子どもが急に吐くと、どうすればいいのか頭が真っ白になってしまうものです。とくに夜中や休日だと、すぐに病院に行くべきか、家で様子を見ていいのか、判断に迷う場面も多いのではないでしょうか。
インターネットで調べると、対処の手順や受診の目安がたくさん出てきます。しかし、保護者が実際につまずきやすいのは「吐いた直後に何をするか」と「水分をどうあげるか」という、ほんの数十分の対応です。ここを誤ると、よかれと思った水分補給がかえって嘔吐を長引かせてしまうことがあります。横浜・みなとみらいで小児医療に携わる立場から、嘔吐したときにまず押さえたい対応の順序と、つまずきやすいポイントをお伝えします。
吐いた直後にやりがちな失敗を避ける

子どもが吐いたとき、保護者が一番やってしまいがちなのが、すぐに水分を飲ませることです。「脱水が心配だから」と急いで飲ませたくなりますが、吐いた直後の胃は強く刺激を受けて敏感になっており、ここで水分を入れると、また吐いてしまう可能性が高くなります。
そこで大切なのが、まず胃を休ませる時間をとることです。吐いた直後は30〜60分ほど何も与えずに休ませてから、水分補給を始めるのが基本とされています。この「待つ」という一手間が、再び吐いて体力を消耗する悪循環を防ぎます。
姿勢にも注意が必要です。吐いたあとに横になったままだと、吐いたものが気道に入る誤嚥のリスクがあります。飲ませるときは座らせるか、頭を少し起こした姿勢を保つと安心です。眠そうなときは、顔を横向きにして寝かせると、万一また吐いても安全です。
水分は「少量を、間隔をあけて」が基本

休ませる時間が過ぎたら、いよいよ水分補給です。ここでの合言葉は「少量を、こまめに」です。
まずスプーン1杯ほどの約5mlから始め、5〜10分おきに与えていきます。一度にたくさん飲ませると胃がびっくりして再び吐いてしまうため、ごく少しずつがコツです。吐かずに飲めることを確認しながら、少しずつ量を増やしていきます。もし途中で吐いてしまっても、あわてず、また少し休んでから5mlに戻してやり直せば大丈夫です。
子どもが「もっと飲みたい」とせがんでも、ボトルやコップごと渡さないことです。渡してしまうと一気に飲んでしまい、また吐く原因になります。手間はかかりますが、大人がスプーンやスポイトで少量ずつ与えるのが、結果的に近道になります。
吐き気が落ち着いてきたら、与える間隔を5分おきから3分おき、1分おきと、少しずつ縮めていく方法もあります。焦らず段階を踏むことが、胃腸をいたわりながら確実に水分を取り戻すことにつながります。
水やお茶だけでは足りない理由

「水分なら何でもいいのでは」と思われるかもしれませんが、ここに落とし穴があります。嘔吐や下痢のときは、水分だけでなく塩分(電解質)も同時に失われているため、水やお茶だけを飲ませ続けると、かえって回復が遅れることがあります。
そこで適しているのが、経口補水液です。これは水分に加えて、失われた塩分とブドウ糖がバランスよく含まれた飲み物で、体への吸収がよいことから「飲む点滴」とも呼ばれます。水やお茶は吸収率が低く、スポーツドリンクは糖分が多く塩分が足りないため、嘔吐や下痢のときには経口補水液のほうが向いています。
なぜ糖分まで必要なのか、少し踏み込んで説明します。子どもは体に蓄えている糖(エネルギー源)が大人より少なく、食べられない時間が続くとすぐに底をついてしまうのです。糖が足りなくなると体は脂肪を燃やしてエネルギーを作りますが、このときにケトン体という物質ができ、これがさらに吐き気や腹痛を強めてしまうことがあります。水やお茶だけだと糖が補えず、この悪循環に入りやすくなる、というわけです。だからこそ、糖分と塩分の両方を含む経口補水液が役立ちます。
経口補水液の味を嫌がる場合は、ゼリータイプを試したり、製氷皿で凍らせて少しずつなめさせたりする工夫もあります。どうしても受け付けないときは、麦茶や湯冷まし、味噌汁の上澄みなどで一時的に代用しながら、飲める水分をまず確保してください。冷たい飲み物や柑橘系のジュース、炭酸、乳製品は胃腸を刺激するため、このときは避けるのが無難です。なお、赤ちゃんの場合は母乳やミルクを続けて構いませんが、一度にたくさん飲むと吐きやすいため、少量ずつ与えるよう調整します。
吐いたものの片付けと感染予防
見落とされがちですが、吐いたものの片付け方も大切です。子どもの嘔吐の原因で多いウイルス性の胃腸炎は感染力が強く、家庭内で広がりやすいため、処理の仕方ひとつで家族へのうつりやすさが変わります。
片付けるときは使い捨ての手袋とマスクをつけ、吐いたものを外側から内側に向けて静かに拭き取ります。そのあと、塩素系の漂白剤を薄めたもので消毒するのがポイントです。アルコール消毒では効果が不十分なウイルスがあるため、塩素系を使う点に注意してください。拭き取ったものはポリ袋に入れて口を縛り、処理が終わったら石けんで30秒から1分ほどかけて丁寧に手を洗います。きょうだいがいる場合は、片付けている間そばに来ないようにすると、感染の広がりを抑えられます。
こんなサインがあれば早めに受診を
多くの嘔吐は家庭でのケアで落ち着いていきますが、なかには早めに医療機関にかかったほうがよい場合もあります。判断の目安を知っておくと、迷ったときに役立ちます。
たとえば、水分をまったく受け付けず、吐き続けてしまうときは注意が必要です。半日以上おしっこが出ない、唇や口の中が乾いている、涙が出ない、ぐったりして元気がないといった脱水のサインがあるときも見逃せません。これらは家庭でのケアだけでは追いつかない可能性があります。また、吐いたものに血や緑色の液が混じる、激しく頭を痛がる、けいれんがある、意識がぼんやりしているといった様子は、胃腸炎以外の病気が隠れていることもあるため、ためらわずに受診してください。
子どもは大人より体内の水分の割合が高く、短時間で脱水が進みやすいという特徴があります。「様子を見る」よりも「早めに相談する」ほうが安心なケースが多いことは、覚えておいて損はありません。受診のときは、吐いた回数とおしっこの回数、飲めた水分の量をメモして伝えると、診察がスムーズに進みます。発熱を伴う場合の病院の選び方や、熱の原因が気になるときは、下記記事も参考にしてください。
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みなとみらい小児科クリニックにご相談ください
横浜市西区みなとみらいに位置するみなとみらい小児科クリニックは、新高島駅から徒歩8分、みなとみらい駅から徒歩10分の場所にあります。小児科一般の診療に加え、感染症の迅速診断や乳幼児健診、各種予防接種など、お子さんの急な体調の変化に幅広く対応しています。
子どもの嘔吐は、原因の多くがウイルス性の胃腸炎ですが、まれに別の病気が隠れていることもあります。「水分が取れずぐったりしている」「吐き気が止まらない」「家でのケアで合っているか不安」と感じたときは、まずはお気軽にご相談ください。お子さんの状態を確認し、家庭でのケアで様子を見て十分か、点滴などの処置が必要か、あるいは専門的な検査が望ましいかを判断してご案内します。
夜中に突然吐いて不安になったり、何度も吐く我が子を前にどうすればいいか分からなくなったりすることは、子育てのなかで誰もが経験するものです。一人で抱え込まず、気軽に相談できる場所があることが、保護者にとっての安心につながります。お子さんの体調と、ご家族の毎日が少しでも楽になるよう、長くお付き合いできる関係づくりを大切にしています。


































