ヒトメタニューモウイルス感染症とは?症状・治療・登園の目安を小児科医がわかりやすく解説

お知らせ
2026.06.29

ヒトメタニューモウイルス感染症は乳幼児に多い呼吸器感染症です

ヒトメタニューモウイルス感染症(Human metapneumovirus:hMPV)は、乳幼児に多くみられる呼吸器のウイルス感染症です。発熱や鼻水、咳など風邪によく似た症状で始まりますが、お子さんによってはゼーゼー(喘鳴)や呼吸が苦しくなる症状を伴い、細気管支炎や肺炎を起こすことがあります。

多くは自然に回復しますが、乳児や基礎疾患のあるお子さんでは重症化することもあるため、呼吸の様子や水分がとれているかをよく観察することが大切です。

この記事では、ヒトメタニューモウイルス感染症の特徴や症状、原因、感染経路、潜伏期間、診断(検査)について、保護者の皆さまに分かりやすく解説します。

まず知っておきたいポイント

項目内容原因ヒトメタニューモウイルス(hMPV)主な症状発熱・咳・鼻水・ゼーゼー(喘鳴)潜伏期間約3〜6日感染経路飛沫感染・接触感染流行時期春(3〜6月頃)に多いが、年間を通してみられる検査診察、必要に応じて迅速抗原検査治療症状を和らげる対症療法が中心

ヒトメタニューモウイルス感染症とは?

ヒトメタニューモウイルスは、呼吸器感染症を起こすウイルスの一つです。2001年に発見されましたが、新しいウイルスという意味ではなく、以前から存在していたウイルスが解析技術の進歩によって明らかになりました。

主に乳幼児に感染し、多くのお子さんは5〜10歳頃までに一度以上感染すると考えられています。

日本では春(3〜6月頃)に流行することが多い感染症ですが、流行時期は年によって異なり、年間を通して発生することがあります。

原因

原因は**ヒトメタニューモウイルス(hMPV)**への感染です。

ウイルスが鼻やのどから体内へ入り、気道(空気の通り道)に炎症を起こします。

その結果、次のような呼吸器の病気を引き起こします。

  • 上気道炎(鼻やのどの炎症)
  • 気管支炎
  • 細気管支炎
  • 肺炎

また、乳幼児では急性中耳炎を合併することもあります。

どのように感染する?

ヒトメタニューモウイルスは、飛沫感染接触感染によって広がります。

飛沫感染

感染した人の咳やくしゃみ、会話などで飛び散った飛沫を吸い込むことで感染します。

接触感染

ウイルスが付着した手や、おもちゃ、ドアノブ、テーブルなどに触れ、その手で目・鼻・口を触ることで感染します。

保育園や幼稚園などの集団生活や家庭内では感染が広がりやすいため、石けんによる手洗いなど基本的な感染対策が大切です。

潜伏期間

感染してから症状が現れるまでの潜伏期間は約3〜6日です。

発症すると、

  • 発熱
  • 鼻水

などの症状が現れます。

症状が出る前後から周囲へ感染させる可能性があるため、兄弟姉妹や家族へうつることも少なくありません。

主な症状

ヒトメタニューモウイルス感染症では、一般的な風邪によく似た症状がみられます。

主な症状は次のとおりです。

  • 発熱
  • 鼻水
  • 鼻づまり
  • のどの痛み
  • 食欲低下
  • 元気がない

乳幼児では、さらに次のような症状がみられることがあります。

  • ゼーゼー(喘鳴)
  • 息が速い
  • 呼吸が苦しそう
  • 胸がペコペコへこむ呼吸(陥没呼吸)

特に乳児では短時間で呼吸状態が悪化することもあります。「いつもの風邪と違う」「息づかいが苦しそう」と感じた場合は、早めに小児科へ相談しましょう。

診断(検査)

ヒトメタニューモウイルス感染症は、症状だけで確定診断することはできません。

そのため小児科では、

  • お子さんの年齢
  • 発熱や咳などの症状の経過
  • 周囲での流行状況
  • 呼吸の状態
  • 聴診などの診察所見

を総合的に判断して診断します。

必要に応じて、鼻の奥を綿棒でぬぐって調べる迅速抗原検査を行います。

ただし、この検査は保険診療では主に6歳未満で肺炎が疑われる場合などが適応であり、すべてのお子さんに実施されるわけではありません。診察だけで診断し、治療を開始することも少なくありません。

また、症状が似ている

  • RSウイルス感染症
  • インフルエンザ
  • 新型コロナウイルス感染症
  • マイコプラズマ感染症

などとの区別が必要な場合には、それぞれに応じた検査を追加することがあります。

呼吸状態が悪い場合や肺炎が疑われる場合には、胸部レントゲン検査や血液検査を行うこともあります。

よくある質問

Q. ヒトメタニューモウイルス感染症は普通の風邪と何が違うのですか?

A. ヒトメタニューモウイルスも風邪の原因となるウイルスの一つですが、乳幼児ではゼーゼー(喘鳴)や呼吸が苦しくなる症状が現れ、細気管支炎や肺炎につながることがある点が特徴です。症状だけで他の感染症と区別することは難しいため、咳が強い場合や呼吸が苦しそうな場合は小児科を受診しましょう。

Q. 一度感染するともうかかりませんか?

A. いいえ。一度感染しても再感染することがあります。ただし、一般的には初めて感染したときより症状は軽くなることが多いとされています。

治療

ヒトメタニューモウイルス感染症には、現在、ヒトメタニューモウイルスに対する特効薬はありません。

そのため、治療は症状を和らげながら、お子さん自身の回復力を支える対症療法が中心となります。

症状に応じて、次のような治療を行います。

  • 十分な水分補給
  • 安静・休養
  • 必要に応じた解熱薬(アセトアミノフェンなど)
  • ゼーゼー(喘鳴)がある場合の吸入治療
  • 呼吸状態が悪い場合の酸素投与
  • 重症例では入院治療

なお、**抗菌薬(抗生物質)はウイルスには効果がありません。**急性中耳炎や細菌性肺炎などの細菌感染を合併した場合に限り、必要に応じて使用します。

多くのお子さんは1週間程度で回復しますが、咳は熱が下がった後もしばらく続くことがあります。

家庭でできるケア

水分をこまめにとりましょう

発熱や呼吸が速いと、水分が不足しやすくなります。

一度にたくさん飲めない場合は、

  • 麦茶
  • 母乳・ミルク
  • 経口補水液(必要な場合)

などを少量ずつ、こまめに飲ませましょう。

食欲がないときは無理をしなくても大丈夫です

発熱中は食欲が落ちることがよくあります。

水分が十分にとれていれば、無理に食事を食べさせる必要はありません。

食欲が戻ってきたら、

  • おかゆ
  • うどん
  • スープ
  • ゼリー

など、消化がよく食べやすいものから少しずつ始めましょう。

鼻水はこまめに取り除きましょう

乳幼児は自分で鼻をかむことが難しいため、鼻づまりが強いと呼吸や哺乳、睡眠に影響することがあります。

鼻吸い器などを使って、必要に応じて鼻水を取り除いてあげると楽になることがあります。

十分な休養をとりましょう

体力を回復させるためには、十分な睡眠と休養が大切です。

過度に乾燥した環境は避け、お子さんがゆっくり休める環境を整えましょう。

小児科を受診する目安

次のような場合は、小児科を受診しましょう。

  • 発熱が3~5日以上続く
  • 咳がひどく眠れない
  • ゼーゼーしている
  • 水分や食事が十分にとれない
  • 元気がない
  • 呼吸がいつもより速い
  • 症状が悪化してきた
  • 耳を痛がる、耳だれが出る

乳幼児では短時間で症状が変化することがあります。

「いつもの風邪と違う」と感じた場合は、早めの受診をおすすめします。

救急受診を考えた方がよい症状

次のような症状がある場合は、夜間や休日であっても救急受診を検討してください。

  • 呼吸が苦しそう
  • 息がとても速い
  • 胸が大きくへこんで呼吸している(陥没呼吸)
  • 唇や顔色が紫色になっている
  • 水分がほとんど飲めない
  • 半日以上おしっこが出ない
  • ぐったりして反応が悪い
  • けいれんを起こした
  • 生後3か月未満で38℃以上の発熱がある

登園の目安

ヒトメタニューモウイルス感染症は、学校保健安全法で出席停止期間が定められている感染症ではありません。

日本小児科学会では、

「全身状態が良好で、普段どおりの生活ができること」

を登園の目安としています。

具体的には、

  • 解熱している
  • 水分や食事が十分にとれている
  • 元気に遊べる
  • 日常生活に支障がない

状態であれば登園を検討できます。

ただし、保育園や幼稚園によって登園基準が異なることがありますので、各施設のルールも確認しましょう。

予防方法

ヒトメタニューモウイルス感染症を予防するワクチンは現在実用化されていません。

そのため、日頃から基本的な感染対策を行うことが大切です。

  • 石けんによる手洗い
  • 咳エチケット
  • 鼻水を拭いた後の手洗い
  • おもちゃやドアノブなど、人がよく触れる場所を清潔に保つ
  • 体調が悪い人との接触をできるだけ避ける

家庭内に感染した方がいる場合は、タオルの共用を避けることも感染予防につながります。

よくある質問

Q. 熱だけでもヒトメタニューモウイルス感染症の可能性はありますか?

A. はい。発症初期には発熱だけの場合もあります。その後、咳や鼻水などの症状が現れることが多いため、症状の変化に注意しましょう。

Q. 兄弟や家族にうつりますか?

A. はい。飛沫感染や接触感染でうつるため、家庭内で感染が広がることがあります。手洗いや咳エチケットを心がけ、タオルの共用は避けましょう。

Q. お風呂に入っても大丈夫ですか?

A. 高熱がある時やぐったりしている時は控えましょう。熱が下がり、元気があれば短時間の入浴やシャワーは可能です。

Q. 咳だけが続いています。受診した方がよいですか?

A. 咳は回復後もしばらく続くことがあります。ただし、咳が強くなってきた場合や呼吸が苦しそうな場合、2~3週間以上改善しない場合は再度受診しましょう。

Q. 大人も感染しますか?

A. はい。大人も感染しますが、多くは軽い風邪症状で回復します。一方で、高齢者や基礎疾患のある方では肺炎など重症化することがあるため注意が必要です。

みなとみらい小児科クリニックではヒトメタニューモウイルス感染症の診療を行っています

横浜市西区みなとみらいに位置するみなとみらい小児科クリニックは、新高島駅から徒歩8分、みなとみらい駅から徒歩10分の場所にあります。

当院では、ヒトメタニューモウイルス感染症をはじめ、RSウイルス感染症やインフルエンザなど、お子さんのさまざまな呼吸器感染症を診療しています。

診察では、お子さんの症状や呼吸状態を丁寧に確認し、必要に応じて検査を行いながら、一人ひとりの状態に合わせた治療をご提案しています。

「熱が続いている」「咳がひどい」「ゼーゼーしている」「息苦しそう」など、ご心配な症状がありましたら、お気軽にご相談ください。

参考資料

  • 厚生労働省
  • 日本小児科学会
  • 日本小児感染症学会
  • 国立健康危機管理研究機構(JIHS)感染症情報提供サイト
  • MSDマニュアル プロフェッショナル版
  • Centers for Disease Control and Prevention(CDC)

公開日:2026年6月29日
更新日:2026年7月26日
監修者:みなとみらい小児科クリニック 院長

お子さんの体調が心配なときは、いつでもご相談ください。

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