
子どもの熱性けいれんとは?初めてでも慌てないために|原因・症状・受診の目安を小児科医がわかりやすく解説
メタディスクリプション(約120文字)
子どもの熱性けいれんは突然起こるため、多くの保護者が強い不安を感じます。原因や症状、家庭での対応、救急車を呼ぶ目安、診断まで、小児科医が最新の診療ガイドラインに基づいてわかりやすく解説します。
子どもの熱性けいれんでお困りの保護者の方へ
熱性けいれんは、発熱に伴って起こる子どものけいれんです。多くは5分以内に自然に止まり、後遺症を残すことはほとんどありません。まずは慌てず、お子さんの安全を確保することが何よりも大切です。一方で、けいれんが長く続く場合や意識が戻らない場合は、すぐに救急受診が必要です。
お子さんが突然けいれんを起こすと、
- 「息をしていないように見える…」
- 「脳に障害が残るのでは?」
- 「救急車を呼んだ方がいい?」
- 「また繰り返すの?」
- 「てんかんとは違うの?」
と、不安になるのは当然です。
実際に、みなとみらい小児科クリニックでも、「初めて熱性けいれんを見て頭が真っ白になった」「次に熱が出るのが怖い」というご相談を数多くいただきます。
しかし、熱性けいれんは乳幼児では比較的よくみられる病気であり、**日本では約10人に1人が経験するといわれています。**正しい知識を知っておくことで、万が一のときにも落ち着いて対応できるようになります。
熱性けいれんとは?
熱性けいれんとは、発熱に伴って起こるけいれん発作です。
主に生後6か月〜5歳頃のお子さんにみられ、特に1〜2歳頃に最も多く発症します。
発熱の原因は、
- かぜ
- 突発性発疹
- インフルエンザ
- RSウイルス感染症
- アデノウイルス感染症
- 新型コロナウイルス感染症
など、さまざまな感染症です。
「40℃近い高熱だから起こる」と思われがちですが、実際には熱が急激に上がるタイミングで起こることが多く、38℃前後でも発症することがあります。
また、熱性けいれんは**脳に細菌やウイルスが感染して起こる病気ではありません。**一方で、髄膜炎や脳炎などでもけいれんが起こることがあるため、初めて熱性けいれんを起こした場合は小児科で診察を受けることが重要です。
なぜ熱性けいれんが起こるの?
原因はまだ完全には解明されていませんが、次のような要因が関係していると考えられています。
- 乳幼児の脳がまだ発達途中であること
- 急激な体温上昇
- 遺伝的な体質
ご両親や兄弟姉妹に熱性けいれんの既往がある場合は、お子さんにも起こりやすいことが知られています。
熱性けいれんではどんな症状が出るの?
熱性けいれんでは、お子さんによって動き方は少し異なりますが、最も多いのは**全身が硬くなり、その後ガクガクと震える「強直間代発作」**です。
よくみられる症状は次のとおりです。
- 全身がピーンと硬くなる
- 手足がガクガクと震える
- 白目をむく
- 呼びかけに反応しない
- 顔色や唇が紫色っぽく見える
- 泡を吹くことがある
- 尿や便を漏らすことがある
- けいれん後は眠ったり、ぼんやりしたりする
多くは数分以内に自然に止まります。
一方で、
- 片方の手足だけが動く
- 顔の片側だけがピクピクする
といった場合は、典型的な熱性けいれんではない可能性もあるため、詳しい診察が必要です。

単純型熱性けいれんと複雑型熱性けいれん
熱性けいれんは、大きく2つに分けられます。
単純型熱性けいれん
次のすべてに当てはまる場合です。
- 5分以内に自然に止まる
- 全身のけいれん
- 24時間以内に1回だけ
- 麻痺などの神経症状が残らない
約8〜9割がこのタイプで、予後は非常に良好です。
複雑型熱性けいれん
次のいずれかに当てはまる場合です。
- 15分以上続く
- 24時間以内に繰り返す
- 片側だけのけいれん
- けいれん後に麻痺などが残る
この場合は、脳炎や髄膜炎、てんかんなど他の病気との鑑別が必要となるため、追加の検査や入院が必要になることがあります。
けいれんが起きたら、まず何をすればいい?
突然のけいれんでは慌ててしまいますが、まずはお子さんの安全を守ることが大切です。
- けいれんが始まった時間を確認する
- 横向きに寝かせる
- 周囲の危険な物を避ける
- 衣服を少しゆるめる
- 口の中に物を入れない
- 無理に体を押さえつけない
また、安全を確保できる状況であれば、スマートフォンで動画を撮影しておくと診断に非常に役立ちます。
病院受診・救急車を呼ぶ目安
**初めて熱性けいれんを起こした場合は、症状が治まっていても必ず小児科を受診しましょう。**発熱の原因や、熱性けいれん以外の病気ではないかを確認することが大切です。
次のような場合は、ためらわず119番してください。
- けいれんが5分以上続く
- 24時間以内に繰り返す
- 意識がなかなか戻らない
- 呼吸が苦しそう、顔色が悪い
- 片側だけがけいれんする
- 発熱がないのにけいれんした
- 生後6か月未満でけいれんを起こした
小児科ではどのように診断するの?
診察では、
- 発熱の原因
- けいれんの時間
- 動き方
- 左右差があったか
- 発作後の様子
- 家族歴
などを詳しく確認します。
必要に応じて血液検査や尿検査、感染症検査などを行いますが、典型的な単純型熱性けいれんでは、全員にCT・MRI・脳波検査が必要になるわけではありません。
検査は、お子さんの年齢や症状、診察結果をもとに必要性を判断します。
子どもの熱性けいれんとは?治療・再発・登園の目安を小児科医がわかりやすく解説【後編】
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子どもの熱性けいれんの治療や再発率、ダイアップ®(ジアゼパム坐剤)の適応、てんかんとの違い、登園の目安、よくある質問まで、最新の診療ガイドラインに基づいて小児科医がわかりやすく解説します。
熱性けいれんは治療が必要?
熱性けいれんは、多くの場合数分以内に自然に止まるため、けいれんそのものに特別な治療が必要ないことがほとんどです。
小児科では、
- 発熱の原因となっている病気は何か
- 熱性けいれんで間違いないか
- 髄膜炎や脳炎など重い病気ではないか
を確認し、その結果に応じて治療を行います。
つまり、熱性けいれんそのものを治すというよりも、「発熱の原因となった病気」を適切に診断・治療することが重要です。
5分以上続く場合は早めの治療が必要です
けいれんが5分以上続く場合は、自然には止まりにくくなることが知られています。
このような場合には、医療機関で
- ミダゾラム
- ジアゼパム
- レベチラセタム
- ホスフェニトイン
などの抗けいれん薬を使用して発作を止めます。
さらに長時間続く場合には、「けいれん重積状態」として集中治療が必要になることがあります。
そのため、
- けいれんが5分以上続く
- 呼吸が苦しそう
- 意識が戻らない
場合は、迷わず119番しましょう。
ダイアップ®(ジアゼパム坐剤)は使った方がいい?
以前は、熱が出たときにダイアップ®を予防的に使用することが広く行われていました。
しかし現在の**「熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023」**では、
すべてのお子さんへの予防投与は推奨されていません。
ダイアップ®を検討するのは、
- 長時間の熱性けいれんを繰り返している
- けいれん重積状態の既往がある
- 医師が再発時のリスクが高いと判断した
などの場合です。
お子さんごとに適応は異なるため、自己判断で使用するのではなく、主治医と相談することが大切です。
解熱剤で熱性けいれんは予防できる?
「熱が出たらすぐに解熱剤を使えば、けいれんを防げますか?」
これは外来で最も多くいただく質問の一つです。
結論からいうと、
解熱剤で熱性けいれんを予防できることは証明されていません。
解熱剤は、
- 熱によるつらさを和らげる
- 水分や食事をとりやすくする
ために使用する薬です。
熱性けいれんを防ぐ目的で使用する薬ではありません。
また熱が出たら必ずけいれんしますか?
熱性けいれんを経験すると、「次に熱が出たら必ずまた起こるのでは」と心配になる保護者の方が多くいらっしゃいます。
しかし、
約3分の2のお子さんは再発しません。
一方で、
**約30~40%**のお子さんでは再発すると報告されています。
再発しやすいとされるのは、
- 初回発症が1歳未満
- ご家族に熱性けいれんの既往がある
- 発熱して間もなく発作が起きた
- 初回発症年齢が低い
などの場合です。
再発しても、多くは初回と同じような経過をたどります。
将来てんかんになりますか?
これも非常に多いご質問です。
ほとんどのお子さんは、将来てんかんにはなりません。
一般のお子さんがてんかんを発症する割合は約1%ですが、熱性けいれんを経験したお子さんでは約2~7%とやや高くなります。
ただし、95%以上のお子さんはてんかんを発症せず、健康に成長します。
複雑型熱性けいれんや発達の遅れがある場合などは、小児神経専門医による経過観察が必要になることがあります。
お風呂・外遊びはいつから?
熱がある間やぐったりしている間は、入浴や激しい運動は控えましょう。
一方で、
- 熱が下がっている
- 元気がある
- 水分が十分とれる
ようであれば、短時間のシャワーや普段どおりの生活に少しずつ戻して構いません。
無理をせず、お子さんの体調に合わせて過ごしましょう。
登園・登校の目安
熱性けいれん自体には、法律で定められた登園・登校停止期間はありません。
登園できるかどうかは、
発熱の原因となった病気によって決まります。
次のような状態が目安です。
- 熱が下がっている
- 元気に遊べる
- 食事や水分が十分にとれる
さらに、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症などでは、それぞれ決められた出席停止期間がありますので、園や学校のルールも確認しましょう。
保護者の方からよくある質問(FAQ)
Q. ワクチンは受けても大丈夫ですか?
体調が回復すれば通常どおり接種できます。
熱性けいれんを経験したことだけを理由に、予防接種を避ける必要はありません。
Q. またけいれんしたら毎回救急車を呼ぶべきですか?
5分以内に止まり、意識も普段どおりに戻れば、慌てる必要はありません。
ただし、
- 5分以上続く
- 呼吸が苦しそう
- 意識が戻らない
- 何度も繰り返す
場合は救急車を呼びましょう。
Q. 動画は撮った方がいいですか?
安全を確保できる状況であれば、動画は診断に非常に役立ちます。
発作の動きや持続時間を確認できるため、診断や今後の治療方針を決める重要な情報になります。
Q. 普段の生活で気を付けることはありますか?
特別な生活制限は必要ありません。
十分な睡眠や体調管理を心がけ、発熱した際には慌てず様子を観察しましょう。
みなとみらい小児科クリニックの考え
熱性けいれんは、多くの場合は後遺症を残さず自然に回復する病気ですが、お子さんが突然けいれんを起こす様子を目の前で見ることは、保護者の方にとって大きな衝撃です。
みなとみらい小児科クリニックでは、熱性けいれんのお子さんを診療する際、「けいれんが止まったから大丈夫」と判断するだけではなく、発熱の原因となっている病気を正しく診断し、髄膜炎や脳炎など緊急性の高い病気が隠れていないかを丁寧に確認することを大切にしています。
また、診察では病気の説明だけでなく、
- 発熱時にご家庭で観察していただきたいポイント
- けいれんが起きたときの正しい対応方法
- 救急車を呼ぶ目安
- 再発した場合の受診方法
- ダイアップ®(ジアゼパム坐剤)が必要なお子さんかどうか
についても、お子さん一人ひとりの状況に合わせてわかりやすくご説明しています。
熱性けいれんは、一度経験すると「また熱が出たらどうしよう」と不安になる保護者の方が少なくありません。私たちは、病気を診断・治療するだけでなく、ご家族が安心してお子さんを見守れるようサポートすることも、小児科の大切な役割だと考えています。
熱性けいれんや発熱について心配なことがありましたら、どうぞお気軽にみなとみらい小児科クリニックへご相談ください。
参考資料
- 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023(日本小児神経学会)
- 小児てんかん重積状態・けいれん重積状態治療ガイドライン2023(日本小児神経学会)
- 厚生労働省「子どもの救急医療・小児医療に関する情報」
- こども家庭庁「母子保健・乳幼児の健康に関する情報」
- 国立健康危機管理研究機構(JIHS、旧 国立感染症研究所)「感染症情報」
- 日本小児科学会「保護者向け情報・小児救急に関する資料」
- 日本小児救急医学会「小児救急診療に関する資料」
- 日本てんかん学会「てんかん診療・熱性けいれんに関する情報」
- Nelson Textbook of Pediatrics(ネルソン小児科学)
- 標準小児科学(医学書院)
お子さんの体調が心配なときは、いつでもご相談ください。
みなとみらい小児科クリニック











































