RSウイルス(RSV)感染症とは?症状・治療・登園の目安を小児科医がわかりやすく解説

お知らせ
2026.06.29

赤ちゃんの咳やゼーゼーが心配なお母さん、お父さんへ

「鼻水が出始めたあと、咳がだんだん強くなってきた」

「ゼーゼーして、呼吸が苦しそうに見える」

「鼻が詰まって、ミルクをあまり飲めない」

このような症状があると、「ただの風邪なのかな」「このまま様子を見ていて大丈夫かな」と心配になりますよね。

RSウイルス(RSV)は、乳幼児に多い呼吸器感染症の原因となるウイルスです。生後1歳までに半数以上、2歳までにほぼすべてのお子さんが、少なくとも一度は感染するとされています。

多くのお子さんは鼻水や咳などの軽い症状で回復しますが、生後6か月未満の赤ちゃんでは、細気管支炎や肺炎を起こして重症化することがあります。

この記事では、RSウイルス感染症の原因や症状、検査、治療、家庭でのケア、予防方法、登園の目安について、保護者の方にわかりやすく解説します。

RSウイルス感染症とは

RSウイルス感染症は、RSウイルスによって起こる急性の呼吸器感染症です。

RSウイルスは、鼻やのどなどの上気道だけでなく、気管支や肺などの下気道にも感染します。

初めて感染した乳幼児の多くは軽症で回復しますが、一部のお子さんでは咳が強くなり、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった呼吸音が聞こえることがあります。

症状が進むと細気管支炎や肺炎を起こし、酸素投与や点滴、入院治療が必要になる場合もあります。

一度感染しても、感染を完全に防ぐ免疫が長期間続くわけではありません。そのため、年長児や大人になってからも繰り返し感染します。ただし、再感染では初感染よりも軽い風邪症状で済むことが多いとされています。

RSウイルスはどのように感染するの?

RSウイルスの主な感染経路は、飛沫感染と接触感染です。

飛沫感染

感染している人が咳やくしゃみをすると、ウイルスを含むしぶきが周囲に飛びます。そのしぶきを鼻や口から吸い込むことで感染します。

接触感染

ウイルスが付着した手や物に触れたあと、自分の鼻や口、目の周りを触ることで感染します。

感染のきっかけになりやすいものには、次のようなものがあります。

  • 手指
  • おもちゃ
  • ドアノブ
  • テーブル
  • 手すり
  • タオルなどの共用品

年長のお子さんや大人では、RSウイルスに感染しても軽い鼻水や咳だけで済むことがあります。そのため、感染していることに気づかないまま、家庭内で赤ちゃんへうつしてしまうこともあります。

RSウイルス感染症の潜伏期間

RSウイルスに感染してから症状が現れるまでの潜伏期間は、通常2~8日程度で、一般的には4~6日ほどです。

家族や保育園でRSウイルス感染症が確認された数日後に、鼻水や咳などの症状が始まることがあります。

RSウイルス感染症の主な症状

RSウイルス感染症は、最初は一般的な風邪によく似た症状で始まります。

初めにみられやすい症状

  • 鼻水
  • 鼻づまり
  • 発熱
  • 機嫌が悪い
  • 食欲や哺乳量の低下

多くのお子さんは、これらの症状を中心に回復していきます。

一方、初めて感染した乳幼児の一部では、数日かけて咳が強くなり、気管支や肺に炎症が広がることがあります。

症状が進んだときにみられる様子

  • 咳が強くなる
  • ゼーゼー、ヒューヒューする
  • 呼吸が速くなる
  • 息をすると胸やみぞおちがへこむ
  • 鼻を広げるようにして呼吸する
  • ミルクや水分を飲みにくくなる
  • 咳き込んで眠れない
  • 顔色が悪くなる
  • 元気がなくなる

発熱の高さだけではなく、呼吸の様子や水分を取れているかを確認することが大切です。

細気管支炎とは

RSウイルス感染症で特に注意したい病気が、細気管支炎です。

細気管支とは、肺の中にある細い空気の通り道です。赤ちゃんの細気管支はもともと細いため、感染によって粘膜が腫れたり、分泌物が増えたりすると、空気が通りにくくなります。

その結果、次のような症状が現れます。

  • ゼーゼーする
  • 呼吸が速くなる
  • 胸やみぞおちがへこむ
  • 息苦しそうに見える
  • ミルクを途中で飲むのをやめる

赤ちゃんは呼吸をしながらミルクや母乳を飲むため、鼻づまりや呼吸の苦しさがあると、十分に飲めなくなることがあります。

小さな赤ちゃんでは無呼吸に注意

特に生後間もない赤ちゃんでは、典型的な咳や発熱が目立たないまま、無呼吸発作がみられることがあります。

無呼吸発作とは、一時的に呼吸が止まったように見える状態です。

次のような場合は、速やかに医療機関へ相談してください。

  • 呼吸の間がいつもより長い
  • 顔色や唇の色が悪い
  • 呼びかけへの反応が弱い
  • ぐったりしている

呼吸が止まったように見える、唇が紫色になる、強く呼びかけても反応が悪い場合は、救急要請を検討してください。

重症化しやすいお子さん

RSウイルス感染症は、特に生後6か月未満の赤ちゃんで重症化しやすいことが知られています。

なかでも、次のようなお子さんでは注意が必要です。

  • 生後6か月未満
  • 早産で生まれた
  • 先天性心疾患がある
  • 慢性の肺疾患がある
  • 免疫機能が低下している
  • ダウン症候群がある

ただし、基礎疾患がなく、予定日どおりに生まれた赤ちゃんでも、入院治療が必要になることがあります。

「持病がないから大丈夫」と考えず、月齢の低い赤ちゃんでは呼吸や哺乳の様子をよく観察しましょう。

RSウイルス感染症の診断

診断では、検査結果だけではなく、お子さんの症状や診察所見を総合して判断します。

小児科では、主に次のような点を確認します。

  • 咳や鼻水が始まった時期
  • 発熱の有無
  • 呼吸の速さ
  • ゼーゼーしていないか
  • 胸やみぞおちがへこんでいないか
  • 顔色
  • ミルクや水分を飲めているか
  • おしっこが出ているか
  • 元気や機嫌
  • 月齢や基礎疾患
  • 家族や保育施設での流行状況

必要に応じて、指先などに小さな機器をつけ、酸素飽和度(SpO₂)を確認します。

RSウイルス迅速抗原検査

RSウイルス感染症が疑われる場合、鼻の奥の分泌物を綿棒などで採取し、RSウイルスの抗原を調べる迅速検査を行うことがあります。

迅速抗原検査では、比較的短時間で結果を確認できます。

ただし、咳や鼻水のあるすべてのお子さんに検査が必要なわけではありません。検査の保険適用には年齢や入院の有無など一定の条件があるため、次の点を考慮して医師が必要性を判断します。

  • お子さんの月齢や年齢
  • 呼吸症状の強さ
  • 基礎疾患の有無
  • 入院の必要性
  • 検査結果によって診療方針が変わるか

RSウイルス感染症では、検査が陽性か陰性かだけではなく、呼吸状態、水分摂取、全身状態を確認することが重要です。

RSウイルス感染症の治療

RSウイルス感染症には、一般的に使用される特効薬はありません。

そのため、治療は症状を和らげ、呼吸や水分摂取を支える対症療法が中心となります。

多くのお子さんは軽症で、自宅でのケアと小児科での経過観察によって回復します。一方、呼吸状態が悪い場合や、水分を十分に取れない場合には、入院治療が必要になることがあります。

自宅でできるケア

家庭では、次のことを心がけましょう。

  • 母乳、ミルク、水分を少量ずつこまめに与える
  • 鼻づまりが強い場合は、鼻水をやさしく取り除く
  • 食欲がないときは、無理に食べさせない
  • 十分に休ませる
  • 呼吸や顔色、尿の量を観察する

赤ちゃんは鼻呼吸が中心のため、鼻づまりが強いとミルクや母乳を飲みにくくなります。

授乳前などに鼻水をやさしく取り除くと、飲みやすくなることがあります。鼻吸い器を使用する場合は、無理に奥まで入れたり、強い力で何度も吸ったりする必要はありません。

水分は少量ずつこまめに

咳や鼻づまりが強いと、一度にたくさん飲むことが難しくなります。普段より1回の量を少なくし、回数を増やして与えてみましょう。

次のような場合は、脱水の可能性があります。

  • おしっこの回数や量が減っている
  • 口の中や唇が乾いている
  • 泣いても涙が少ない
  • 元気がなく、ぐったりしている
  • 水分をほとんど受けつけない

水分が取れない場合は、早めに小児科を受診してください。

抗菌薬は効くの?

RSウイルス感染症はウイルスによって起こるため、抗菌薬(抗生物質)はRSウイルスそのものには効果がありません。

ただし、中耳炎や細菌性肺炎などの細菌感染症を合併した場合には、抗菌薬が必要になることがあります。

咳やゼーゼーに対する薬が必要かどうかは、お子さんの年齢、症状、診察所見などをもとに医師が判断します。

入院が必要になる状態

次のような状態では、入院治療が必要になることがあります。

  • 呼吸が速く、苦しそう
  • 胸やみぞおちが大きくへこむ
  • 酸素飽和度が低下している
  • ミルクや水分を十分に取れない
  • 脱水がみられる
  • 無呼吸発作がある
  • 顔色や唇の色が悪い
  • 全身状態が悪く、ぐったりしている

入院した場合は、お子さんの状態に応じて次のような治療を行います。

  • 酸素投与
  • 点滴による水分補給
  • 鼻水や分泌物の吸引
  • 哺乳や栄養のサポート
  • 必要に応じた呼吸管理

入院後の経過は、月齢、呼吸状態、基礎疾患の有無などによって異なります。

症状はどのくらい続く?

RSウイルス感染症の症状は、通常1~2週間ほどで改善していきます。

ただし、症状の強さや続く期間には個人差があります。熱や鼻水が改善したあとも、咳だけがしばらく残ることがあります。

少しずつ咳が軽くなり、元気や食欲が戻っている場合は、経過をみられることもあります。

一方、次のような場合は再度受診してください。

  • 咳がだんだん悪化する
  • ゼーゼーや呼吸の苦しさが続く
  • 水分が取れない
  • 高熱が再び出る
  • 元気がなくなる
  • 顔色が悪い

RSウイルス感染症の予防

RSウイルスへの感染を完全に防ぐことは難しいものの、日常的な感染対策によって感染が広がる機会を減らすことができます。

手洗いをする

帰宅後、食事前、鼻水を拭いたあと、おむつ交換のあとなどは、石けんと流水で手を洗いましょう。

赤ちゃんに触れる前にも、家族が手を洗うことが大切です。

咳エチケットを心がける

咳や鼻水がある大人や、無理なくマスクを着用できる年齢のお子さんは、咳エチケットを心がけましょう。

咳やくしゃみをするときは、ティッシュや腕の内側で口と鼻を覆います。乳幼児に無理にマスクを着ける必要はありません。

よく触れる物を清潔にする

家庭内では、次のような物をこまめに清掃しましょう。

  • おもちゃ
  • ドアノブ
  • テーブル
  • 手すり
  • スマートフォン
  • リモコン

タオルなどの共用も、できる範囲で避けましょう。

風邪症状のある家族は赤ちゃんとの接触に注意する

家族に軽い風邪症状がある場合でも、月齢の低い赤ちゃんに近づく前には手を洗いましょう。

顔を近づけて話したり、頬や手にキスをしたりすることは控えると安心です。

妊婦さんへのRSウイルスワクチン「アブリスボ」

アブリスボは、妊婦さんに接種するRSウイルス母子免疫ワクチンです。

妊婦さんが接種すると、体内でRSウイルスに対する抗体が作られます。その抗体が胎盤を通じて赤ちゃんへ移行し、出生後の赤ちゃんがRSウイルスによる細気管支炎や肺炎などの下気道疾患にかかることを予防します。

日本では、2026年度から妊婦さんへのRSウイルスワクチンが定期接種として実施されています。

接種できる妊娠週数や接種時期、接種場所などについては、かかりつけの産婦人科または接種を行っている医療機関へご相談ください。

RSウイルス感染症の登園・登校の目安

RSウイルス感染症には、学校保健安全法による一律の出席停止期間は定められていません。

登園・登校の目安は、次のような状態になっていることです。

  • 咳やゼーゼーなどの呼吸器症状が落ち着いている
  • 呼吸が苦しそうではない
  • 食事や水分を普段に近い状態で取れる
  • 元気があり、集団生活を送れる
  • 全身状態が良い

熱が下がっていても、咳が強い、呼吸が苦しそう、水分を十分に取れない、元気がない場合は、登園を控えましょう。

保育園や幼稚園によって独自の登園基準や、医師の意見書が必要な場合があります。登園前に園のルールも確認してください。

こんなときは早めに受診しましょう

次のような症状がある場合は、早めに小児科へ相談してください。

  • 咳がだんだん強くなっている
  • ゼーゼー、ヒューヒューしている
  • いつもより呼吸が速い
  • 息をすると胸やみぞおちがへこむ
  • ミルクや水分を十分に飲めない
  • おしっこの回数や量が少ない
  • 元気がなく、ぐったりしている
  • 顔色や唇の色が悪い
  • 生後3か月未満で発熱がある

呼吸が止まるように見える、唇が紫色になる、強く呼びかけても反応が悪い場合は、速やかに救急受診を検討してください。

横浜市・みなとみらいでRSウイルス感染症が心配な方へ

横浜市西区みなとみらいに位置するみなとみらい小児科クリニックは、新高島駅から徒歩8分、みなとみらい駅から徒歩10分の場所にあります。

当院では、RSウイルス感染症をはじめ、細気管支炎、肺炎、気管支炎など、お子さんの呼吸器感染症の診療を行っています。

診察では、次のような点を丁寧に確認します。

  • 呼吸の速さや苦しさ
  • ゼーゼーや胸の音
  • 胸やみぞおちのへこみ
  • 酸素飽和度(SpO₂)
  • ミルクや水分を飲めているか
  • おしっこが出ているか
  • 顔色や元気
  • 月齢や基礎疾患

必要に応じてRSウイルス迅速抗原検査を行います。

呼吸状態が悪い場合や、入院治療が必要と判断した場合には、連携する医療機関へ速やかにご紹介します。

「ゼーゼーしていて心配」

「ミルクを飲む量が減っている」

「このまま自宅で様子を見てよいのか分からない」

このような場合は、無理に様子を見続けず、早めにご相談ください。

参考資料

厚生労働省「保育所における感染症対策ガイドライン」

厚生労働省「RSウイルス感染症」

厚生労働省「RSウイルス感染症に関するQ&A」

国立健康危機管理研究機構(JIHS)感染症情報

日本小児科学会

お子さんの体調が心配なときは、いつでもご相談ください。

みなとみらい小児科クリニック