
HPVワクチンをご検討中の保護者の方へ
HPVワクチンは、将来の子宮頸がんやその前がん病変などを予防するためのワクチンです。
まず、保護者の方に知っていただきたいポイントは次のとおりです。
- 9価HPVワクチンは9歳以上の男女が接種できます
- 全国一律の定期接種は、小学6年生から高校1年生相当の女の子が対象です
- 15歳になるまでに接種を始める場合は、原則2回で完了できます
- 男の子は任意接種ですが、日本小児科学会も接種を推奨しています
- 最も多い副反応は、接種した腕の痛みです
- 接種後も、将来は子宮頸がん検診を受けることが大切です
「副反応が心配」「以前の報道を見て不安になった」「男の子にも必要なの?」と迷われるご家庭も少なくありません。
この記事では、HPVワクチンの効果、定期接種の対象、接種回数、副反応、安全性について、保護者の方にわかりやすく解説します。
HPVワクチンとは?
HPVは「ヒトパピローマウイルス」の略称です。皮膚や粘膜に感染する一般的なウイルスで、多くの場合は感染しても自然に排除されます。
一方、一部の型への感染が長期間続くと、子宮頸がんやその前がん病変、肛門がん、腟がん、外陰がんなどにつながることがあります。また、HPVは中咽頭がんや陰茎がんなどにも関係することが知られています。
現在、定期接種で使用されるワクチンは、9価HPVワクチン「シルガード®9」です。9種類のHPV型を対象とし、HPV感染に関連する病気や前がん病変の予防を目的としています。
ただし、すでに感染しているHPVを体から排除したり、すでに生じている病変を治療したりするワクチンではありません。そのため、HPVに感染する可能性が高くなる前に接種することが大切です。
HPVワクチンで予防が期待できる病気
9価HPVワクチンでは、ワクチンに含まれるHPV型に起因する次の病気や病変の予防が期待できます。
- 子宮頸がんとその前がん病変
- 外陰や腟に生じる前がん病変
- 肛門がんとその前がん病変
- 尖圭コンジローマ
HPVは中咽頭がんや陰茎がんにも関係します。ただし、これらについては、子宮頸がんなどと同じように国内の承認上、ワクチンによる直接的な予防効果が確認されているという意味ではありません。
また、HPVワクチンですべての子宮頸がんを防げるわけではありません。ワクチンを接種した場合も、将来は自治体から案内される子宮頸がん検診を受けることが重要です。
なぜ子どものうちに接種するの?
HPVワクチンは、HPVに感染する前に接種することで、より高い予防効果が期待できます。
「まだ子どもなのに早すぎるのでは?」と感じるかもしれませんが、子どもの時期に接種するのは、感染する可能性が高くなる前に免疫をつけておくためです。
また、15歳になるまでに接種を始めた場合は、原則2回の接種で完了できます。接種回数の面でも、適切な時期に開始することにはメリットがあります。
接種できる年齢と定期接種の対象
9価HPVワクチンは、9歳以上の男女が接種できます。
ただし、「接種できる年齢」と「全国一律の公費による定期接種の対象」は異なります。項目女の子男の子接種できる年齢9歳以上9歳以上全国一律の定期接種小学6年生~高校1年生相当対象外女子の標準的な時期中学1年生―15歳になるまでに開始原則2回原則2回15歳以上で開始原則3回原則3回
全国一律の定期接種として公費で受けられるのは、小学6年生から高校1年生相当の女の子です。標準的な接種時期は中学1年生とされています。
男の子は全国一律の定期接種ではなく、原則として任意接種です。ただし、日本小児科学会は男の子への接種も推奨しています。自治体によっては独自の助成を行っている場合があるため、お住まいの自治体へご確認ください。
接種回数とスケジュール
接種回数は、1回目を受ける年齢によって異なります。考え方は男女共通です。1回目を受ける年齢接種回数標準的なスケジュール15歳になるまで2回初回、6~12か月後15歳以上3回初回、2か月後、6か月後
15歳になるまでに1回目を受ける場合
原則として2回接種で完了します。1回目と2回目の間隔は、少なくとも5か月以上あける必要があります。5か月未満で2回目を受けた場合は、3回目の接種が必要です。
15歳以上で1回目を受ける場合
原則として3回接種です。通常は、1回目の2か月後に2回目、1回目の6か月後に3回目を受けます。
予定していた間隔が空いてしまっても、通常は最初からやり直す必要はありません。残りの回数や接種時期について医療機関へご相談ください。
HPVワクチンの副反応
HPVワクチンに限らず、すべてのワクチンで副反応が起こる可能性があります。
最も多くみられるのは、接種した部位の痛みです。そのほか、次のような症状がみられることがあります。主な症状一般的な経過接種した腕の痛み多くは数日以内に軽くなります腫れ・赤み一時的にみられることがあります頭痛・倦怠感多くは一時的です筋肉痛・発熱症状が強い場合はご相談ください
症状が強い場合や、数日たっても改善しない場合は、接種した医療機関へご相談ください。
接種後のめまいや失神について
注射の痛みや緊張によって、「血管迷走神経反射」が起こることがあります。
主な症状は、めまい、冷や汗、顔色不良、吐き気、一時的な失神などです。これはHPVワクチンだけに起こるものではなく、採血やほかの注射でもみられます。
転倒によるけがを防ぐため、接種後は椅子に座るなどして、少なくとも15分程度は院内で体調を確認します。以前に注射や採血で気分が悪くなったことがある方は、接種前に医師やスタッフへお伝えください。
HPVワクチンの安全性について
過去には、HPVワクチン接種後の慢性的な痛み、手足の動かしにくさ、強い疲労感など、多様な症状が大きく報道されました。そのため、現在も不安を感じている保護者の方がいらっしゃいます。
その後、日本や海外で大規模な調査や疫学研究が行われました。現在までの研究では、これらの多様な症状がHPVワクチンを接種した人で特に多く発生することを示す結果は確認されていません。
ただし、接種後に起きた症状を軽視してよいという意味ではありません。接種との関係が明らかかどうかにかかわらず、痛みや体調不良が続く場合は、適切な診察や支援を受けることが大切です。
こんなときは医療機関へ相談しましょう
次のような症状がみられる場合は、医療機関へ相談してください。
- 呼吸が苦しい
- 全身にじんましんが出た
- 顔や唇が腫れた
- 意識がもうろうとしている
- 強い頭痛や痛みが続く
- 発熱や体調不良が長引く
- 学校生活や日常生活に支障がある
- ご本人やご家族が「いつもと違う」と感じる
呼吸困難、全身のじんましん、意識状態の変化などが急に現れた場合は、重いアレルギー反応の可能性があります。速やかに医療機関を受診してください。
HPVワクチンについてよくある質問
男の子も接種した方がよいですか?
9価HPVワクチンは、9歳以上の男の子も接種できます。全国一律の定期接種ではありませんが、日本小児科学会は男の子への接種も推奨しています。
15歳未満なら必ず2回で終わりますか?
15歳になるまでに1回目を受け、1回目と2回目の間隔を5か月以上あけた場合は、原則2回で完了します。間隔が5か月未満の場合は3回目が必要です。
接種間隔が空いてしまいました。最初からやり直しますか?
通常は最初からやり直す必要はありません。これまでの接種記録を確認し、残りの接種時期を調整します。母子健康手帳をご持参のうえ、医療機関へご相談ください。
ワクチンを接種すれば、子宮頸がん検診は不要ですか?
いいえ。HPVワクチンですべての子宮頸がんを防げるわけではないため、接種後も対象年齢になったら定期的に子宮頸がん検診を受けることが大切です。
副反応が心配な場合、接種前に相談できますか?
接種を決める前の相談も可能です。効果、副反応、接種回数などについて説明を受け、ご本人とご家族が納得してから判断しましょう。
小児科医としてお伝えしたいこと
HPVワクチンについて不安を感じることは、決して特別なことではありません。インターネットやSNSでは、医学的根拠が十分でない情報や、現在の制度とは異なる古い情報を目にすることもあります。
大切なのは、不安を抱えたまま接種することでも、情報の一部だけを見て接種を見送ることでもありません。期待できる効果と副反応の両方を知り、ご本人とご家族が納得したうえで判断することが大切です。
分からないことや心配なことがある場合は、接種前に小児科へご相談ください。
横浜市・みなとみらいでHPVワクチンをご検討の方へ
横浜市西区みなとみらいにある、みなとみらい小児科クリニックは、新高島駅から徒歩8分、みなとみらい駅から徒歩10分の場所にあります。
当院では、HPVワクチンの接種に加えて、次のようなご相談にも対応しています。
- 女の子の定期接種について確認したい
- 男の子の任意接種について相談したい
- 接種回数や次回の接種日を確認したい
- 副反応や安全性について説明を聞きたい
- 接種するかどうか迷っている
接種を決める前のご相談だけでも構いません。HPVワクチンについて不安や疑問がある方は、お気軽にご相談ください。
まとめ
- 9価HPVワクチンは9歳以上の男女が接種できます
- 全国一律の定期接種は、小学6年生から高校1年生相当の女の子が対象です
- 15歳になるまでに接種を始めた場合は、原則2回接種です
- 男の子は任意接種ですが、日本小児科学会も接種を推奨しています
- 最も多い副反応は接種した腕の痛みです
- 接種後に症状が続く場合は医療機関へ相談しましょう
- ワクチン接種後も、将来は子宮頸がん検診を受けることが大切です
参考資料
世界保健機関(WHO)HPVワクチンの安全性に関する資料
厚生労働省「HPVワクチン」
厚生労働省「HPVワクチンに関するQ&A」
日本小児科学会「日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール」
日本小児科学会「任意接種ワクチンの小児への接種」
シルガード®9電子添文
お子さんの体調が心配なときは、いつでもご相談ください。
みなとみらい小児科クリニック


































