
「まばたきが増えた」「咳払いを繰り返す」…それはチック症かもしれません
「最近、何度もまばたきをするようになった。」
「風邪が治ったのに咳払いが続いている。」
「首を振ったり、肩をピクッと動かしたりすることが増えた。」
このような様子を見て、「何か大きな病気ではないか」と心配になって受診されるお父さん、お母さんは少なくありません。
チック症は、自分の意思とは関係なく、体を動かしたり声を出したりする症状を繰り返す神経発達症の一つです。多くは小児期に始まり、成長とともに症状が軽くなることが知られています。
一方で、アレルギー性結膜炎によるまばたきや、鼻炎・喘息による咳払いなど、他の病気でも似た症状がみられることがあるため、正しい診断が大切です。
この記事では、日本小児神経学会の**「小児チック症診療ガイドライン2024」**などに基づき、チック症の原因や症状、受診の目安について、小児科医がわかりやすく解説します。
チック症とは?
チック症とは、突然、速く、繰り返し起こる、自分では完全にコントロールできない動きや声が特徴の神経発達症です。
多くは5〜7歳頃に始まり、男の子に多くみられることが知られています。小児期には比較的よくみられる病気で、多くのお子さんでは成長とともに症状が軽くなります。
また、症状があっても日常生活への影響が少なく、治療を必要としないお子さんも少なくありません。
チック症の特徴
項目内容発症しやすい年齢5〜7歳頃男女差男の子に多い本人の意思自分の意思では止められないが、年長のお子さんでは短時間我慢できることもある症状の変化良くなったり悪くなったりを繰り返す経過多くは成長とともに症状が軽くなる
チック症の症状
チック症には、運動チックと音声チックの2種類があります。両方がみられるお子さんも少なくありません。
運動チック
運動チックは、体を動かすタイプのチックです。
代表的な症状には次のようなものがあります。
- まばたきを繰り返す
- 顔をしかめる
- 鼻をピクピクさせる
- 首を振る
- 肩をすくめる
- 手足を動かす
- ジャンプする
症状は一つだけの場合もありますが、時間の経過とともに別の症状へ変化することもあります。
音声チック
音声チックは、声や音を繰り返し出すタイプのチックです。
よくみられる症状には、
- 咳払い
- 鼻を鳴らす
- 「ンッ」と声を出す
- のどを鳴らす
- 同じ言葉を繰り返す
などがあります。
風邪が治ったあとも咳払いだけが続いている場合は、チック症が原因となっていることがあります。

チック症の原因
現在のところ、チック症の原因は一つではなく、脳の神経回路の働きや遺伝的な要因など、複数の要素が関係して発症すると考えられています。
一方で、
- 育て方
- しつけ
- 性格
- 保護者の接し方
が原因でチック症になるという科学的根拠はありません。
そのため、「自分の育て方が悪かったのでは」とご家族が自分を責める必要はありません。
ストレスは原因ではなく「症状が目立つきっかけ」になることがあります
疲れや緊張、不安などによって、チックが一時的に目立つことがあります。
例えば、
- 入学・進級
- 発表会や試験
- 習い事
- 睡眠不足
- 体調不良
などをきっかけに症状が強くなることがあります。
一方で、テレビを見てリラックスしている時などにも症状がみられることがあり、症状の出方には個人差があります。
大切なのは、ストレスがチック症そのものの原因ではないということです。
ゲームや動画を見ることが原因なのでしょうか?
「ゲームのやり過ぎが原因ですか?」
「YouTubeを見せ過ぎたのでしょうか?」
このような質問を受けることがあります。
ゲームや動画そのものがチック症の原因であるという科学的根拠はありません。
ただし、夜更かしや睡眠不足、疲労につながると症状が目立つことがあるため、年齢に応じた利用時間を心がけ、十分な睡眠時間を確保することが大切です。
チック症と間違えやすい病気
まばたきや咳払いは、チック症以外の病気でもみられます。
次のような病気との区別が重要です。症状考えられる病気まばたきアレルギー性結膜炎、逆さまつげ、ドライアイなど咳払いアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、咳喘息など首を振る首の痛みや筋肉の異常など手足の動きてんかんやその他の不随意運動(まれ)
自己判断せず、一度小児科で相談すると安心です。
どのような場合に小児科を受診したらよいでしょうか?
次のような場合には、小児科への受診をおすすめします。
- まばたきや咳払いが数週間以上続いている
- 症状が少しずつ増えている
- 学校や園から指摘された
- 本人が症状を気にしている
- 首振りなどが強く、痛みやけがにつながることがある
- チック症なのか判断できず心配
チック症は、「様子を見てよい場合」と「詳しい診察が必要な場合」があります。
気になる症状が続く場合は、一人で悩まず小児科へご相談ください。
チック症の種類
チック症は、症状の種類と続いている期間によって分類されます。
症状による分類
種類主な症状運動チックまばたき、顔をしかめる、首を振る、肩をすくめる、手足を動かすなど音声チック咳払い、「ンッ」という声、鼻を鳴らす、のどを鳴らすなど
症状は一つだけの場合もあれば、複数の症状が組み合わさることもあります。また、時間の経過とともに症状の種類や強さが変化することも珍しくありません。
経過による分類
分類特徴暫定的チック症チックがみられるようになってから1年未満の状態持続性(慢性)運動または音声チック症運動チックまたは音声チックのいずれか一方が1年以上続く状態トゥレット症候群運動チックと音声チックの両方がみられ、症状が1年以上続く状態
トゥレット症候群と診断されても、すべてのお子さんに重い症状が現れるわけではありません。症状の程度には大きな個人差があり、日常生活への影響が少ないお子さんも多くいます。
チック症はどのように診断するのでしょうか?
チック症は、血液検査やMRI、CTなどで診断する病気ではありません。
診断では、医師がお子さんの症状やこれまでの経過を詳しく伺い、診察を行います。
診察で確認する主な内容
- いつ頃から症状が始まったか
- どのような動きや声がみられるか
- 1日にどのくらいみられるか
- 学校や園、自宅で違いがあるか
- 日常生活や学校生活への影響
- 他に気になる症状がないか
- ご家族に同じような症状の方がいるか
診察室では症状がみられないことも珍しくありません。そのため、**普段の様子をスマートフォンなどで動画撮影して持参していただくと、診断の参考になることがあります。**ただし、お子さんの負担にならない範囲で行いましょう。
他の病気との区別が大切です
チック症と似た症状でも、別の病気が原因となっていることがあります。
例えば、
- アレルギー性結膜炎によるまばたき
- アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎による咳払い
- 咳喘息
- 逆さまつげ
- てんかんやその他の不随意運動(まれ)
などです。
そのため、「チックかもしれない」と思っても自己判断せず、小児科で相談することが大切です。
ADHDや強迫症などを合併することがあります
チック症のお子さんでは、次のような病気を合併することがあります。
- ADHD(注意欠如・多動症)
- 強迫症(強迫性障害)
- ASD(自閉スペクトラム症)
- 学習面や不安に関する問題
もちろん、すべてのお子さんにこれらがみられるわけではありません。
学校生活や友達との関わり方、集中力などで気になることがあれば、必要に応じて詳しく評価を行います。
すぐに受診した方がよい症状はありますか?
チック症は命に関わる病気ではなく、多くは外来で診療できます。
しかし、次のような場合には、チック症以外の病気も考える必要があります。
- 意識を失う
- 呼びかけに反応しない
- けいれんを伴う
- 手足の力が入りにくい
- 急に歩けなくなった
- 強い頭痛や繰り返す嘔吐がある
- 発熱とともに急激に異常な動きが出現した
このような場合は、速やかに医療機関を受診してください。
みなとみらい小児科クリニックでよくあるご相談
「目をパチパチするので眼科へ行きましたが異常がなく、小児科を受診しました。」
「風邪が治ったのに咳払いだけが何週間も続いています。」
「学校の先生から『チックかもしれません』と言われました。」
このようなご相談は決して珍しくありません。
チック症は、お子さん自身も「やめよう」と思っても止められず、不安を感じていることがあります。また、ご家族も「注意した方がいいのでは」「様子を見ても大丈夫だろうか」と悩まれることが少なくありません。
当院では、チック症かどうかを丁寧に診断するだけでなく、お子さん本人やご家族が安心して生活できるよう、症状の特徴やご家庭での接し方についてもわかりやすくご説明しています。
必要に応じて、小児神経専門医や児童精神科など専門医療機関と連携し、お子さん一人ひとりに適した診療につなげています。
チック症は治療が必要なのでしょうか?
チック症と診断されても、すべてのお子さんに治療が必要になるわけではありません。
多くのお子さんでは成長とともに症状が軽くなるため、日常生活や学校生活に大きな支障がなければ、定期的に経過をみながら見守ることが一般的です。
一方で、次のような場合には治療を検討します。治療を検討する目安具体例日常生活への支障がある学校生活や友達との関わりに影響がある本人の苦痛が強いチックを気にして外出や登校を嫌がる痛みやけがにつながる首振りなどのチックで首や体に痛みが出る合併症への対応が必要ADHDや強迫症などの症状が強い
治療が必要かどうかは、症状だけでなく、お子さん本人やご家族がどの程度困っているかを含めて総合的に判断します。
チック症の治療
行動療法(CBIT)
現在、**包括的行動的介入(CBIT:Comprehensive Behavioral Intervention for Tics)**は、日本小児神経学会の「小児チック症診療ガイドライン2024」でも有効性が示されている治療法です。
この治療では、
- チックが出そうになる感覚に気付く
- チックの代わりとなる行動を身につける
- 症状が出やすい場面への対処方法を学ぶ
ことで、チックを減らすことを目指します。
現在は専門施設を中心に行われており、すべての医療機関で受けられるわけではありません。
薬による治療
チックが強く、
- 学校生活に支障がある
- 本人が強い苦痛を感じている
- 首や体を強く動かして痛みやけがにつながる
などの場合には、薬物療法を検討することがあります。
薬には副作用もあるため、症状の程度や生活への影響を十分に考慮しながら使用します。
ご家庭での接し方で最も大切なこと
「やめなさい」と注意しない
チック症のお子さんへの対応で最も大切なのは、チックそのものを繰り返し注意しないことです。
本人も「やめたい」と思っていても、自分の意思だけで止めることはできません。
「またやっているよ。」
「我慢しなさい。」
と繰り返し注意されることで緊張やストレスが強くなり、かえって症状が目立つことがあります。
チックではなく、お子さん自身を見る
チックの回数ばかりを気にするのではなく、
- 元気に遊べているか
- 食事や睡眠は十分にとれているか
- 学校や園で楽しく過ごせているか
- 本人が困っていないか
といった生活全体を見守ることが大切です。
規則正しい生活を心がけましょう
疲れや睡眠不足、緊張、不安などによって、チックが目立つことがあります。
そのため、
- 十分な睡眠
- バランスの良い食事
- 適度な運動
- リラックスできる時間
を意識し、生活リズムを整えることが症状の安定につながります。
ゲームやスマートフォンは控えた方がよいのでしょうか?
ゲームや動画そのものがチック症の原因であるという科学的根拠はありません。
しかし、長時間の使用によって睡眠不足や疲労につながると、症状が目立つことがあります。
ゲームやスマートフォンを完全に禁止する必要はありませんが、年齢に応じて利用時間を決め、十分な睡眠時間を確保することが大切です。
学校や園ではどのように対応するとよいでしょうか?
学校や園では、先生方にチック症について理解していただくことが大切です。
次のような点を共有しておくと、お子さんが安心して過ごしやすくなります。
- 本人はわざとしているわけではない
- 必要以上に注意しない
- 無理に我慢させない
- 困っている様子があれば保護者と情報を共有する
チック症だけを理由に、体育や学校生活を制限する必要は通常ありません。
登園・登校はできますか?
チック症は感染症ではありません。
チック症のみを理由に登園・登校を制限する必要はありません。
元気があり、普段どおり学校生活や園生活を送れる状態であれば、通常どおり通うことができます。
ただし、本人が強いストレスを感じていたり、学校生活に大きな支障が出ていたりする場合は、学校や園とも相談しながら環境を整えることが大切です。
よくある質問
チック症は自然に治りますか?
多くのお子さんでは成長とともに症状が軽くなります。ただし、症状の経過には個人差があり、一部では思春期以降も続くことがあります。
チック症はうつりますか?
うつりません。感染症ではないため、兄弟や友達へうつることはありません。
運動やスポーツは続けても大丈夫ですか?
基本的には問題ありません。チック症だけを理由に運動を制限する必要はほとんどありません。
お風呂に入っても大丈夫ですか?
通常どおり入浴できます。特別な制限はありません。
学校へ伝えた方がよいでしょうか?
学校生活に影響がある場合は、担任の先生へ伝えておくことをおすすめします。学校側の理解が深まることで、お子さんも安心して過ごしやすくなります。
横浜市・みなとみらいでお子さんのチック症が心配な方へ
横浜市西区みなとみらいに位置するみなとみらい小児科クリニックは、新高島駅から徒歩8分、みなとみらい駅から徒歩10分の場所にあります。横浜市西区だけでなく、中区や神奈川区をはじめ、幅広い地域のお子さんにご来院いただいています。
当院では、お子さん一人ひとりの症状や生活への影響を丁寧に伺い、「治療が必要な状態か」「経過を見守ってよい状態か」をわかりやすくご説明しています。
また、ご家庭や学校・園での接し方についても具体的にお伝えし、必要に応じて小児神経専門医や児童精神科などの専門医療機関と連携しながら診療を行っています。
「チック症と診断されたけれど、このままで大丈夫だろうか」「学校生活への影響が心配」といった場合も、お気軽にみなとみらい小児科クリニックへご相談ください。
参考資料
- 厚生労働省
- こども家庭庁
- 日本小児神経学会「小児チック症診療ガイドライン2024」
- 日本小児科学会
- 日本児童青年精神医学会
- 日本精神神経学会
- 日本トゥレット協会
- American Academy of Neurology(AAN)
- European Society for the Study of Tourette Syndrome(ESSTS)
公開日:2026年7月5日
更新日:2026年7月26日
監修:みなとみらい小児科クリニック 院長
お子さんの体調が心配なときは、いつでもご相談ください。
みなとみらい小児科クリニック


































