離乳食を進めているときや、初めて口にする食材があった日、口の周りが赤くなったりじんましんが出たりすると、食物アレルギーではないかと不安になるものです。ところが、食べたあとに現れた変化のすべてがアレルギーによるものとは限らないでしょう。
食物アレルギーの症状には、出やすい場所と、食べてから出るまでの時間に、はっきりした特徴があります。この2つの軸で整理すると、アレルギーらしい反応なのか、それとも別の理由による変化なのかを落ち着いて考えられるようになるでしょう。年齢による違いや、間違えやすい症状まで含めてお伝えします。
食物アレルギーの症状は食べてから2時間以内に出る
最も多い即時型と呼ばれるタイプでは、原因となる食べものを口にしてから2時間以内、実際には30分以内に症状が現れることが大半です。この時間の短さこそが、食物アレルギーを見分ける最初の手がかりになるでしょう。食べてから半日後や翌日になって出た湿疹は、少なくとも即時型の反応としては説明がつかないでしょう。

なぜここまで早いのかというと、体の中ですでに準備が整っているからです。原因となる食べものに反応するIgE抗体が、あらかじめ皮膚や粘膜の細胞にくっついており、そこへ食べものの成分が届いた瞬間にヒスタミンなどの物質が一斉に放出されます。反応が始まるのに時間を要さない仕組みだと考えてください。
食物アレルギーは、乳児のおよそ10人に1人、学童期では100人に1人から3人ほどに見られるとされ、決して珍しい状態ではありません。原因となる食べものや症状の出方は年齢によって変わっていくでしょう。詳しい分類や仕組みは、アレルギーポータルでも公開されています。
症状が治まるまでにかかる時間
軽い症状であれば、多くは数時間のうちに自然と引いていきます。じんましんは数十分から数時間かけて形や場所を変えながら消え、あとを残さないことがほとんどです。ひとつの発疹が丸1日以上同じ場所に居座り続ける場合は、じんましんではなく湿疹や別の皮膚炎を考えたほうが自然です。
注意しておきたいのは、いったん治まったように見えて数時間後に症状がぶり返す二相性と呼ばれる反応でしょう。強い症状が出た日は、落ち着いたあとも半日ほどは目を離さずに過ごしてください。
症状は体のどこに出るのか

皮膚に出る症状
最も多いのが皮膚の症状で、即時型では8割から9割に見られます。かゆみをともなう赤み、盛り上がったじんましん、まぶたや唇の腫れが代表的でしょう。じんましんは形や場所を変えながら広がっては消える点が特徴で、同じ場所にとどまり続ける湿疹とは様子が異なります。
見分けの目安として、指で押すと一時的に白くなり、輪郭がくっきりしていて、境目が周囲の皮膚とはっきり分かれている点が挙げられます。判断に迷ったときは、時刻がわかる形で写真を残しておきましょう。
口やのどに出る症状
口の中がイガイガする、のどがかゆい、飲み込みにくいといった訴えが出ます。言葉で伝えられない年齢では、急に食べるのをやめる、口に手を入れる、突然泣き出すといった行動が手がかりになるでしょう。声がかすれる、犬が吠えるような咳が出るという場合は、のどの奥が腫れ始めているおそれがあります。
おなかに出る症状
腹痛や吐き気、嘔吐、下痢が起こります。食べてすぐに一度だけ吐いたのか、それとも時間をおいて繰り返し吐いているのかによって、考えられる原因は変わってくるでしょう。食べた直後の嘔吐はアレルギー反応として起こることがあり、皮膚症状をともなっていれば可能性はさらに高まります。おなかの症状だけが単独で出る場合は、食べ過ぎや消化不良との区別が難しくなるでしょう。
呼吸や全身に出る症状
繰り返す咳、ゼーゼーという音をともなう息苦しさ、顔色の悪さ、ぐったりして反応が鈍い状態などが現れます。これらは、症状が皮膚の範囲を超えて全身に及び始めた合図と考えるべきでしょう。とくに、原因になりそうな食べものを口にしたあとで咳だけが続く場合は、風邪と取り違えられやすい形のひとつになります。
症状の重さはいくつの臓器に出ているかで見る
家庭で重さを判断するとき、最も役に立つのが「症状がいくつの臓器に出ているか」という視点です。皮膚だけにじんましんが出ている状態と、皮膚に加えて咳や嘔吐が同時に起きている状態とでは、意味がまったく違ってくるでしょう。

皮膚、呼吸、おなか、全身のうち2つ以上に症状が及んでいる場合は、アナフィラキシーと呼ばれる強い反応が起きている可能性があります。顔色が悪い、ぐったりしている、意識がはっきりしないといった様子があれば、迷わず救急要請をご検討ください。横になれる場所へ移し、立ち上がらせたり歩かせたりしないことも大切です。エピペンを処方されているお子さんであれば、迷っている時間そのものが危険につながると考えてください。
時間をおいて出るタイプもある
新生児や乳児の消化管アレルギー
生後まもない時期に、ミルクや母乳をきっかけとして、繰り返す嘔吐や下痢、血の混じった便、体重が増えないといった症状が現れることがあります。このタイプは即時型と違い、食べてから数時間から数日かけてゆっくり症状が出るため、時間の軸だけでは判断できないでしょう。
口の中だけに出るタイプと運動が引き金になるタイプ
果物や生野菜を食べたときに、口の中や唇だけがかゆくなり、数分から数十分で治まる反応は口腔アレルギー症候群と呼ばれ、花粉症と関わりが深いことが知られています。また、小麦や甲殻類を食べたあとに運動したときだけ強い症状が出るタイプもあり、学童期以降に見られます。食べただけ、あるいは運動しただけでは症状が出ないため、原因にたどり着くまで時間がかかりやすいでしょう。
年齢によって原因になりやすい食べものは変わる
0歳台で新たに症状が出る食べものは、鶏卵、牛乳、小麦が中心です。1歳から2歳ごろになると、木の実類や魚卵が加わってきます。学童期以降では、甲殻類、果物、そば、木の実類が目立つようになるでしょう。
近年はくるみやカシューナッツなど木の実類による症状が増えており、以前の情報のままでは想定から漏れることがあります。年齢が上がってから初めて症状が出る食べものもあるため、乳児期に問題がなかったからといって、その後も安心とは限らないでしょう。
成長とともに食べられるようになることも多い
乳児期に始まった鶏卵、牛乳、小麦のアレルギーは、成長にともなって食べられるようになる例が多く報告されています。一方で、そば、ピーナッツ、木の実類、甲殻類は年齢が上がっても続きやすい傾向にあるでしょう。同じ食物アレルギーという言葉でも、見通しは原因によってかなり異なります。
食物アレルギーと間違えやすいもの

口の周りだけが赤くなる
離乳食の時期によく見られますが、その多くは食べこぼしやよだれが皮膚を刺激して起きる反応です。全身にじんましんが広がらず、拭き取ったあとしばらくで赤みが引くのであれば、アレルギーとは考えにくいでしょう。食事の前に口の周りへワセリンを塗り、食後はこすらずやさしく拭き取るだけでも、かなり防げます。
熱をともなうとき
食物アレルギーの反応そのもので発熱することは、基本的にありません。38度前後の熱が出ているのなら、感染症など別の原因を考えるほうが自然でしょう。じんましんはウイルス感染に伴って出ることもよくありますので、熱と発疹が同時にある場合は、食べたものと結びつける前に受診をご検討ください。
乳児湿疹やあせも
生後数か月の赤ちゃんに出る湿疹の多くは、食べものと無関係に起こります。むしろ、湿疹を放置して皮膚のバリアが弱った状態が続くほうが、後の食物アレルギーの発症につながりやすいと考えられています。まずは湿疹そのものの治療とスキンケアを整えることから始めましょう。
症状に気づいたときに家庭ですること
大切なのは記録です。何を、どのくらい食べて、何分後に、どこへ、どんな症状が出たのかという4点がそろっていると、診察での判断が大きく変わってきます。発疹はすぐ消えてしまうため、写真を残しておくと役に立つでしょう。
症状が出た食材については、受診して相談するまでのあいだは与えないでおきましょう。少量なら平気だろうと試すのは、二度目の反応がより強く出る場合を考えると勧められません。ただし、これはあくまで受診までの一時的な対応と考えてください。長期にわたって食べさせないかどうかは、症状と検査を合わせて判断していく話になります。
そして、自己判断で食べものを除去しないでください。血液検査で数値が高くても実際には食べられる場合が多く、必要のない除去は成長に必要な栄養を欠くだけでなく、かえって食べられるようになる機会を遠ざけてしまいます。除去するかどうかは、症状と検査を合わせて医師と決めていく部分です。
気になる症状があるときはみなとみらい小児科クリニックへ
食物アレルギーは、症状の出方も原因になる食べものも、お子さん一人ひとりで違います。ある子には問題のない量が別の子には多すぎることもあり、一般的な情報だけで線を引くのは難しいでしょう。
みなとみらい小児科クリニックでは、ご家庭での様子や食べたものの経過を丁寧に伺ったうえで、いま必要な対応をお伝えしています。食べた直後に気になる症状があった、離乳食の進め方に迷っている、園に提出する書類のことで相談したいといった段階でのご相談も歓迎しておりますので、抱え込まずにお声がけください。


































