腸重積と聞いて、多くの保護者の方が思い浮かべるのはイチゴゼリー状の血便ではないでしょうか。特徴的なサインとしてよく紹介されるため、血便が出たかどうかで判断しようとしてしまいます。
けれども、血便は腸重積の入り口に現れる症状ではありません。腹痛から始まり、嘔吐が続き、進行してから血便が出るという順序をたどります。血便を待って動くと、その分だけ時間を使ってしまうでしょう。ここでは症状が出る順番に沿って、家庭で気づける手がかりと、受診を決める目安をお伝えします。
腸重積の症状は血便が出る前から始まっている

腸重積の症状は、腹痛から始まって嘔吐が続き、進行してから血便が現れます。日本小児外科学会の解説では、もともと元気だった子が急に腹痛を訴える、あるいはお腹が痛いと言えない年齢では機嫌が悪くなるところから始まり、嘔吐がよくみられる症状として続き、さらに症状が進むと顔色が悪くなったり血の混ざったねっとりした便が出たりすると説明されています。
腸重積は、口側の腸管が肛門側の腸管に入り込んで腸が閉塞する病気です。入り込んだ部分は血のめぐりが悪くなっていくため、時間が経つほど腸へのダメージが積み重なります。血便は、その血のめぐりの悪化が進んだ結果として出てくるサインだと考えてください。
つまり、3つの症状がそろうのを待つという見方はよくありません。そろった状態は、すでに時間が経過した状態を意味します。順番の前半で気づけるかどうかが、その後の負担を左右するでしょう。
最初に出るのは間欠的な不機嫌

最初のサインは、痛みが出たり消えたりを繰り返す不機嫌です。同学会の解説でも、腹痛や不機嫌があったりなかったりする間欠的な出方が特徴として挙げられています。
具体的には、急に激しく泣き始めて数分続き、その後けろりと落ち着いて遊び出し、しばらくするとまた激しく泣くという波を繰り返します。落ち着いている時間があるため、治ったと受け取ってしまいやすい点が、この病気の分かりにくさでしょう。
泣いているときの様子にも手がかりがあります。膝をお腹に引き寄せて体を丸める、抱っこしても反り返って落ち着かない、痛みの強い間だけ顔色が青白くなるといった変化は、お腹の痛みを示すサインだといえるでしょう。反対に、落ち着いている時間帯だけを見て判断すると、状態を軽く見積もってしまいます。
見ていただきたいのは、泣きやんだかどうかではなく、波が繰り返されているかどうかです。時刻と泣いていた時間をメモしておくと、受診したときに経過を正確に伝えられるでしょう。
次に出る嘔吐は胃腸炎と見分けがつきにくい

腹痛の次に現れる嘔吐は、胃腸炎の嘔吐と区別がつきません。ここが腸重積の見逃されやすいところです。
同学会の解説によれば、腸重積のきっかけには、風邪などのウイルス感染で腸のリンパ組織が腫れることが関わっており、約3割のお子さんに感冒症状を認めるとされています。つまり、鼻水や咳が先にあって、その流れで嘔吐が始まるという経過は、腸重積でも普通に起こります。胃腸炎が流行している時期ほど、腸重積が胃腸炎の中に紛れ込みやすくなるでしょう。
区別の手がかりになるのは、嘔吐そのものではなく、嘔吐と一緒に何が起きているかです。胃腸炎では吐き気が続いてぐったりし、やがて下痢が出てきます。腸重積では、痛みの波に合わせて吐き、痛みが引いている間は比較的落ち着いて見えます。下痢が出ないまま嘔吐だけが繰り返される場合も、腸重積を頭に入れておいてください。
血便が出た時点ではすでに進んでいる
イチゴゼリー状の血便は、腸重積が進行したことを示すサインです。同学会の解説でも、症状が進むと顔色が悪くなったり、血の混ざったねっとりした便を認めるようになると説明されています。
粘液と血液が混じった、ねっとりとしたゼリーのような便が特徴になります。おむつを開いて赤黒いものが混じっていれば分かりやすいのですが、量が少なく便に線のように混じるだけのこともあり、家庭では気づかれないまま経過してしまう場合もあるでしょう。
ここで押さえていただきたいのは、血便が出ていないことは安心材料にならないという点です。腹痛の波と嘔吐がそろっている段階で、血便を確認できていなくても受診する理由としては十分になります。医療機関では診察や検査で腸重積を確かめられますので、家庭で血便を探し続ける必要はありません。
症状の出方は月齢によって変わる
腸重積は乳幼児に多く、年齢によって現れ方が変わります。同学会の解説では、3か月から2歳未満のお子さんによくみられる病気とされています。
言葉で痛みを伝えられない月齢では、腹痛はすべて不機嫌という形をとるでしょう。授乳やミルクの途中で泣き出す、抱き方を変えても泣きやまない、いつもの泣き声と違うといった変化が、唯一の手がかりになることもあるでしょう。反対に、2歳を過ぎて言葉が出るお子さんであれば、お腹が痛いと訴えたうえで、痛みが引いている間は普通に話せる状態が繰り返されます。
どちらの年齢でも共通しているのは、痛みに波があることです。年齢が上がるほど症状を言葉で確かめられますが、その分だけ、痛みが引いている時間に受診を見送ってしまう危険もあります。訴えがなくなった時間帯を、回復と結びつけないでください。
時間が結果を左右する病気
腸重積は、発症から治療までの時間が方法と負担を変えます。同学会の解説によれば、発症したと思われる時間から24時間以内であれば8割は、造影剤や空気を肛門から注入して圧を加える方法で元の状態に戻せるとされています。一方で2割前後のお子さんは、圧をかけても戻らなかったり腸管が傷ついたりするため、手術による整復を選ぶことになるでしょう。血のめぐりが止まった状態が長く続けば、腸を切り取らなければならないこともあります。
整復できた後も、約10%に再発があり、整復した直後に起こることが多いとされています。しばらく経ってから再び起こる場合もあるため、症状の出方を覚えておいていただけると、次に同じことが起きたときの判断が早くなるでしょう。
夜間や休日で判断に迷うときは、こども医療でんわ相談(#8000)に電話すると、小児科医師や看護師から家庭での対応や受診の必要性について助言を受けられます。厚生労働省が実施している事業です。
よくある質問(FAQ)
血便が出ていなければ腸重積ではない?
血便がなくても腸重積は否定できません。血便は進行してから現れる症状で、初期には出ないことのほうが多いといえます。痛みの波と嘔吐がそろっていれば、血便を確認できていなくても受診してください。
泣きやんで機嫌が戻ったら様子を見てよい?
機嫌が戻った時間があること自体が、腸重積の特徴です。痛みが引いている間は普段どおりに見えるため、落ち着いたことを回復と受け取らないでください。波が繰り返されているかどうかで判断しましょう。
何歳ごろに多い病気?
日本小児外科学会の解説では、3か月から2歳未満のお子さんによくみられるとされています。この時期は痛みを言葉で伝えられないため、不機嫌の出方が手がかりになります。
腸重積はどうやって診断する?
お腹を触ってソーセージのようなかたまりを確かめる方法のほか、超音波検査やレントゲン検査で診断します。当院で腸重積が疑われた場合は、これらの検査ができる連携先の病院へご紹介する流れになります。
治療した後にまた起こることはある?
整復後の再発は約10%にみられ、整復した直後に起こることが多いとされています。しばらく経ってから再び起こる場合もありますので、最初に症状が出たときの様子を覚えておいていただけると助かります。
腹痛と嘔吐が心配なときはみなとみらい小児科クリニックへ
腸重積を家庭で確定させる必要はありません。痛みの波と嘔吐という2点がそろっていれば、受診する理由になります。
みなとみらい小児科クリニックでは、お子さんの様子とご家庭での経過を丁寧に伺い、診察と院内の血液検査を組み合わせて状態を確かめています。腸重積が疑われる場合や、整復や入院が必要と判断した場合は、けいゆう病院をはじめとする連携先の病院へ速やかにご紹介する体制です。感染症の症状があるお子さんのために感染隔離室を備えており、待合室を分けた診察も可能です。
また、朝7時から診療する「おはよう外来」を実施しています。夜のうちから様子が気になっていたお子さんを、登園前の時間帯に診ておきたいというご希望にも対応できる体制です。泣き方がいつもと違う、様子がおかしいという段階でのご相談も歓迎しておりますので、迷った時点でお声がけください。


































