赤ちゃんがいつも同じ方向ばかり向いて寝ていると、「このままで頭の形が偏ってしまわないか」「どうやって直したらいいのか」と気になる保護者は多いものです。インターネットで調べると、月齢ごとの方法がずらりと並んでいたり、整体や施術を勧める記事が出てきたりして、結局どれを信じて何から始めればよいのか分からなくなってしまうのではないでしょうか。
先にお伝えすると、向き癖そのものはとてもよくある状態で、多くは成長とともに自然に和らいでいきます。ただ、家庭でのケアには効きやすい時期があり、ごくまれに病気が隠れていることもあります。横浜・みなとみらいで小児医療に携わる立場から、向き癖を治すために本当に押さえておきたい順序と、見落としてはいけないサインをお伝えします。
向き癖はなぜ起こり、いつ治るのか

まず、向き癖がどういう状態なのかを整理します。向き癖とは、赤ちゃんが横になったときに、いつも同じ方向へ頭を向けてしまう状態のことです。左右どちらかに向きが固定されると、その面の後頭部に体重がかかり続け、頭の形が少しずつ偏っていきます。
原因の多くは、病気ではなく環境的なものです。お腹の中にいるときの姿勢や、いつも同じ向きで抱っこ・授乳をしている、ベビーベッドの位置が固定されていて音や光が同じ方向から来る、といった日常の習慣が影響します。日本では右利きの保護者が多く、左腕で抱えることが多いため、赤ちゃんが右を向きやすい傾向があるとも言われています。
多くの場合、生後3か月を過ぎると赤ちゃん自身がよく動くようになり、向き癖は自然に和らいでいきます。首がすわる生後3〜4か月ごろから減り始め、寝返りやおすわりが始まるとさらに目立たなくなります。ただし、頭の形の偏りが強くなってしまっている場合は、癖も固定されやすく、自然には改善しにくくなることがあります。
治し方の土台は「圧を一点に集中させない」こと

向き癖を治す方法はいくつもありますが、ばらばらの小技として覚えるより、ひとつの原則で捉えると分かりやすくなります。それは、頭の同じ場所に圧力がかかり続けるのを防ぐ、ということです。ここを軸にすると、何をすればよいかが自然に見えてきます。
体位変換で向きをこまめに変える
最も基本となるのが体位変換です。寝かせる向き、抱っこ、授乳の向きを、左右まんべんなく入れ替えます。たとえば寝るときに顔が右を向いていたら、次は左を向くように寝かせ方を調整してみましょう。授乳のときも、抱える腕を毎回同じにせず左右を交互にすると、自然と顔の向きが偏りにくくなります。仰向けで同じ向きが続くと一点に圧力が集まりますが、向きを変えるだけで圧が分散され、偏りの予防につながります。
向き癖と反対側から興味を引く
赤ちゃんは、音や光、動くものがある方を自然と向きます。この性質を利用して、向き癖とは反対側から声をかけたり、おもちゃを見せたり、窓の光が反対側から入るようにベッドの向きを変えたりします。無理に頭を押さえて向きを変えるのではなく、赤ちゃんが自分から反対を向きたくなる環境をつくるのが、続けやすく効果も出やすいやり方です。
タミータイムで自分から向きを変える力を育てる
もうひとつ取り入れたいのが、タミータイムと呼ばれるうつぶせ遊びです。起きている間に、保護者が見守るなかで赤ちゃんをうつぶせにすると、赤ちゃんは自然と頭を持ち上げようとし、首や背中の筋肉が育ちます。この筋力がつくと、赤ちゃんは自分で頭の向きを変えやすくなり、向き癖そのものが和らいでいきます。後頭部にかかる圧力を減らせる点でも有効です。月齢別の目安として、0〜3か月は合計10分程度を数分ずつ複数回、3〜6か月は1日数分を2〜3回から始めるとよいとされています。
ここで絶対に守ってほしい注意があります。タミータイムはあくまで起きていて目を離さないときだけのものです。睡眠中のうつぶせ寝は乳幼児突然死症候群のリスクがあるため、寝かせるときは必ず仰向けにしてください。向き癖を気にして寝る姿勢を変えるのは本末転倒です。タオルで向きを補助する場合も、顔を覆わないようにし、寝入ったら必ず外してください。
月齢で変わる、効く対処の優先順位

同じ向き癖でも、月齢によって効きやすい対処は変わります。やみくもに全部試すより、いまの時期に何が効くかを意識すると、力の入れどころが分かります。
生後2か月ごろまでの頭がやわらかい時期は、体位変換や寝かせ方の工夫が比較的効きやすい時期です。赤ちゃんがまだ自分であまり動かないぶん、保護者の調整が反映されやすいといえます。一方で、生後3〜4か月で首がすわると、赤ちゃんが自分で動くようになるため、寝かせ方の調整だけでは思うようにいかなくなります。この時期からはタミータイムで「自分で向きを変える力」を育てることに比重を移すと、無理がありません。生後5〜6か月以降は寝返りやおすわりが進み、頭にかかる圧力が一点に集中しなくなるため、向き癖は自然と目立たなくなっていくことが多くなります。
大切なのは、焦って無理強いしないことです。赤ちゃんが泣いて強く嫌がるなら、その方法が合っていないサインかもしれません。すぐに中止して別のやり方に切り替えてください。
見落としてはいけない「筋性斜頸」との違い

ここが、この記事で最もお伝えしたい大切なポイントです。向き癖の多くは環境的なものですが、中には首の筋肉に原因がある「筋性斜頸」が隠れていることがあります。この二つは見た目が似ているのに、対応がまったく異なります。
筋性斜頸は、首の筋肉が生まれつき収縮して、頭が特定の方向に傾いてしまう状態です。ふつうの向き癖との違いを見分ける手がかりがいくつかあります。筋性斜頸では、寝ていないときも同じ向きに首が傾いていたり、片側の首筋にしこりのようなものが触れたりします。ふつうの向き癖が「向きやすい方がある」程度なのに対し、筋性斜頸は「いつも同じ方向にしか向けない、反対を向かせようとしても戻ってしまう」という強さがあります。
こうした筋性斜頸が疑われる場合は、家庭でのケアを続けるより、小児整形外科などでの評価が優先されます。原因に応じた対応が必要だからです。向き癖を「ただの癖」と思い込んで自己流のケアを続けるうちに、本当は早く相談すべき状態を見逃してしまう、というのが避けたい事態です。
こんなサインがあれば早めに相談を
家庭でのケアを続けてよいのか、相談したほうがよいのか。その判断の目安となるサインを知っておくと安心です。
たとえば、おもちゃで誘っても反対側を向けない、あるいは強く嫌がるという様子があります。頭の形に明らかな左右差や凹みが見られることもあります。真上から見て左右の耳の位置が前後にずれている場合や、体がいつも「くの字」に曲がっている場合も気をつけたいサインです。首にしこりのようなものが触れる、首のすわりが遅いといった様子も見逃せません。こうした様子が見られるときは、一度専門家に診てもらうことをおすすめします。
また、家庭でのケアを続けても生後4か月を過ぎて頭の形の偏りがはっきり残っている場合は、自然な改善が難しくなることがあり、ヘルメット治療という選択肢を検討する段階になることもあります。ヘルメット治療を受けるべきか迷ったときの考え方や、向き癖を放置した場合のリスクについては、別記事もあわせて参考にしてください。
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横浜市西区みなとみらいに位置するみなとみらい小児科クリニックは、新高島駅から徒歩8分、みなとみらい駅から徒歩10分の場所にあります。小児科一般の診療に加え、乳幼児健診や各種予防接種、お子さんの成長・発達に関するご相談に幅広く対応しています。
赤ちゃんの向き癖が気になる場合も、まずはお気軽にご相談ください。向き癖が環境的なものか、それとも筋性斜頸など別の原因が隠れていないかを含めて状態を確認し、家庭でのケアで様子を見て十分かどうか、あるいは頭のかたち外来を持つ専門医療機関への紹介が望ましいかを、お子さんの月齢や状況に合わせてご案内します。どの対処から始めればよいか、いつまで様子を見てよいか、一人で抱え込んで判断する必要はありません。
「いつも同じ方向ばかり向く」「頭の形が左右で違う気がする」「家でのケアが合っているか不安」といったご相談を歓迎しています。気になったときに早めに評価を受けておくことで、安心して赤ちゃんの成長を見守れるようになるはずです。お子さんの成長に寄り添いながら、長くお付き合いできる関係づくりを大切にしています。


































