
生まれてくる赤ちゃんをRSウイルス感染症から守る母子免疫ワクチン
「妊娠中にワクチンを接種しても大丈夫?」「赤ちゃんにどのような効果があるの?」「副反応が心配」と感じる妊婦さんやご家族は少なくありません。
アブリスボは、妊婦さんが接種することで、生まれてくる赤ちゃんのRSウイルスによる下気道感染症を予防するためのワクチンです。
妊婦さんの体内で作られた抗体が胎盤を通して赤ちゃんへ移行し、RSウイルス感染症が重症化しやすい出生後早期の赤ちゃんを守ります。
2026年度から、妊婦さんへのRSウイルス母子免疫ワクチンは、予防接種法に基づく定期接種となりました。
アブリスボとは?
アブリスボは、RSウイルスを原因とする新生児・乳児の下気道疾患を予防する目的で、妊婦さんに接種するワクチンです。
接種すると、妊婦さんの体内でRSウイルスに対する抗体が作られます。その抗体が胎盤を通して胎児へ移行し、赤ちゃんは出生時から母体由来の抗体によって守られます。
これは、赤ちゃん自身にワクチンを接種して免疫を作る方法ではありません。お母さんから受け取った抗体で赤ちゃんを守る「受動免疫」という仕組みです。
アブリスボを接種しても、RSウイルスへの感染を完全に防げるわけではありません。しかし、RSウイルスによる細気管支炎や肺炎などの下気道感染症や、重症化を予防する効果が期待されています。
RSウイルス感染症とは?
RSウイルス感染症は、乳幼児によくみられる呼吸器感染症です。ほとんどのお子さんが2歳までに少なくとも一度は感染し、その後も繰り返し感染することがあります。
年長児や大人では、鼻水、咳、発熱などの軽いかぜ症状で回復することが多くあります。
一方、生後間もない赤ちゃんは気道が細く、免疫機能や呼吸機能も未熟です。そのため、感染が気管支や肺まで広がり、細気管支炎や肺炎を起こすことがあります。
赤ちゃんが感染したときに注意したい症状
RSウイルス感染症が悪化すると、次のような症状が現れることがあります。
- ゼーゼー、ヒューヒューする
- 呼吸が速い、苦しそう
- 胸やみぞおちが呼吸のたびにへこむ
- ミルクや母乳を十分に飲めない
- 顔色や唇の色が悪い
- 呼吸が一時的に止まる
- ぐったりして反応が悪い
十分に飲めない場合は脱水になることがあります。また、呼吸状態が悪い場合は、酸素投与や点滴、入院治療が必要になることもあります。
特に生後6か月未満の乳児は、基礎疾患がなく正期産で生まれた場合でも重症化することがあります。
早産で生まれた赤ちゃんや、心臓、肺、免疫機能などに病気がある赤ちゃんでは、さらに注意が必要です。
アブリスボを妊娠中に接種する理由
生まれたばかりの赤ちゃんは、感染症から自分を守る免疫機能が十分に発達していません。
アブリスボを妊娠中に接種すると、お母さんの体内で作られた抗体が胎盤を通して赤ちゃんへ届けられます。これにより、RSウイルス感染症が重症化しやすい出生直後から生後早期を守ることを目指します。
母体から受け取った抗体は、時間の経過とともに少しずつ減少します。アブリスボは、特に出生後からおおむね生後6か月までのRSウイルス下気道感染症を予防する効果が検討されています。
ただし、効果の程度や持続期間には個人差があり、接種後もRSウイルス感染症にかかる可能性はあります。
接種対象と接種スケジュール
アブリスボの承認上の接種時期は、妊娠24週から36週までです。
2026年度からの定期接種では、原則として次の妊婦さんが対象です。
- 接種時に妊娠28週0日から36週6日まで
- 接種回数は妊娠ごとに1回
- 0.5mLを筋肉内に接種
医薬品として接種できる時期と、定期接種として公費で受けられる時期は同じではありません。
公費負担の対象や予約方法、必要書類などは、住民票のある自治体や接種医療機関へご確認ください。
接種時には、妊娠週数や出産予定日、接種歴を確認するため、母子健康手帳をお持ちください。妊娠経過、持病、アレルギー歴、使用中のお薬についても医師へお伝えください。
産婦人科以外の医療機関で接種する場合は、事前にかかりつけの産婦人科医へ相談しておきましょう。
接種を受けられない場合
次のような場合は、接種を受けられないことがあります。
- 明らかな発熱がある
- 重い急性疾患にかかっている
- ワクチンの成分によって、過去にアナフィラキシーなどの重いアレルギー反応を起こしたことがある
- 医師が接種に適さないと判断した
発熱や体調不良がある場合は、無理に接種せず医師へご相談ください。
心臓、腎臓、肝臓、血液、免疫機能などに病気がある方、出血しやすい方、過去の予防接種で体調を崩したことがある方も、接種前に医師へ伝えましょう。
ほかのワクチンとの同時接種
妊娠中には、インフルエンザワクチンや新型コロナワクチンなど、ほかのワクチンを接種することがあります。
同時接種や接種間隔については、ワクチンの種類、妊娠週数、妊娠経過、体調、出産予定日などを確認して判断します。
ほかのワクチンを接種した、または接種する予定がある場合は、事前に医師へお伝えください。
アブリスボの副反応
接種後には、次のような副反応がみられることがあります。
- 注射した部分の痛み
- 注射した部分の赤みや腫れ
- 頭痛
- 筋肉痛
- だるさ
- 吐き気
多くは軽度から中等度で、数日以内に改善します。
接種当日は激しい運動を避け、体調の変化に注意して過ごしましょう。入浴は通常可能ですが、注射した部分を強くこすらないようにしてください。
まれですが注意が必要な症状
非常にまれですが、ショックやアナフィラキシーなどの重いアレルギー反応が起こる可能性があります。
接種後に次のような症状がみられた場合は、速やかに医療機関を受診してください。
- 息苦しい
- 顔やのどが腫れる
- 全身にじんましんが出る
- 声が出しにくい
- 顔色が悪い
- 意識がぼんやりする
- ぐったりする
また、接種後に出血、強い腹痛、規則的なお腹の張り、破水を疑う症状、胎動の減少などがみられた場合は、ワクチンとの関係を自己判断せず、かかりつけの産婦人科へご連絡ください。
アブリスボについてのよくある質問
赤ちゃんにワクチンを接種するのですか?
いいえ。アブリスボは妊婦さんに接種するワクチンです。
お母さんの体内で作られた抗体が胎盤を通して赤ちゃんへ移行し、出生後早期の赤ちゃんを守ります。
接種すればRSウイルスに感染しませんか?
接種しても、RSウイルス感染症を完全に防げるわけではありません。
RSウイルスによる下気道感染症や重症化を予防する効果が期待されています。接種後も、手洗いや手指衛生、体調不良の方との濃厚な接触を避けるなどの感染対策が大切です。
接種は毎回の妊娠で必要ですか?
定期接種では、対象となる妊娠ごとに1回接種します。
過去の妊娠時に接種していても、今回の妊娠で定期接種の対象となります。接種時期については医師へご相談ください。
RSウイルス感染症に特効薬はありますか?
RSウイルス感染症の治療は、症状や重症度に応じた対症療法が中心です。
水分補給、酸素投与、点滴、呼吸を助ける治療などが行われます。そのため、出生後早期の重症化を予防することが重要です。
アブリスボとベイフォータスの違いは?
アブリスボは妊婦さんに接種し、お母さんが作った抗体を胎盤を通して赤ちゃんへ届けるワクチンです。
ベイフォータスは、ニルセビマブというRSウイルスに対する抗体を、出生後の赤ちゃんへ直接投与する抗体製剤です。ワクチンではありません。
赤ちゃんの出生時期、健康状態、母体の接種歴などによって、適切な予防方法が異なる場合があります。出生後の予防については、産婦人科医や小児科医へご相談ください。
まとめ
アブリスボは、妊婦さんが接種することで、生まれてくる赤ちゃんをRSウイルスによる下気道感染症から守る母子免疫ワクチンです。
お母さんの体内で作られた抗体が胎盤を通して赤ちゃんへ移行し、RSウイルス感染症が重症化しやすい出生後早期を守ります。
感染を完全に防ぐものではありませんが、細気管支炎や肺炎などの下気道感染症や重症化を予防する効果が期待されています。
2026年度から、妊娠28週0日から36週6日までの妊婦さんを対象とした定期接種となりました。
接種時期、副反応、ほかのワクチンとの接種間隔などに不安がある場合は、かかりつけの産婦人科や接種医療機関へご相談ください。
横浜市西区・中区・神奈川区でアブリスボ接種をご希望の方へ
みなとみらい小児科クリニックでは、妊婦さんを対象としたアブリスボの予防接種を行っています。
接種前には医師が問診を行い、母子健康手帳で妊娠週数や接種歴を確認したうえで、安全に配慮して接種します。
接種時期や副反応、赤ちゃんへの効果、ベイフォータスとの違いなどの疑問にも、分かりやすくご説明します。
産婦人科以外での接種をご希望の場合は、事前にかかりつけの産婦人科医へご相談ください。ご予約時には妊娠週数と出産予定日をお知らせいただき、接種当日は母子健康手帳をお持ちください。
当院では、出生後のお子さんの定期予防接種、乳幼児健診、育児相談、小児科一般診療にも対応しています。
横浜市西区・中区・神奈川区、みなとみらい周辺でアブリスボ接種をご検討の方は、みなとみらい小児科クリニックへご相談ください。
参考資料
日本小児科学会「RSウイルス母子免疫ワクチンに関する考え方」
厚生労働省「RSウイルスワクチン」
厚生労働省「RSウイルス感染症」
医薬品医療機器総合機構(PMDA)「アブリスボ筋注用 電子添文」
日本小児科学会「妊婦を対象としたRSウイルス母子免疫ワクチンの定期接種化に関する情報」
お子さんの体調が心配なときは、いつでもご相談ください。
みなとみらい小児科クリニック


































