子どもが急に吐いたり下痢をしたりして胃腸炎と言われると、「どんな治療をすればいいのか」「特効薬はないのか」と気になるでしょう。病院に行けば何か効く薬をもらえるはず、と思って受診したのに、思ったような薬が出ずに戸惑った経験を持つ保護者もいるのではないでしょうか。
子どもの胃腸炎の多くはウイルスが原因で、それを直接やっつける特効薬は今のところ一般的ではありません。だからこそ、治療の主役は家庭でのケア、とくに脱水を防ぐことにあります。横浜・みなとみらいで小児医療に携わる立場から、胃腸炎の治療で家庭が担う役割と、回復までの過ごし方をお伝えします。
胃腸炎の治療は「脱水を防ぐこと」が中心になる

まず知っておきたいのは、子どもの胃腸炎の治療の考え方です。原因の多くはウイルスで、ウイルスを直接退治する薬はないため、治療は症状を和らげながら体が自分で治るのを支える形になります。その中心にあるのが、脱水を防ぐことです。
嘔吐や下痢が続くと、体から水分と塩分が同時に失われます。子どもは大人より体内の水分の割合が高く、短時間で脱水が進みやすいため、ここをどう乗り切るかが回復の鍵を握ります。国内外のガイドラインでも、軽度から中等度の脱水に対しては、経口補水療法が治療の中心と位置づけられています。経口補水療法とは、水分と塩分、糖分をバランスよく含んだ経口補水液を口から少しずつ与えて、失われた水分を補っていく方法のことです。
つまり、病院での特別な処置よりも、家庭での水分補給こそが治療の要になる、というわけです。この点が、風邪などとは少し違う胃腸炎ならではの特徴といえます。
水分は「少量を、こまめに」が回復への近道
脱水を防ぐといっても、一度にたくさん飲ませればよいわけではありません。むしろ逆で、少量をこまめに与えることが大切です。
吐き気が強いときは、まずスプーン1杯ほどの少量から始め、5分から10分おきに与えていきます。一度に多く飲ませると胃が刺激されて再び吐いてしまうため、焦らず少しずつ進めるのがコツです。吐かずに飲めることを確認しながら、少しずつ量を増やしていきます。もし途中で吐いてしまっても、また少し休んでから少量に戻してやり直せば問題ありません。
子どもが欲しがっても、ボトルやコップごと渡さないでください。渡すと一気に飲んでしまい、また吐く原因になります。手間はかかりますが、大人がスプーンやスポイトで与えるほうが結果的にうまくいくでしょう。飲み物は、経口補水液が最も適しています。水やお茶では塩分と糖分が補えず、スポーツドリンクは糖分が多く塩分が足りないため、嘔吐や下痢のときには経口補水液のほうが向いています。冷たいものや柑橘系のジュース、乳製品は胃腸を刺激するため、このときは避けるのが無難です。
下痢止めがかえって回復を遅らせることがある

胃腸炎の治療で、保護者がとくに誤解しやすいのが下痢への対応です。下痢が続くとつらそうで、早く止めてあげたくなりますが、実は下痢止めを安易に使わないほうがよい、という考え方があります。
なぜでしょうか。下痢は、体に入ったウイルスや細菌を外へ追い出そうとする、体の防御反応でもあるからです。ここで無理に下痢を止めてしまうと、病原体が腸の中にとどまってしまい、かえって回復が遅れることがあります。実際、下痢止めを使っても治る期間は変わらないという報告が多く、強い下痢止めはむしろ使わないほうがよいとされています。
一方で、腸内の環境を整える整腸剤は、無理に下痢を止める薬ではないため、比較的安心して使えることが多いものです。同じ「お腹の薬」でも役割がまったく違うため、市販薬を自己判断で選ぶより、医師に相談して子どもの状態に合ったものを使うのが安心です。抗生物質についても、原因の多くを占めるウイルス性胃腸炎には効きません。細菌性が疑われる特定の場合にのみ必要になるもので、やみくもに使うものではないという点も知っておくと役立ちます。
食事は無理せず、回復に合わせて戻していく
水分がとれるようになってきたら、次は食事です。ここでも焦りは禁物で、体の回復のペースに合わせて少しずつ戻していきます。
吐き気が強いうちは、無理に食べさせる必要はありません。食欲が出てきたら、消化のよいものから少量ずつ始めます。おかゆやよく煮たうどん、すりおろしたリンゴ、野菜スープなどが向いているでしょう。一度にたくさんではなく、一日を5回から6回に分けて少しずつ与えると、胃腸への負担が少なくて済みます。脂肪の多いものや甘いお菓子、繊維の多い野菜、刺激の強い食品は下痢を長引かせやすいため、回復するまでは控えるのが無難です。
赤ちゃんの場合は、母乳やミルクを続けて構いません。母乳は一度に多く飲みがちなので、少量ずつ与えるよう調整するとよいでしょう。「食べたい」と自分から言えるようになれば、体が回復してきたサインです。あまり神経質にならず、子どもの様子を見ながら進めてください。
点滴や受診が必要になるのはどんなときか

家庭でのケアが中心とはいえ、医療機関の力が必要な場面もあります。その見極めを知っておくと、迷ったときに落ち着いて動けます。
まず知っておきたいのは、点滴についてです。点滴は水分と糖分を補って脱水や低血糖を改善するための処置で、点滴をしても胃腸炎そのものが早く治るわけではありません。水分が口から飲めているなら、必ずしも点滴は必要ないということです。逆に、水分がまったくとれず脱水が進んでいるときには、点滴が助けになります。
受診を考えたい目安としては、水分をまったく受け付けない、半日以上おしっこが出ない、唇や口の中が乾いている、涙が出ない、ぐったりして元気がないといった脱水のサインが挙げられます。また、便に血が混じる、激しい腹痛がある、高い熱が続く、意識がぼんやりしているといった様子は、別の病気が隠れている可能性もあるため、ためらわずに受診してください。発熱を伴う場合の病院の選び方は、熱の原因が気になるときは、関連記事もあわせて参考にしてください。
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みなとみらい小児科クリニックにご相談ください
横浜市西区みなとみらいに位置するみなとみらい小児科クリニックは、新高島駅から徒歩8分、みなとみらい駅から徒歩10分の場所にあります。小児科一般の診療に加え、感染症の迅速診断や乳幼児健診、各種予防接種など、お子さんの急な体調の変化に幅広く対応しています。
胃腸炎は多くの場合、家庭でのケアで数日から一週間ほどで落ち着いていきますが、脱水が進んだり、思ったように水分がとれなかったりすると、判断に迷う場面も出てきます。「水分がとれずぐったりしている」「下痢がなかなか治まらない」「家でのケアで合っているか不安」と感じたときは、まずはお気軽にご相談ください。お子さんの状態を確認し、家庭でのケアで様子を見て十分か、点滴などの処置が必要かを判断してご案内します。
夜中に突然の嘔吐や下痢で不安になったり、繰り返す症状にどう対応すればいいか分からなくなったりすることは、子育てのなかで誰もが経験するものです。一人で抱え込まず、気軽に相談できる場所があることが、保護者にとっての安心につながります。お子さんの体調と、ご家族の毎日が少しでも楽になるよう、長くお付き合いできる関係づくりを大切にしています。


































