すべてのお子さんに検査が必要なわけではありません。
検査する時期や予防接種歴などによっては、検査結果だけではムンプスを完全に否定できない場合があります。
そのため、症状、経過、接触歴、予防接種歴、必要に応じた検査結果などを総合して判断します。
急性耳下腺炎の治療
急性耳下腺炎の治療は、原因によって異なります。
おたふくかぜはウイルス感染症のため、ムンプスウイルスそのものを治す一般的な特効薬はありません。
一方、細菌による耳下腺炎では抗菌薬が必要になることがあります。
おたふくかぜの治療
おたふくかぜでは、症状を和らげながら自然に回復するのを待つ対症療法が中心です。
症状に応じて、
- 発熱や痛みに対する解熱鎮痛薬
- 水分補給
- 十分な休養
などで対応します。
耳下腺の腫れは発症後1〜3日頃に強くなり、その後徐々に軽快します。
多くは数日で腫れが軽くなり、通常は1〜2週間程度で改善します。
細菌性耳下腺炎の治療
細菌感染が疑われる場合には、抗菌薬を使用することがあります。
膿がたまっている場合や全身状態が悪い場合には、追加の検査や処置、入院治療が必要になることがあります。
急性耳下腺炎だから必ず抗菌薬を使うわけではありません。
原因を考えて治療方法を選ぶことが大切です。
家庭でできるケア
耳下腺が腫れて痛むときは、水分を取りながら無理をせず休ませましょう。
水分を少しずつ取りましょう
口を動かしたり飲み込んだりすると痛むため、水分を嫌がることがあります。
一度にたくさん飲ませなくても構いません。
少量ずつ、こまめに飲ませましょう。
食べやすいものを選びましょう
痛みが強いときは、
- おかゆ
- うどん
- スープ
- 豆腐
- ゼリー
など、柔らかく食べやすいものを選びます。
梅干しや柑橘類など酸っぱい食品は、唾液の分泌を増やして痛みを強くすることがあります。
食欲が落ちていても、まず水分が取れていることが大切です。
早めに受診したい症状
水分が取れない場合や、腫れ・痛みが強くなっている場合には小児科へ相談しましょう。
特に、
- 水分が十分に取れない
- 尿の量や回数が明らかに減っている
- 発熱が続いている
- 腫れや痛みが急に強くなった
- 腫れた部分の赤みが強い
- 口が開けにくい
- 耳下腺の腫れを繰り返している
場合には受診をご検討ください。
速やかに医療機関へ相談したい症状
おたふくかぜでは、まれに合併症を起こすことがあります。
次のような症状がある場合には、速やかに医療機関へ相談してください。
- 強い頭痛
- 繰り返し吐く
- 意識がぼんやりする
- けいれん
- 首を動かすと強く痛がる
- 聞こえにくそうにしている
- 強い腹痛
- 男児で精巣の痛みや腫れがある
特に意識障害やけいれんなどがある場合には、緊急性の高い状態も考えます。
おたふくかぜで注意したい合併症
おたふくかぜの多くは自然に改善しますが、合併症を起こす場合があります。
代表的な合併症には、
- 無菌性髄膜炎
- 脳炎
- 難聴
- 精巣炎
- 卵巣炎
- 膵炎
などがあります。
特にムンプスによる難聴は、まれではあるものの、回復しないことがあります。
幼いお子さんでは、片側の聞こえが悪くなっても自分から訴えられない場合があります。
おたふくかぜのあとに、
- テレビの音を大きくするようになった
- 呼びかけへの反応が以前と違う
- 片側から話しかけると反応しにくい
などの変化がある場合には、ご相談ください。
おたふくかぜの登園・登校の目安
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)は、学校保健安全法で出席停止となる感染症です。
登園・登校できる目安は、
耳下腺・顎下腺・舌下腺の腫れが出た後5日を経過し、かつ全身状態が良好になってから
です。

腫れが出始めた日を0日として数えます。
この基準はムンプスによる流行性耳下腺炎の場合です。
細菌性耳下腺炎や反復性耳下腺炎など、ムンプス以外の耳下腺炎では同じ基準とは限りません。
原因やお子さんの状態に応じて判断します。
おたふくかぜワクチンは発症や合併症のリスクを減らします
おたふくかぜワクチンは、ムンプスの発症や合併症のリスクを減らすために重要です。
2026年9月現在、日本のおたふくかぜワクチンは任意接種です。
日本小児科学会では、予防効果を高めるため2回接種を推奨しています。

おたふくかぜワクチンは弱毒生ワクチンです。
接種しても発症を完全に防げるわけではありませんが、ムンプスとその合併症を予防するための重要な方法です。
母子健康手帳を確認し、まだ接種していない場合や1回しか接種していない場合には、小児科でご相談ください。
おたふくかぜワクチンの副反応
接種後に発熱や耳下腺の腫れなどがみられることがあります。
多くは一時的な症状ですが、まれに無菌性髄膜炎などの副反応が報告されています。
おたふくかぜそのものに感染した場合にも、無菌性髄膜炎、難聴、精巣炎などの合併症が起こることがあります。
ワクチン接種について不安がある場合には、接種による効果と副反応について小児科で説明を受けたうえでご検討ください。
よくある質問
Q. 兄弟や家族にうつることはありますか?
A. ムンプスの場合は、家族内でも感染する可能性があります。
症状が出る前から感染させる可能性があります。
手洗いなどの基本的な感染対策を行い、コップなど唾液が付着しやすいものの共用はできるだけ避けましょう。
ただし、家庭内感染を完全に防ぐことは難しい場合があります。
Q. 食事があまり取れません。大丈夫ですか?
A. 食欲が低下していても、水分を取れていれば経過をみられる場合があります。
痛みが強いときは、柔らかいものを少量ずつ与えましょう。
水分まで取れない、尿が減る、ぐったりしている場合には受診してください。
Q. おたふくかぜワクチンを接種していてもかかりますか?
A. 接種していても発症する可能性はあります。
ワクチンは発症を100%防ぐものではありません。
一方で、発症や合併症のリスクを減らすために重要です。
Q. 耳下腺の腫れを何度も繰り返しています
A. 反復性耳下腺炎など、ムンプス以外の原因を考えることがあります。
過去の腫れ方や回数、左右どちらが腫れたかなどを確認します。
繰り返す場合には小児科へご相談ください。
横浜市・みなとみらいで子どもの耳の下の腫れが心配な方へ
みなとみらい小児科クリニックでは、急性耳下腺炎やおたふくかぜが疑われるお子さんの診療を行っています。
「朝起きたら耳の下が腫れていた」
「触ると痛がる」
「おたふくかぜかどうか分からない」
「保育園や学校をいつから休めばよいか知りたい」
「同じ場所が何度も腫れる」
といった場合にもご相談いただけます。
診察では、耳下腺そのものが腫れているのか、耳の下にあるリンパ節など別の場所が腫れているのかも確認します。
さらに、
- 腫れている場所
- 発熱や痛みの程度
- これまでの経過
- 周囲のおたふくかぜの流行状況
- 予防接種歴
- 過去に同じ症状があったか
などを確認し、ムンプスだけでなく、ほかのウイルス感染、細菌性耳下腺炎、反復性耳下腺炎なども考えながら診療します。
横浜市西区・みなとみらいをはじめ、中区、神奈川区など周辺地域からも受診いただけます。
耳の下の腫れは、原因によって治療や登園・登校の考え方が異なります。
心配な症状があるときは、ご相談ください。
一般診療について
みなとみらい小児科クリニックでは、耳の下の腫れだけでなく、発熱、咳・鼻水、嘔吐、下痢、腹痛、発疹・湿疹など、子どもによくみられる症状について一般小児科診療を行っています。
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参考資料
- 厚生労働省「保育所における感染症対策ガイドライン」
- 文部科学省「学校において予防すべき感染症の解説」
- 国立健康危機管理研究機構(JIHS)「感染症発生動向調査からみる1983年~2024年の我が国の流行性耳下腺炎の状況」
- 国立健康危機管理研究機構(JIHS)「流行性耳下腺炎(ムンプス)感染症法に基づく医師及び獣医師の届出について/関連疾患情報」
- 日本小児科学会「日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール 2026年4月1日版」
- 日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会「おたふくかぜワクチン接種後の副反応に関する全国調査報告」
- 厚生労働省 厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会「おたふくかぜワクチンの安全性に関する資料」
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)おたふくかぜワクチン電子化された添付文書
- Centers for Disease Control and Prevention(CDC)「Clinical Overview of Mumps」
- Centers for Disease Control and Prevention(CDC)「Clinical Features of Mumps」
- 公開日:2026年6月29日
- 更新日:2026年9月8日
- 監修:みなとみらい小児科クリニック 院長
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みなとみらい小児科クリニックは、横浜市西区みなとみらい6丁目の「プライムコーストみなとみらい」2階にあります。
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- みなとみらい駅から徒歩約10分
です。
ベビーカーをご利用の方や、小さなお子さんを連れての受診にも便利な立地です。
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お車でお越しの方は、プライムコーストみなとみらいの大型立体駐車場をご利用いただけます。
駐車場は2時間まで無料です。
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〒220-0012
神奈川県横浜市西区みなとみらい6-3-4
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お子さんの体調が心配なときは、いつでもご相談ください。
みなとみらい小児科クリニック
参考資料:厚生労働省、国立健康危機管理研究機構(感染症情報)、日本小児科学会、日本小児感染症学会


































