生後1か月ごろの赤ちゃんを真上から見たとき、頭が少し斜めにゆがんでいることに気づいて心配になる保護者の方は多くいらっしゃいます。斜頭症という言葉を調べると、治療やヘルメットの話が先に出てきて、かえって不安が強まることもあるでしょう。
けれども、頭のゆがみの多くは日々の姿勢の積み重ねから生まれます。裏を返せば、姿勢の偏りを減らす工夫を早い時期から始めることで、防げる部分が確かに存在するということです。予防が効きやすい時期、家庭でできる具体的な工夫、そして避けたほうがよい方法まで整理してお伝えしましょう。
斜頭症は生活の工夫でどこまで防げるのか
赤ちゃんの頭のゆがみは、頭蓋骨のつなぎ目が早く閉じてしまう病気によるものと、寝ている姿勢の偏りによって外から圧がかかって起こるものに分かれます。多くを占めるのは後者で、位置的頭蓋変形と呼ばれます。報告によって幅はありますが、乳児のおよそ1割から2割に何らかのゆがみが見られるとされ、決して例外的な状態ではないでしょう。
このタイプが目立つようになった背景には、うつぶせ寝を避けて仰向けで寝かせる考え方が広まったことがあります。仰向けの睡眠は乳幼児突然死症候群を減らすうえで大きな役割を果たしてきました。その一方で、後頭部に圧が集中しやすくなったという側面も生まれたわけです。安全のための姿勢である以上、仰向け寝そのものを見直すという方向では考えないでください。
外からの圧が原因である以上、圧のかかり方を変えれば形も変わってきます。ここが予防を考えるうえでの出発点になるでしょう。ただし、生まれつきの首の傾きが背景にある場合や、すでに強いゆがみがある場合は、生活の工夫だけでは追いつきません。予防できる範囲と、相談が必要な範囲を分けて考えておきましょう。
予防が効きやすい時期には限りがある

生後0か月から4か月ごろが中心
赤ちゃんの頭蓋骨はやわらかく、脳の急速な成長に合わせて大きくなっていきます。頭囲は1年間でおよそ12センチほど増えますが、その伸びが最も急なのは生まれてからの数か月でしょう。やわらかいということは、外からの圧で形が変わりやすいと同時に、圧の方向を変えれば整いやすいことも意味します。この性質が最も強いのが生後4か月ごろまでで、予防の工夫が最も届く時期にあたるでしょう。
首がすわる前は自分で頭の向きを変えられないため、同じ側にばかり顔が向いてしまいます。だからこそ、周囲の大人が向きを調整してあげる意味が大きくなるでしょう。
6か月を過ぎると変化はゆっくりになる
寝返りやお座りができるようになると、赤ちゃん自身が姿勢を変えるようになり、後頭部の一点に圧がかかり続ける状況は自然と減っていきます。同時に頭蓋骨も硬さを増していくため、形そのものの変化はゆるやかになるでしょう。
つまり、生後6か月を境に、生活の工夫で得られる効果は小さくなっていきます。気になり始めた時点で早めに動くことが、そのまま予防の質につながると考えてください。
予防の考え方は同じ場所に圧がかかる時間を減らすこと

寝かせるときの向きを毎回変える
眠るときに顔が向く方向は、多くの赤ちゃんで一定になりがちです。寝かせる位置そのものを入れ替える、頭の左右を置き換えて寝かせる、寝ている間に向きが変わっていたら軽く整えるといった対応を重ねましょう。部屋の明るい側や、家族の声が聞こえる側へ顔を向けやすい性質を利用して、ベビーベッドの向きを入れ替える方法も有効です。
授乳や抱っこの向きを左右で交代する
授乳のとき、赤ちゃんの顔は自然と同じ方向を向きます。母乳であれば左右を交互に、ミルクであれば抱く腕を意識して入れ替えると、起きている時間の姿勢の偏りも減らせるでしょう。抱っこひもを使う場合も、向きや高さを毎回まったく同じにしないという意識があるだけで違ってきます。
日中の姿勢が変われば、眠るときに向きやすい方向も少しずつ変わっていくでしょう。夜だけを調整しようとするより、1日全体で偏りをならすほうが無理なく続けられるはずです。
ベビーカーやチャイルドシートの時間も合算して考える
見落とされがちなのが、寝具以外で後頭部が支えられている時間でしょう。ベビーカー、チャイルドシート、バウンサー、ハイローチェアなど、背中と頭が同じ角度で固定される時間は、寝ている時間と同じように圧がかかり続けます。
1日の合計で考えると、思っていたより長時間になっているご家庭は少なくないでしょう。移動や家事で必要な時間まで削る必要はありませんが、長時間続けて同じ器具に乗せたままにしない、という意識を持つだけでも変わってくるはずです。
抱っこの時間が最も自然な予防になる
抱っこをしている間、後頭部はどこにも接していません。特別な器具を用意しなくても、抱っこの時間を少し増やすだけで、圧のかからない時間は確実に伸びていくでしょう。縦抱きと横抱きを混ぜる、抱く腕を左右で交代するといった工夫も加えると、姿勢の偏りがさらに減らせるでしょう。
タミータイムを取り入れる
タミータイムとは、赤ちゃんが起きているあいだに、大人が見守りながらうつぶせの姿勢で過ごす時間のことです。後頭部への圧を完全になくせるうえ、首や背中の筋力を育てる効果も期待できるでしょう。首すわりや寝返りといった発達を後押しする意味でも、早い時期から取り入れる価値があります。
始め方は、1回あたり数分の短い時間から、1日に数回に分けて行うのが基本です。慣れてきたら合計で15分から30分ほどを目安に増やしていきましょう。嫌がって泣いてしまう場合は、大人が仰向けに寝て胸の上にうつぶせで乗せる形から始めると受け入れやすくなります。授乳直後は避け、必ず目を離さないでください。
仰向けで寝かせることはやめない
ここが最も大切な点です。頭の形を心配するあまり、うつぶせや横向きで寝かせることは絶対に避けてください。眠っているあいだの姿勢としては仰向けが最も安全とされており、厚生労働省も乳幼児突然死症候群を防ぐ観点から仰向けでの睡眠を呼びかけています。

予防として調整するのは、「寝る姿勢」ではなく「顔が向く方向」だと考えてください。仰向けのまま顔の向きだけを日ごとに入れ替えていく、という区別さえ押さえておけば、安全と予防は両立できます。タミータイムはあくまで起きているあいだの活動として、睡眠とは切り分けて考えましょう。
効果がはっきりしない方法と避けたい方法
頭の形を整えるとうたう枕については、効果を裏づける十分な根拠が示されているとは言えません。やわらかい寝具や高さのある枕は、赤ちゃんの顔が沈み込むことで窒息につながる危険もあり、睡眠中の使用は勧められないでしょう。

タオルや丸めた布で体を固定して向きを保つ方法も、寝返りを始めた時期に思わぬ姿勢になる危険があるため避けてください。また、頭をマッサージして形を整えるという方法を見かけることがありますが、頭蓋骨そのものを手で動かすことはできません。効果の確認されていない方法に時間を使うより、圧のかかり方を変える工夫のほうが確実でしょう。
なお、ヘルメットは予防のための道具ではありません。すでに生じているゆがみを、頭が伸びる方向へ誘導しながら整えていく治療であり、適応や開始時期は診察のうえで判断していく必要があるでしょう。
予防だけでは追いつかないサイン
変化の確かめ方
月に1回、真上から頭の写真を撮っておくと、変化を客観的に追えます。左右の耳の位置がずれていないか、額の出方に差がないかを、同じ角度で比べてみてください。撮るときは真上から、頭のてっぺんと両方の耳が同じ画面に入るようにすると比べやすくなります。同じ場所、同じ明るさで残しておくと、月ごとの違いがいっそう分かりやすくなるでしょう。感覚だけで判断すると、少しずつ進む変化に気づきにくくなります。
相談したほうがよい場合
いつも同じ側ばかりを向き、反対側へ顔を向けようとすると強く嫌がる場合は、生まれつきの首の傾きが隠れていることがあります。この場合は向きを変える工夫だけでは改善せず、首そのものへの対応が必要になるでしょう。
耳の位置のずれが目立つ、額や頬の左右差が出てきた、生後4か月を過ぎてもゆがみが強くなっているといった状況では、早めにご相談ください。ヘルメットによる治療を検討する場合、開始時期は生後3か月から6か月ごろが中心とされ、判断できる期間が限られています。頭の形の治療については、自治医科大学とちぎ子ども医療センターでも情報が公開されていますので、参考になさってください。
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頭の形が気になるときはみなとみらい小児科クリニックへ
頭のゆがみには、おなかの中での姿勢、多胎、骨盤位、初めてのお産といった、生まれる前からの要因が関わることも知られています。寝かせ方が足りなかったからだと、ご自身を責める必要はありません。
見慣れている家族ほど変化に気づきにくく、写真を見返して初めて気になり始めることもあるでしょう。一方で、多くは経過を見ながら整っていくものであり、過度に心配しすぎる必要もありません。難しいのは、その線引きでしょう。
みなとみらい小児科クリニックでは、頭の形や向き癖について、ご家庭での様子を伺いながら、いま必要な対応をお伝えしています。月齢の早い段階でのご相談ほど、選べる手立ては多くなるでしょう。健診のついででも構いませんので、気になった時点でお声がけください。


































