
子どもの停留精巣とは?原因・症状・受診の目安を小児科医がわかりやすく解説
子どもの停留精巣は、精巣(睾丸)が陰のうまで下りてこない病気です。自然に治ることもありますが、適切な時期に治療が必要な場合もあります。原因や症状、ご家庭での確認方法、受診の目安まで小児科医がわかりやすく解説します。
子どもの停留精巣でお困りの保護者の方へ
停留精巣は、精巣(睾丸)が陰のうまで下りてこない病気です。生後数か月で自然に下りることもありますが、生後6か月を過ぎても下りていない場合は、小児科や小児外科・小児泌尿器科で詳しく診てもらうことが大切です。適切な時期に治療を行うことで、将来の精巣の働きや妊娠する力(妊孕性)を守ることにつながります。
乳児健診で、
「片方の精巣が触れませんね。」
と言われ、不安になった保護者の方も多いのではないでしょうか。
また、
- 「手術が必要なの?」
- 「自然に治ることはある?」
- 「お風呂では触れる気がするけれど大丈夫?」
- 「家でも確認できる?」
というご相談もよくいただきます。
停留精巣は決して珍しい病気ではありません。そして、早く見つけて適切に治療すれば、多くのお子さんは問題なく成長できます。
この記事では、停留精巣の原因や症状、ご家庭で確認する方法、受診の目安について、小児科医の立場からわかりやすくご説明します。
停留精巣とは?
停留精巣(ていりゅうせいそう)とは、精巣(睾丸)が陰のうまで下りてこない状態です。
男の子の精巣は、お母さんのお腹の中で作られ、妊娠後半になるとお腹の中から足の付け根(鼠径部)を通って陰のうへ移動します。
この途中で止まってしまうと、停留精巣になります。
片側だけに起こることが多いですが、両側にみられることもあります。
なぜ精巣は陰のうにあるの?
精巣は、将来精子を作る大切な臓器です。
実は精子は、体温より2〜3℃ほど低い温度で最も作られやすいことが知られています。
そのため、精巣は体の外にある陰のうに入っています。
お腹の中や足の付け根では温度が高く、長期間そのままの状態が続くと、精巣の発育や働きに影響する可能性があります。
停留精巣はどれくらい多い?
停留精巣は比較的よくみられる病気です。
発生頻度は
- 正期産児:約2〜5%
- 早産児:約20〜30%
とされています。
生後数か月で自然に陰のうまで下りるお子さんも多く、生後6か月頃には約1%まで減少します。
そのため、生後6か月を過ぎても陰のうに精巣が触れない場合には、専門医による診察が勧められています。
停留精巣の原因
停留精巣は、保護者の育て方や生活習慣が原因で起こる病気ではありません。
原因は一つではなく、
- 胎児期の発育
- 男性ホルモンの働き
- 精巣を引っ張る組織(精巣導帯など)の発育
- 遺伝的要因
- 早産や低出生体重
など、さまざまな要因が関係していると考えられています。
停留精巣の症状
停留精巣そのものでは、痛みや発熱などの症状はほとんどありません。
多くは、
- 乳児健診で指摘された
- オムツ替えで気付いた
- お風呂で気付いた
ことをきっかけに見つかります。
見た目では、
- 陰のうの片側が小さい
- 左右の大きさが違う
- 精巣が触れない
- 足の付け根に小さなしこりを触れることがある
といった特徴があります。
家庭で停留精巣を確認する方法はあるの?
「家でも確認できますか?」
これは診療でも非常によくいただく質問です。
ご家庭でも確認はできますが、停留精巣かどうかを診断することはできません。
それでも普段の様子を知っておくことは、とても大切です。
おすすめは「お風呂でのチェック」
最も確認しやすいのは、お風呂で体が温まり、お子さんがリラックスしている時です。
寒い場所や泣いている時には、精巣は反射的に体の方へ引き上げられやすく、正しく確認できないことがあります。
どのように確認するの?
お子さんを立たせるか、あぐらをかいたような楽な姿勢で、陰のうをやさしく見てみましょう。
確認するポイントは、
- 左右とも陰のうがふくらんでいるか
- 左右とも精巣が触れるか
- 左右の大きさに大きな差がないか
です。
精巣は、ビー玉やうずらの卵のような、少し硬めの丸い感触があります。
強く押したり、無理に探したりする必要はありません。
「昨日はあったのに今日はない」は大丈夫?
「昨日は触れたのに今日は触れない」
このようなことは珍しくありません。
寒い時や緊張した時には、精巣が一時的に足の付け根へ上がることがあります。
これを**移動性精巣(遊走精巣)**といい、停留精巣とは異なる状態です。
ただし、移動性精巣の中には、成長とともに上昇精巣となり、手術が必要になるお子さんもいます。
そのため、「上がったり下がったりするから大丈夫」と自己判断せず、一度小児科で相談することをおすすめします。
移動性精巣については、後編で詳しく解説します。
放置するとどうなるの?
自然に改善しない停留精巣をそのままにしておくと、将来的に次のようなリスクが高くなることが知られています。
将来の妊孕性(妊娠する力)の低下
精巣が長期間高い温度にさらされることで、精子を作る細胞の発育に影響する可能性があります。
精巣がんのリスクが高くなる
停留精巣では、将来的な精巣腫瘍の発症リスクが一般より高いことが知られています。
早期に治療することで、精巣を観察しやすくなり、異常にも気付きやすくなります。
精巣捻転
精巣がねじれてしまう「精巣捻転」を起こすことがあります。
突然の強い痛みや陰のうの腫れがある場合は、緊急手術が必要になることもあります。
鼠径ヘルニアを合併することも
停留精巣では、鼠径ヘルニアを合併することがあります。
足の付け根が膨らんでくる場合には、早めの受診が必要です。
当院でもよくあるご相談
みなとみらい小児科クリニックでは、
- 「健診で片方がないと言われました。」
- 「お風呂ではあるのに健診では触れませんでした。」
- 「左右で大きさが違う気がします。」
- 「家でどのように確認すればいいですか。」
というご相談を多くいただきます。
実際には停留精巣ではなく、移動性精巣だったお子さんも少なくありません。
一方で、生後6か月を過ぎても陰のう内に精巣が確認できず、小児外科・小児泌尿器科へご紹介し、適切な時期に治療を受けられたお子さんもいらっしゃいます。
ご家庭だけで判断することは難しいため、「いつもと違うかもしれない」と感じたら、お気軽にご相談ください。
こんな時は小児科を受診してください
次のような場合は、小児科や小児外科・小児泌尿器科への受診をおすすめします。
- 生後6か月を過ぎても精巣が陰のうに触れない
- 乳児健診で停留精巣を指摘された
- 片方の陰のうが小さく見える
- お風呂でも精巣が触れない
- 左右差が気になる
- 突然、陰のうや足の付け根に強い痛みや腫れが出た(緊急受診)
停留精巣と診断されたらどうする?
停留精巣は、生後6か月を過ぎても自然に精巣が陰のうへ下りてこない場合、小児外科や小児泌尿器科で詳しい診察を受けることが勧められます。必要と判断された場合には、1歳頃(遅くとも1歳半頃まで)に精巣固定術を行うことが、国内外の診療ガイドラインで推奨されています。
一方で、健診や小児科で
- 「移動性精巣ですね」
- 「今は手術は必要ありません」
と言われることもあります。
この場合は停留精巣とは対応が異なりますが、「もう安心」というわけではありません。
この記事では、診断方法や治療に加え、多くの保護者が疑問に思われる**「移動性精巣」と「上昇精巣」**について詳しく解説します。
停留精巣はどのように診断するの?
停留精巣の診断で最も重要なのは、医師による触診です。
医師は
- 陰のう
- 足の付け根(鼠径部)
- お腹
を丁寧に診察し、精巣がどこにあるのかを確認します。
泣いていたり、寒かったりすると精巣は反射的に上へ引き上げられるため、できるだけリラックスした状態で診察を行います。
ほとんどのお子さんでは、この診察だけで診断できます。
超音波検査(エコー)は必要?
「エコーをすればすぐ分かりますか?」
という質問をよくいただきます。
実は、停留精巣の診断では触診が最も重要です。
超音波検査は補助的な検査であり、
- お腹の中にある精巣
- 小さな精巣
は見つけられないこともあります。
そのため、超音波検査だけで診断することは少なく、必要に応じて専門医で追加検査が行われます。
手術は必要?
生後6か月を過ぎても自然に下降しない停留精巣では、精巣固定術が標準的な治療です。
この手術では、
- 精巣を陰のうまで下ろす
- 元の位置へ戻らないよう固定する
という治療を行います。
日本ではホルモン治療は一般的には推奨されておらず、手術が最も確実な治療法とされています。
手術はいつ受けるの?
現在の日本小児外科学会、日本泌尿器科学会、海外ガイドラインでは、
1歳頃までに手術を行うことが望ましい
とされています。
遅くとも1歳半頃までには治療することが勧められています。
早期に治療することで、
- 精巣の正常な発育を守る
- 将来の妊孕性(妊娠する力)を保つ
- 精巣へのダメージを減らす
ことが期待されています。
停留精巣と移動性精巣(遊走精巣)の違い
保護者の方が最も混乱しやすいのが**移動性精巣(遊走精巣)**です。
どちらも「精巣が陰のうにないように見える」という共通点がありますが、実際には全く異なる状態で、治療方針も違います。
移動性精巣とは?
男の子の精巣には、**寒い時や緊張した時に精巣が一時的に体の方へ引き上げられる「挙睾筋反射」**があります。
そのため、
- 泣いている時
- 寒い場所にいる時
- 診察で緊張している時
には、精巣が足の付け根近くまで上がることがあります。
しかし、お風呂などで体が温まり、リラックスすると自然に陰のうへ戻ります。
これが移動性精巣です。
停留精巣との違い
停留精巣では、医師が診察しても精巣を陰のうまで下ろすことができません。
一方、移動性精巣では、診察で陰のうまで下ろすことができ、そのまま陰のう内にとどまります。停留精巣移動性精巣陰のうまで下ろせない陰のうまで下ろせる自然には改善しないことが多い成長とともに改善することが多い手術が必要になることが多い多くは経過観察将来の精巣機能に影響する可能性がある通常は精巣機能への影響は少ない

移動性精巣でも定期的な診察が必要です
「移動性精巣だから手術はいりません。」
と言われると安心される保護者の方が多いのですが、それで診察が終わりというわけではありません。
実は、移動性精巣の一部は成長とともに**上昇精巣(Ascending testis)**へ変化することがあります。
上昇精巣とは、一度は陰のうにあった精巣が、成長とともに足の付け根の高い位置で固定され、陰のうまで十分に下りなくなった状態です。
この場合は、停留精巣と同様に精巣固定術が必要になることがあります。
移動性精巣は、幼児期から学童期(特に5〜10歳頃)に上昇精巣へ変化することがあります。そのため、「今は手術が不要」と診断されても、思春期前までは定期的な診察を受けることが大切です。
ご家庭で気を付けていただきたいこと
移動性精巣のお子さんでは、ご家庭でも時々精巣の位置を確認していただくことをおすすめしています。
確認しやすいのは、お風呂で体が温まり、リラックスしている時です。
次のような変化がないかを見てみましょう。
- 左右とも陰のうに精巣があるか
- 左右差が目立っていないか
- 以前より精巣が触れにくくなっていないか
毎日確認する必要はありません。
お風呂や着替えの時に時々見ていただくだけで十分です。
こんな時は再度受診しましょう
移動性精巣と診断されていても、次のような場合には再度受診してください。
- お風呂でも精巣が陰のうまで下りてこない
- 以前より精巣が触れにくくなった
- 下ろしてもすぐに足の付け根へ戻る
- 陰のうの左右差が大きくなってきた
- 健診で「精巣が触れない」と言われた
- 陰のうや足の付け根に痛みや腫れがある
特に、突然の強い痛みや腫れがある場合には、精巣捻転など緊急治療が必要な病気の可能性があるため、速やかに受診してください。
当院でもよくあるご相談
みなとみらい小児科クリニックでは、
- 「健診では精巣がないと言われました。」
- 「お風呂では触れるのに健診では触れません。」
- 「片方だけ上がったり下がったりしています。」
- 「手術が必要と言われましたが、本当に必要でしょうか。」
というご相談を多くいただきます。
実際には、停留精巣ではなく移動性精巣だったお子さんも少なくありません。
一方で、移動性精巣として経過観察していたお子さんが、小学校入学前後に上昇精巣となり、小児外科・小児泌尿器科で精巣固定術を受けられたケースもあります。
ご家庭だけで判断することは難しいため、「以前より触れなくなった」「何となくいつもと違う」と感じた時には、お気軽にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 停留精巣は自然に治りますか?
生後3〜6か月頃までは自然に下降することがあります。
しかし、生後6か月以降に自然に下降することは少なく、その後も陰のうにない場合には専門医の診察が勧められます。
Q. 移動性精巣は手術が必要ですか?
多くの場合は手術を行わず、定期的に経過をみます。
ただし、上昇精巣へ変化した場合には、停留精巣と同じように手術が必要になることがあります。
Q. お風呂では精巣があるのに、健診ではないと言われました。
移動性精巣の可能性があります。
ただし、停留精巣や上昇精巣との区別は難しいため、小児科や専門医で診察を受けることをおすすめします。
Q. 健診では問題なかったのに、後から精巣が上がることはありますか?
あります。
これを上昇精巣と呼びます。
特に幼児期から学童期(5〜10歳頃)にみられることがあるため、定期健診や小児科での診察を続けることが大切です。
小児科医から保護者の皆さまへ
停留精巣は、早く見つけて適切な時期に治療を行えば、多くのお子さんが元気に成長できる病気です。
一方で、保護者の方が最も悩まれるのは、「停留精巣なのか、移動性精巣なのか」「今は手術が不要と言われたけれど、このままでよいのか」という点ではないでしょうか。
私たちは、「すぐに手術が必要か」だけでなく、「本当に停留精巣なのか」「移動性精巣として経過観察でよいのか」を丁寧に診察し、お子さん一人ひとりに合わせた診療を行っています。
横浜市・みなとみらいで停留精巣・移動性精巣が心配なお子さんへ
乳児健診で「精巣が触れない」と言われたり、「お風呂では触れるのに健診ではないと言われた」「左右で大きさが違う気がする」など、不安に感じる保護者の方は少なくありません。
停留精巣と移動性精巣(遊走精巣)は、ご家庭だけで見分けることが難しく、診察では精巣の位置や動き、発育を丁寧に確認することが大切です。また、移動性精巣と診断されたお子さんでも、成長とともに上昇精巣へ変化することがあるため、定期的な経過観察が重要です。
みなとみらい小児科クリニックでは、乳児健診や一般外来で停留精巣・移動性精巣・上昇精巣の診察を行っています。必要に応じて小児外科・小児泌尿器科と連携し、お子さん一人ひとりに合わせて適切なタイミングで専門的な診療をご案内しています。
「健診で指摘された」「片方の精巣が触れない」「以前より触れにくくなった」「手術が必要か相談したい」など、気になることがありましたら、お気軽にみなとみらい小児科クリニックまでご相談ください。
参考資料
- 厚生労働省
- こども家庭庁
- 日本小児科学会
- 日本小児外科学会
- 日本泌尿器科学会
- 日本小児泌尿器科学会
- European Association of Urology(EAU)EAU Guidelines on Paediatric Urology
- European Society for Paediatric Urology(ESPU)Cryptorchidism Guidelines
- American Urological Association(AUA)Evaluation and Treatment of Cryptorchidism Guideline
- Nelson Textbook of Pediatrics(ネルソン小児科学)
お子さんの体調が心配なときは、いつでもご相談ください。
みなとみらい小児科クリニック

















































